「利回りのいい物件、もうかる物件、特選物件があったら紹介してよ」という言葉を不動産業界以外の人から聞くことが多くなってきた。ちまたではサラリーマンでもお金持ちになれるという触れ込みのもと、不動産投資の書籍が売れ、不動産投資のセミナーが注目をあつめている。どうやら不動産投資という言葉は不動産業界以外の人たちにも相当浸透してきているようである。
では、前述したもうかる特選物件に一般サラリーマンがめぐりあえる、そして購入できるチャンスはあるのだろうか?
不動産業界特有の物件流通のしくみを知っていなければ、そういった特選物件にめぐりあう可能性は、非常に少ないというのが現実である。
一般の人が、不動産を売却する、または購入する場合、不動産仲介業者に依頼しないと、広いマーケットから買主、売主を探すことができない。このようなことから、物件情報はまずはじめに不動産業者へ入るしくみになっている。
物件情報を入手した不動産仲介業者は買主を直接見つけることによって、売主、買主双方から、最大、売買代金の3.15%+63,000円の仲介手数料を得ることができる。双方から手数料が受領できる事から、これを業界では「両手」と呼ぶ。
直接、買主を見つけることができず、別の不動産仲介業者を介して買主を見つけた場合は、売り手側の不動産仲介会社は売り手から手数料を受領し、買い手側の不動産仲介業者は買い手から手数料を受領することになる。これを業界では売主、買主いずれかの一方から手数料を受領することから「分かれ」「片手」などと呼ぶ。
このようなことから、不動産仲介業者が物件情報を売主から直接入手したときは、手数料を売主、買主の双方から受領できるように、自ら買主を発見するよう努力する。買主は一般のエンドユーザーのほかに、不動産買取業者やマンション、戸建のデベロッパーなど、プロの買主もたくさん存在する。割安な物件や、利回りの高い物件は、エンドユーザーに比べ、意思決定が早く、資金調達の心配も少ない、プロの不動産業者に購入してもらう事によって、不動産仲介業者は仲介手数料をダブルで稼ぐことが可能となる。
不動産仲介業者の業務効率を考えると、広告費などもかけずに短期間で成約できるため、ごく当然の流れとなる。また、昨今では、不動産金融が大幅に緩和しているため、不動産を買い取る業者が非常に多くなってきている。要はプロの買主がちまたに溢れているのである。このようなことから、本当の意味での「特選物件」は、なかなか市場に流通せずにプロの間で取引されていることが非常に多いのである。
流通している物件(一般のエンドユーザーが入手できる情報)には少なからず、不動産業者があまり購入しない通常価格(「エンドユーザー価格」という)の物件や、不動産業者が割安に買い取り、利益を乗せた転売物件が存在している。そのため、「特選物件」情報を入手し見極めるには、流通する前の情報を如何にキャッチするかがポイントになる。
不動産業界はとくに「属人的」な要素が強いといえるが、業界に属していなければ活用できないというものではない。1つでも多くの不動産会社を回り、何度も繰り返し真剣にコンタクトを取る。そうすることで、不動産会社の多くの顧客の中から「そういえば○○さん、こんな物件探していたな」と覚えられるようになる。また、属人的な情報にかぎらず、幅広く情報を集めつづけることで、特選物件の見極めができるようになってくるので、情報網を少しずつ広げていくことが有効になる。