風戸 裕樹の不動産投資コラム

シリーズ連載: 初心者のための東南アジア投資ガイド

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

第1章 太陽が燦燦と輝く場所(1)

太陽が燦燦と輝く場所

ここは東南アジア (SEA) 。朝の祝福そして旅の友は太陽とその温もりだ。窓を開ければ、宇宙の抱擁よろしく太陽の温もりを簡単に感じられる。東南アジアの夕暮れは印象的だ。人々は足を止め、太陽がまだらな色を残しながら山々、木々、海の向こうにゆっくりと沈んでいくのをじっと見つめる。

東南アジアではお馴染みの光景だ。東南アジア諸国は互いによく似ている。ならばその地域の人々も同様、温かくて歓迎的なのも不思議ではない。言葉の違いでコミュニケーションを取るのは難しいかもしれないが、同じ地域の中でも歓迎・助け合い・分かち合いの精神が常にあるようだ。内気に思われがちな東南アジアの人々だが、話しかけられると大抵は気さくに接してくれる。また常に自分の持っているものを分け与えようともしてくれる。お人よしが過ぎることもあるが、この気質が異国からやってくる多くの人々を魅了している。

東南アジアでは多くが幼少の頃から尊重の精神について教わっている。このことは他人宅訪問時の所作からも容易にわかる。彼らは大抵ノックをし、中に入ってよいか尋ね、迎え入れられるとまず靴を脱ぎ、外からのホコリや汚れを家の中に持ち込まないようにするのだ。こうした他人宅への配慮はまさに思いやりの心であると言える。このことはバスや電車で多くの人が特に年上の人に対し席を譲っていることからも明らかだ。

また彼らにしてみればお互い様なのだ。東南アジアの人々はもてなしの精神でよく知られている。客人を自宅に迎え入れ、食べ物を振舞うことさえある。ひっそりとした慎ましさもある。我が家はこのお客様にとって役不足なのではと心配していることも時としてある。訪問客に対し高い敬意を払っている証拠だ。

東南アジアの人々にはのんびり屋という共通の性格もあり、それを怠けの表れととらえる外国人も中にはいる。本当に怠けている場合もあるかもしれない。だがそこには他からは理解できないような深くしばしば表に出てこない理由があるのだ。

東南アジア地域はよく豪雨に見舞われる。家やその他の建築物はこのことを想定して設計および建設されている。やや古い民家を何軒か見れば一目瞭然だ。モンスーンがもたらす雨はじっとりするような小降りのものから猛威を振るう激しいものまで多岐にわたる。例えばフィリピンのような国土の片側が広大で迫力のある太平洋に面している国は壊滅的な被害をもたらす悪天候に度々見舞われる。実際、1 年のうち10カ月間雨が降っているような地域もあり、そこでは地滑りが定期的に起こる。台風は毎年東南アジア諸国に被害をもたらし、死者を出している。非常に強力な台風も上陸すれば勢力や速さが弱まると言われてはいるが、それでもなおその破壊力は相当なものだ。台風はフィリピンを去る頃、今度は台湾、日本そしてベトナムなど他の東南アジアの地域を新たに目指して進んでいくのだ。

モンスーンや台風がもたらす破壊的な風雨や洪水に見舞われてきたことで東南アジアの人々は忍耐強くなった、あるいは強くならざるを得なかった。彼らは度々やってくる苦難との付き合い方を知っているのだ。笑う力や残されたものの中に幸せを見つけることのできる力もその忍耐力の1 つだ。彼らは一日一日を感謝しながら生きている。今ここにあるものがある日突然なくなってしまうかもしれないこと、身近な人や友達や愛する人が次の誕生日のお祝いの席にはいないこともあり得ると知っているから。薄情というわけでも、ましてや人生をあきらめてしまっているわけでもない。恐らく死の必然性を誰よりも理解しているのだ。だからこそ彼らは幸せなのであり、自由奔放にふるまってしまうこともあるのだと思う。今ここにあるものの尊さを彼らは知っているから。

かつてこの地域一帯はアジアや西洋諸国の植民地だった。西洋諸国の植民地とならなかった唯一の国はタイだ。理由は欧米社会でモンクット王として広く知られている、畏敬されたシャムの王 ラーマ4世の才気があったからだ。植民地化に対するこの国々の大半の反応は意外にも大惨事との向き合い方と似ている。いつも前向きでいよう、精一杯生きよう、手持ちの僅かなものでやりくりしながら人生を謳歌しよう、そんな姿勢だった。この地域の人々は戦争と植民地化の両方に耐えながら生き抜いてきた。

それ故に東南アジアの大半の人に見られるおおらかな性格は一言では言い表せないのだ。今に感謝し、一瞬一瞬を大切にしながら生きていることの表れでもあるし、また友達や家族をとても大切にしている証拠でもある。

確かに彼らがおおらかである理由は他にもある。東南アジアの人々の多くは自分たちが自然に恵まれていることを知っている。種を放り投げて待っていればたちまち芽が生えてきて食べられるようになると笑いながら語る人もいれば、川だろうと海だろうと近くの水に入ればきっと簡単に魚が捕れるだろうと思っている人もいる。

土壌がとても肥沃であるが故に、多くがその豊かさを現実の一部として受け入れてきただけなのだ。あくせく働かなくとも豊かな自然があれば食べるものに困らない、と。この豊かな土地で飢える人がいたとすれば、それこそ真の怠け者だ、と考える人もいる。

海についても同じことが言える。シーフードや海藻の種類はほぼ無数にあり、東南アジアの人々は選びたい放題だ。ここでのシーフードはなにも魚だけではない。貝類、軟体動物、棘皮動物、甲殻類も含まれる。またそれぞれに数え切れないほど多くの種類が存在するのだ。

それに加え陸地には数多くの植物や動物が生息し、それも安定した食料や栄養の資源となっている。西洋人がこの地に住み続けることを選び、植民地にしようとしたのも無理はない。ここには見たこともないようなものやコショウ、ナツメグ、シ
ナモン、金やゴムまで、暮らしを豊かにしてくれるものがたくさんあったからだ。

年来外国人と交流してきたことより、東南アジアの人々は出身がどこであるかなど関係なく来訪者に対しますますオープンで歓迎的になり、敬意を表すようになった。実際、西洋人は東南アジアの多くの国でジョーやプティ (白人) など、その他色々なあだ名で呼ばれ親しまれている。フィリピン人の中には白人をひとまとめにして「カーノ」と呼ぶ人もいる。これは「アメリカーノ (アメリカ人) 」を省略したもので、出身がカナダでもオーストラリアでもイギリスでも関係なく皆カーノだ。かつてはヨーロッパの支配下にあった東南アジアだが、今ではそうした関係性は対等なものへと進化し、旅行や結婚のためにやってくる外国人も暖かく迎え入れられている。以前にも増してオープンになったことで北アジア (中国、韓国、日本) から多くの人が新たに移り住み、それぞれの国籍に応じたコミュニティが生まれた。

絶えず異国と関わりを持ち、過去に色々なことを経験してきた東南アジア諸国とその人々は、とめどなくやってくる様々な人々の需要にさらに意欲的に応えるようになっている。あらゆる人種や国籍の人がその国々を経て入ってきているため、慣れるのにも苦労していないようだ。マレーシアはユーラシア人、マレー人、中国人、インド人にとって敷居の低い国だ。顔立ちが似ていれば溶け込むのも非常に簡単であることは想像に難くない。だがかつてイギリスの植民地だったマレーシアは今でもイギリスの人々を魅了して止まない。同じ理由でフランス人はベトナムを、アメリカ人はフィリピンを訪れている。

もちろん課題もある。実にたくさんの言語があるため、同じ国の中で意思の疎通ができないのはさほど珍しくもないことだ。全く異なる地方言語は、言語の異なる地域同士が完全に統一されてしまうことを防ぐ役目も担ってきた。それは根底にある地域のプライドと個性の表れだ。マレーシアやシンガポールなど、様々な人種が一緒に暮らさなければならないような国では、いまだ明確な分離に固執し、民族ごとでかたまっている。例えばインド系マレーシア人は正真正銘マレーシア人だが、インドのある地域の文化を高く評価している民族だ。つまり英語、マレー語、ヒンドゥー語、タミル語、その他のインドの言語を話せるケースが多い。同様に中華系マレーシア人も大半が英語、マレー語、福建語、北京語を話すことができる。

また、東南アジアの人々は信仰のこととなるとかなり熱心だ。例えば、ベトナムは厳密にはまだ社会主義国だが、非常に敬けんで積極的なキリスト教信者がいたりする。その一方でカンボジアやタイのような国では仏教信仰が非常に厚い。カンボジアではヒンドゥー教のルーツを建造物や歴史的記念物で簡単に見つけることができる。アンコールワットが分かりやすい例だ。この寺院はヒンドゥー教のために建てられたものだが、今では仏教の祈りの場と化している。タイでは他のアジアの地域で信仰されている大乗仏教とは大きく異なる上座部仏教が信仰されており、地元の人の信仰を普段から目にすることができる。タイの男性はたとえ王族でも一度は出家しなければならず、また僧侶になると来る日も来る日も托鉢をしなければならない。そんな事実に観光客はしばしば驚かされる。同様に、伝統的な袈裟を着た僧侶が携帯電話やタブレットといった現代的なテクノロジーをいじるといった光景もかなりおもしろいと思うかもしれない。

東南アジアの人々は近隣諸国を度々観光してはご近所の暮らしぶりを見ているはずなのに文化の面で全く似ていなかったりする。格安航空会社の格安運賃が台頭し、由緒ある航空会社が価格競争を強いられ、お値打ちなパッケージ旅行を打ち出すなど、ますます多くの人が旅行できるようになっている。これによりこの地域の人々は、近隣諸国と似ている部分も多々あればまったく異なる部分もあるということをより身近に、より深く認識し始めている。

次回コラムに続く

【このコラムの著者】

風戸 裕樹

PropertyAccess 代表取締役社長・共同創業者
2004年早稲田大学商学部卒業。同年オークラヤ住宅に入社。その後、不動産投資ファンド(クリード、ダヴィンチ・アドバイザーズ)転じ、この間、起業構想を温める。

10年不動産仲介透明化フォーラム(FCT)を設立、社長に就任。日本の不動産取引を変革するべく、売却専門の「売却のミカタ」を開始し、全国展開。2014年にソニー不動産にFCT社を売却し、ソニー不動産 執行役員 売却コンサルティング事業部長兼コンサルティング事業部長として、創業に携わるとともに事業を拡大、不動産取引の透明化を加速。2017年シンガポールにてプロパティアクセス共同創業。

日本では不動産売買の専門家として広く知られる。座右の銘は「他山の石を以て玉を攻むべし」。モータースポーツ好きで F1に詳しい。 著書 『マンションを相場より高く売る方法』


Propertyaccess.co(プロパティアクセス)
シンガポール、マレーシア、フィリピン、日本に拠点を設ける不動産情報サービス企業。特に東南アジアを中心とした不動産情報を日本のテクノロジーを活用し世界で紹介。2018 年4 月には、AI を活用しフィリピンのコンドミニアム価格予測と物件情報サービスを開始。マレーシア、タイ、 ベトナムそして日本にて不動産投資家が安心して投資できるためのサービスを行っている。
ウェブサイト:https://propertyaccess.co/

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