橋本 秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

新築住宅50万戸時代に生き残る賃貸経営戦略の立て方

野村総合研究所(NRI)が、新設住宅の着工戸数が2040年度には49万戸になるという予測結果を公表しました。今後、住宅着工は減少傾向が続くと考えられます。他の予測とも合わせ、今後の不動産投資のスタンスについて整理します。

2021年度の新築着工は86.5万戸で3年ぶりに増加

国土交通省によると、2021年度の新設住宅着工戸数は865,909戸と前年比6.6%増加しました。※1
利用別の内訳では、持家が6.9%増(3年ぶりの増加)、貸家が9.2%増(5年ぶりの増加)、分譲一戸建が11.4%増(2年ぶりの増加)とそれぞれ大きく増えましたが、分譲マンションは5.0%減と3年連続減少しました。
特に分譲マンションは地方圏では17.8%増加しましたが、市場規模が大きい三大都市圏ではマイナスで、特に首都圏11.2%減、大阪圏10.9%減と大きく落ち込みました。

2040年までの住宅市場の見通し 新築は激減、中古の割合は増加

新設住宅の着工は3年ぶりの増加でしたが、これはコロナ禍で大きく落ち込んだ2020年度のリバウンドによるもので、コロナ禍以前の2019年度の水準までは戻していません。
新設住宅の着工戸数は、163万戸で直近のピークだった1996年度から一時下げ止まりの時期があるも減少傾向が続いており、2021年度は1996年度の53.1%とほぼ半減しています。

NRIでは、8年後の2030年度には新設住宅着工戸数が70万戸に、さらに2040年度には49万戸と、1996年度のなんと30%にまで減少すると予測しています。※2

出典:NRI「2022~2040年度の新設住宅着工戸数」2022年6月9日

実は、大手ハウスメーカーなどは、以前から将来の日本の住宅市場の規模縮小を見込んでおり、すでに「脱・住宅」、「脱・国内市場」を進めています。以前に本コラムでも紹介していますので宜しければお読みください。
住宅メーカーの海外進出から見えてくる日本の不動産市場の将来

新築の着工戸数の減少が続く理由としては、住宅ストックが世帯数を大きく上回っていることや、人口減少の影響などがあげられますが、注目したいのは既存住宅流通の割合の上昇です。

NRIの調査では、1994年に既存住宅を購入した世帯の比率は全体の13%でしたが、2018年には22%に上昇し、2030年には29%、2040年には33%に上昇すると予測結果となっています。
この割合は欧米に比べるとまだ低い水準ですが、2018年と2040年を比べても1.5倍と大きな伸びが予測されています。また、住宅流通全体の3分の1が既存住宅になるということは、今後住宅市場の構造が大きく変化すると言えます。

出典:NRI「既存住宅流通量、既存住宅を購入した世帯比率の実績と予測結果」2022年6月9日

日本の住宅の品質は、遅ればせながらも向上しています。以前から日本の中古住宅は「古い」「きたない」「(中身が)わからない」と言われてきましたが、これからは品質の高い既存住宅が多く市場に出回るようになります。
今後、新築住宅よりも、良質で価格の安い中古住宅を選択する動きが広がるでしょう。

不動産投資で押さえておきたいポイント

ここまでに紹介しました新築着工戸数と中古流通割合の予測を含め、今後の住宅市場縮小時代における不動産投資のキーワードをあげてみました。
・新築着工戸数の減少
・中古住宅流通の割合の増加
・世帯数は大きくは落ち込まない
・インバウンド復活も
・賃貸派の増加

新築住宅のうち賃貸住宅が占める割合は約4割です。今後新たな新築賃貸の競合物件は減る可能性がありますが、良質な中古賃貸物件は増えていくと考えられます。そのため、新築・中古に限らず、いかに入居ニーズを捉えた良質な物件を取得するかが成功のポイントになるでしょう。

一方、不動産投資に関して前向きなキーワードもあります。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2020年の世帯総数と比較すると、2030年は98.8%、2040年は93.8%と、大きくは減少しません。
単身世帯にいたっては、2030年が104.7%、2040年は103.1%とむしろ増加が見込まれています。※3
他にも、インバウンドの復活による入居需要の底上げや賃貸派の割合の増加が期待されます。

不動産投資では、経営面では利回りやキャッシュフローのチェックは外せませんが、少しでも競争力のある物件を取得し、中長期的な視点で賃貸経営を行うことは同じように大切です。
不動産投資にも関わりがあるさまざまなデータが公表されていますが、賃貸経営の入口・出口戦略構築のためにこれらのデータを役立てたいです。

※1国土交通省「建築着工統計調査報告 令和3年度計」2022年4月28日公表
※2野村総合研究所「NEWS RELEASE」2022年6月9日
※3国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」2018年推計

【このコラムの著者】

橋本 秋人

FPオフィス ノーサイド代表
CFP®認定者、1級FP技能士、終活アドバイザー
公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。
長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、
早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。
現在は、FP、不動産コンサルタントとしてコンサルティング、セミナー、執筆等の活動を行っている。

NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)副理事長
埼玉県定期借地借家権推進機構 理事
東京電子専門学校 非常勤理事

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