2005年8月はじめ、今年の路線価が発表された。全国的にはまだ下落基調であるが、東京圏はバブル後初の上昇に転じたようだ。皆、地価が上がった下がったと一喜一憂しているが、そもそも路線価とはどのような役割をしている価格なのだろうか。また、路線価のほかに不動産には、どのような指標があるのか、この機会に解説しよう。
路線価とは、地価公示価格、売買実例価額などを基にして国税局が決める道路の価格のことだ。あらゆる専門家の意見を聞きながら国税局が最終的に決定している。
路線価は、おもに相続税算出の基礎となる価格として使用されている。相続が発生したときに、被相続人(亡くなった人)が保有していた土地が接している道路に付された1m2あたりの路線価に、土地の面積を乗じたものを相続税の評価額とし、その評価額に対して相続税が課せられる。
相続税の評価にあたっては本来、時価が望ましいのだが、土地は時価の算定が難しいことから国税局が、このような「路線価」という指標を設けているのである。
不動産の価格の指標には路線価のほかに公示価格、基準値標準価格、固定資産税評価額がある。それぞれ価格の役割は異なり、まとめると以下のようになる。
指標となる価格 | 実施機関 | 価格の基準日 | 発表日 | 目的 |
---|---|---|---|---|
公示価格 | 国土交通省 | 毎年1月1日 | 毎年3月下旬 | 売買の目安等 |
基準値標準価格 | 都道府県 | 毎年7月1日 | 毎年9月下旬 | 売買の目安等 |
路線価 | 国税局 | 毎年1月1日 | 毎年8月上旬 | 相続税・贈与税の 評価額算出の基礎 |
固定資産税評価額 | 市町村 *東京23区は 東京都 | 3年に一度見直しされ、 見直しされる年の 前年の1月1日が 基準日となる | 4月1日 ただし一般には公表 されない(所有者など 利害関係者のみ) |
この4つの指標のほかに実際取引される「時価」がある。したがって、ややこしいことに不動産には5つの価格が存在することになる。新聞紙上で地価が上がった下がったと報じられるのは、3月下旬に公表される「公示価格」。8月上旬に公表される「路線価」。そして9月上旬に公表される「基準値標準価格」であり毎年3回、性質の異なる価格の指標が公表されている。この3つの指標はホームページでも閲覧する事が可能となっている。
では、それぞれの価格の相関関係はどうなっているのだろうか。公示価格・基準値標準価格は、ともにいわゆる「時価」の目安とされる指標となっており、この価格を100とすると、路線価は約80、固定資産税評価額は約70という関係になっている。
不動産売買には公示価格あるいは基準値標準価格が取引価格の目安になるとされているが、公示価格や基準値標準価格は国または都道府県が定めた限られた特定のポイントにのみ付されているため、なかなか活用しづらい面もある。
したがって一般的には都市部におけるほとんどの道路に付されている路線価を基準とし、その1.25倍が公示価格相当額、いわゆる取引時価の目安とされている。また金融機関の担保評価も「路線価」をひとつの基準とし、その何%が融資限度額であると決めている金融機関がまだ多いようである。
さて、実態はどうなのだろうか。現在、土地の取引価格はディベロッパーの用地不足などから都心部など、場所によっては路線価の2倍3倍、ときには5倍ぐらいで取引されている。反対に少し郊外に出ると、路線価でも土地が売れないという土地がまだまだたくさんある。このように地価の二極化が進み、路線価は実態を反映しきれずに歪んだ指標となりつつある。
そもそも国が私有財産に価格をつけるということに無理があり、一般人にはわかりづらい役割の異なる4つの価格を毎年算出することが不合理であるという意見もある。しかし、不動産投資においては、融資限度額の算出や実質利回りを予測することが可能になるため、この価格を役立てられる。また、単純に、路線価にくらべて極端に安い・高いなどの判断基準として考えることもできる。