風戸 裕樹の不動産投資コラム

シリーズ連載: 初心者のための東南アジア投資ガイド

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

第2章 日本の不動産市場と海外投資(3)

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国外に目を向ける

日本の不動産市場はさらに多くのテコ入れが必要な状況にあるため、今そこに投資することはおすすめできない。東京都内の相場はいまだに底堅く、他のアジア市場ともいい勝負だが、開発の機会が限られていることや価格が原因で我々全員がそこに投資することは不可能だ。好機はあるにはあるかもしれないが、価格がほとんどの人にとって高すぎる。選択肢がもっと必要だ。

流動的である一方、過剰な額のお金が手に入らない普通の人にとって、大金をはたいて不動産投資するのは賢明とは言えない。今は国外に目を向け、他の投資機会を見てみることをお勧めしたい。実際海外には投資のチャンスが転がっている。インターネットと格安航空券のおかげで、今海外が投資性の高いオプションとなっている。より安全な先物取引ができ、その先物取引を確実にモニタリングできるようにもなっている。

だが、知っておくべきことや注意すべきことがある。日本人は日本のものに慣れてしまっていて、それが当たり前だと思ってきた。そして他国でも日本と同じようなやり方で行われているだろうと思っているかもしれない。ほとんどがそうはいかない。

例えば、日本では売り出し中の物件に関する情報を簡単に入手でき、それに慣れている。詳しい情報や価格は定期的に更新され、市況やその地域の見通しを考慮することもできる。ところが海外、特に東南アジアではそうはいかない。情報は公開されてはいるが、探さなくてはいけないし、探すのに困難を極める時もある。しばしば、有益な情報に辿り着くためには膨大な量の情報の中から役に立たない情報をふるい落とさなくてはならない。

さらには安全性の問題があり、日本人投資家の頭痛の種だ。それは誰にとってもそうだと思う。安全な国だからといって必ずしもその国の全地域が安全というわけではない。言い換えると、国の犯罪率がいくら低くくても常に注意は必要であり、あまり安全とは言えない地域を把握しておく必要がある。それと同様、安全ではないと一般に知られている国の中にもさほど心配する必要のない地域もあるかもしれない。そういった情報を入手するのは日本以外の国では残念ながらあまり容易ではない。仲介業者に頼らなくてはならないが、彼らは売ることばかりが頭にあり、必ずしも全体像を教えてくれるわけではないため、十分な情報を得た上での賢い決断ができないかもしれない。売りたい物件の近くで窃盗や暴行がよく起きるなどとわざわざ言うだろうか?恐らく言わないだろう。

不動産管理会社についても当たり前に思っていることがあるかもしれない。日本には信頼性の高さでトップレベルを誇る不動産管理のプロがいるため、投資家は彼らに100%の信頼を寄せられる。何でもやってくれるし、不動産管理のことは全て任せられる。だから不動産の所有者は一切心配しなくていい。

だがそのような管理会社は東南アジアのほとんどの国では見つけることができない。確かに、前述した通り仲介業者や不動産管理会社はあるにはある。だが日本のような不動産管理会社ではなく、日本では当たり前のような不動産管理スキルが明らかにない。彼らにとって一番大事なのは不動産を買ってくれる顧客を得ること。つまり、一度手放してしまった不動産のことは気にも留めないのだ。もっと買ってもらえるといった見込みがあれば別だが。

本来不動産管理会社は特に売却後、顧客の不動産物件を管理する。家賃相場をモニタリングして家賃の価格がなるべく相場と合っているようにするのが普通だ。これは特に入居者と契約を更新する際に非常に便利だ。このようにモニタリングをしていないと、マンション所有者はその地区の価値が跳ね上がっていることに気付かないまま、元の契約を継続してしまうかもしれない。価格が下がっているのに同じ家賃を徴収したままだったら?恐らく高すぎると見なされ、入居者は家賃相場に合った部屋を他に探し始めるだろう。土地の価値が下がって家賃を下げざるを得なくなったら不動産管理会社はそのことを所有者に伝えなくてはならない。入居者を失うリスクを冒さないためにも家賃の引き下げを検討してみませんか、と。
日本の不動産管理会社のように日本人投資家のケアをしてくれるような信頼できる仲介業者は全くいないのか。いるのだが探すのが一苦労だ。

これは不動産管理を自らしてはいけない理由の1つでもある。自分で管理したほうが収入が増える、だからメンテナンスに人を雇う必要はない、と考えているかもしれない。日本人投資家の中にはすでに海外に住み始めている人や、何度も足を運んで現地に銀行口座を開設する人もいる。日本の口座だろうと海外の口座だろうと、入居者に家賃を直接振り込んでもらうのは、お勧めできない。その理由は単純だ。入居者が正直で良い人たちばかりだったとしても、支払期日を忘
れたり、お金に困ったり、他にも責任があったりして身動きが取れないことはよくあることだ。また、支払い義務を忘れたり怠ったりすることも考えられる。

蛇口、照明、キャビネット、戸が壊れたら?その部分も含めて不動産管理会社にお願いするしかない。入居者のそばにいない、または同じ国に住んでいない状況でそういった日常の問題に対処しようとすると入居者サイドで不満が生じやすくなる。不動産管理会社がない場合や少なくとも信頼できて頼りになる仲介業者がいない場合、実に厄介な事態へと急変しかねない。不満を抱いた入居者は故意に物件を傷つけたり、必要な基準を満たさないまま勝手に修理してしまったりするかもしれない。

ところが「良い」部分もある。日本の場合、物件所有者に対する規制が非常に厳しい。家賃を滞納している入居者に対して家主は退去をお願いできないのだ。入居者側の権利のほうが圧倒的に強く、自由裁量の余地が与えられている。となれば家主は長い間、家賃を支払ってもらえるまで待たなくてはならない。賃貸中の物件をいくつも抱えている人であれば問題ないかもしれないが、1つの物件に頼りながら日々の生活や必需品をまかなっている人にとってこの状況は絶望的になりやすい。

東南アジアのような地域は違う。物事を異なって理解していて、入居者が家賃を納められない場合、必要ならば法的手段も辞さない構えで強制的に所有者が退去を言い渡せるのだ。この東南アジアの取り決めのほうがよっぽどいいと思う。家賃収入で必需品をまかなっている家主にとっては特にだ。あと、まったく融通の利かない入居者や家賃の支払いがたびたび遅れるような入居者にもこのほうがいい。

建物はちゃんと建つのか?

頻繁に起こることではないが、他国に関する注意点をもう1つ伝えておかなければならない。

建物が建つと公表されたにも関わらず完成しないというケースは日本では聞いたことがない。ビルが建つことになっているのなら建つのが当たり前だ。日本では。だが東南アジアやアジアの他の地域ではそうはいかない。頻繁にはないがあり得る。私もバンコクの中心地で未竣工の建築物を見た。

不動産管理会社が代理店として適任である理由がもう1つある。不動産管理会社はビルの開発業者からの恩恵や影響で動く仲介業者とは異なり、不動産物件と利害関係がないからだ。仲介業者は開発プロジェクトや計画中の開発を見せ、検討するように言い、同意書と頭金を得る。だが何年待っても投資のリターンがない。残念なことに建物など建っていなかったのだ。少なくとも、公表された時に建物の引き渡し準備ができていない可能性はある。何か月か遅れることはあるが、何年もかかることは普通はない。

注意してはもらいたいが過剰に怖がることはない。このような事態は起こり得るが滅多にあることではない。不動産管理会社でも仲介業者でも、取引するなら基本は同じだ。住宅開発業者の業績と評判をできるだけ多く見ること。同社の過去の開発に関する情報をなるべくたくさん入手すること。住宅開発業者の建設プロジェクトの引き渡しは元々予定していた納期に行われたか?行われなかった場合、どれだけ遅れたか?そもそも工事は完了したのか?同じようなことがこれまでに何回ぐらい起きているか?を注意深くきくことだ。

少し前に完成した建物や最近完成した建物については特に注意して見よう。そうすることで品質だけでなく、その会社に矛盾がないことや信頼できるかどうかもなんとなく掴める。古めの建物を見れば長持ちするように建てられているか、本当に信頼できる質のいい会社なのかが分かる。一方、比較的新しい建物を見れば先進的な考えを持った会社なのかどうかが分かる。例えば、比較的新しいビルの中にはすでに地震センサーが取り付けられているものがある。ほとんどのアジアの他の国々ではこれまで行われていないことだが、住宅開発業者が投資家、テナント、顧客ために一層の努力をしていると分かれば励みになる。駐車場を見ておくのもいいだろう。住宅開発業者の中には素晴らしい建物や物件は建てられるが、長期に及ぶビルの管理となると実にお粗末な会社もある。駐車場に行けば何が捨てられているかが見られる。また、ゴミの管理がどれほど行き届いているかも把握できるかもしれない。

仮に特定の開発業者が建てた不動産物件を未来の入居者が借りた場合にどんな感じになるだろう、といったイメージを掴んでおくのは良いことだ。自分が満足していないような建物で入居者が喜ぶはずはない。建物に対する期待が入居者と自分では違っていたとしてもだ。自分が満足しているなら入居者が満足する可能性も高い。

プレビルド(Pre-build)とは、建築中の物件のことをさすが、東南アジア投資に関しては実はいいオプションだ。評判の良さだけでなく、これまで取り扱った中に良い物件がいくつもあるような信頼性の高い会社が開発を行う場合は特に強くお勧めしたい。建設中または建設前の段階で、住宅開発業者は建設を進めるためにさらに多くの資金が必要になるケースがよくある。建物が完成し、入居者を募る準備ができた頃、手が出せないような価格にまで高騰するが、それより前の段階では安く売られる。支払計画も十中八九違うだろう。例えば中には総額の15~20%を頭金として請求し、プロジェクト完了後、予定されていた期日に残金を支払えばいいだけのところもある。必要な手付金や頭金を支払ってから2~3年の猶予ができるため、その間にのんびりと残金支払い用のお金を貯めることができる。

また、プレビルドの不動産物件に関し、所有者への引き渡し準備が整ってからおよそ3年ぐらいで価格が上昇する。そうすると元の価格の約15~20%の価格上昇を見込める。それが大体その物件の実際の価格となるだろう。よって建設中の不動産に投資した投資家は相当な額を結果的に節約できたというケースがよくある。

なによりも、建物が徐々に建てられていく様を見ると出資者として目に見える満足感がある。日本にいながらも建物が少しずつ完成していく様子をモニタリングすることができる。例え自分がその所有物件に住むつもりがなく、ただ賃貸するためだけに購入したとしても、譲渡式には出ておいた方がいいだろう。前章でも述べたように、東南アジアの人々はとても歓迎的で直接会って話すのが好きだ。譲渡式のような大事なイベントに顔を出しておくと、彼らとより良い継続的なビジネス関係を築ける可能性がある。

世話をしてくれる不動産管理会社や仲介業者がいたとしても自分でモニタリングするのはやはり大事なことだ。たまには自分の存在を入居者、特に東南アジアの入居者に感じてもらうことで関係者全員とより温かい仕事上の関係を築けるかもしれない。

【このコラムの著者】

風戸 裕樹

PropertyAccess 代表取締役社長・共同創業者
2004年早稲田大学商学部卒業。同年オークラヤ住宅に入社。その後、不動産投資ファンド(クリード、ダヴィンチ・アドバイザーズ)転じ、この間、起業構想を温める。

10年不動産仲介透明化フォーラム(FCT)を設立、社長に就任。日本の不動産取引を変革するべく、売却専門の「売却のミカタ」を開始し、全国展開。2014年にソニー不動産にFCT社を売却し、ソニー不動産 執行役員 売却コンサルティング事業部長兼コンサルティング事業部長として、創業に携わるとともに事業を拡大、不動産取引の透明化を加速。2017年シンガポールにてプロパティアクセス共同創業。

日本では不動産売買の専門家として広く知られる。座右の銘は「他山の石を以て玉を攻むべし」。モータースポーツ好きで F1に詳しい。 著書 『マンションを相場より高く売る方法』


Propertyaccess.co(プロパティアクセス)
シンガポール、マレーシア、フィリピン、日本に拠点を設ける不動産情報サービス企業。特に東南アジアを中心とした不動産情報を日本のテクノロジーを活用し世界で紹介。2018 年4 月には、AI を活用しフィリピンのコンドミニアム価格予測と物件情報サービスを開始。マレーシア、タイ、 ベトナムそして日本にて不動産投資家が安心して投資できるためのサービスを行っている。
ウェブサイト:https://propertyaccess.co/

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