樗木 裕伸の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資を始める人のノウハウ

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

不動産投資を始めるのに自己資金はどのくらい必要?

マイホーム購入でも自己資金(頭金)が必要とか、自己資金がなくても大丈夫とか、いろいろな意見を見聞きします。不動産投資での自己資金はどのように考えればいいのでしょう。

1 不動産投資における自己資金の役割とは?

不動産投資は、「他人に購入した不動産を使わせて、使用料(家賃)を得るビジネス」です。極論すると全額ローン(自己資金0)で不動産を購入しても利益が出るのであれば、OKなのです。

そのためローンの審査は、投資物件の収益から返済できるかというビジネスの事業性(収益性・安定性)がもっとも重視されます。
もちろん自己資金の多寡は、融資する金融機関にとって安心材料の一つとなりますが、必ずしも〇%以上を投資物件の頭金として入れなければならない、ということはありません。

一方、借り手にとって、借入をすることは返済義務を負うことです。キャッシュフローが滞り、金融機関から売却を迫られ、安値で物件を手放すことだけは避けなくてはなりません。借入が少なければ、返済額も少なく、仮に家賃収入が少なくなっても、一定期間、状況が改善されるのを待つことができます。

不動産投資における自己資金には、収入の不安定さを補い、安全性を高める役割があるのです。

2 借入なし(自己資金100%)と借入ありで何がちがう?

自己資金は安全性を高めるといいましたが、自己資金の割合は収益性にはどのように影響するのでしょうか。

簡単なモデルでシミュレーションしてみましょう。

上図から
 1)自己資金100%で物件を購入した場合、賃料収入が100万円/年、利益100万円/年(物件価格に対する利回り:10%)(自己資金に対する利回り:10%)になります。

 2)自己資金20%+借入80%で物件を購入した場合、賃料収入100万円/年、支払利息40万円/年、利益60万円(物件価格に対する利回り:6%)(自己資金に対する利回り:30%)になります。

 費用(支払利息)が増え、物件価格に対する利回りは低下する一方で、自己資金に対する利回りは上昇します。

 3)2)と同条件で5棟物件を購入した場合、賃料収入500万円/年、支払利息200万円/年、利益300万円/年(物件価格に対する利回り:6%)(自己資金に対する利回り:30%)になります。
利益額は、1)と比較して 200万円増加します。

借入割合を高め、投資規模を大きくすることで得られるこのような効果は、少額の投資で多くの利益を得られることから「レバレッジ効果」と呼ばれます。「レバレッジ」とは「梃子(てこ)」のことです。

3 レバレッジ効果は無敵?

前述のシミュレーションでもわかる通り、自己資金を0にして100%借入にすると理屈の上では、利益は無限大になります。

けれどもレバレッジ効果にも弱点があります。「物件価格に対する利回り<借入利率」の場合、利益が減少します。

先ほどのモデル2)の場合、1000万円に対して家賃収入40万円(利回り4%)になると、利益0(=家賃収入40万円-支払利息40万円)になります。
自己資金の200万円部分だけで考えると家賃収入8万円(4%)ですから800万円を借入れしてまで戸数を増やさない方が、利益が大きくなることになります。

この現象を俗に「逆レバレッジ」と呼びます。

レバレッジ効果には、収益拡大が期待できる一方で、空室発生や賃料下落により家賃収入が下がると逆に収益を減少させることもあることを理解しておくことはとても大切です。

4 どれくらい自己資金を準備すればいいの?

借入割合を高くすれば「収益性」が上がり投資として魅力が増えますが、「安全性」は低下します。トレードオフの関係と言えます。どちらをどの程度重視するかは、投資家の考え方によって異なります。

ここでは、「収益性を重視しながら、ある程度安全性も確保する」といった考え方を前提に「どれくらいの自己資金を準備すればよいか」考えてみましょう。

出所)東京カンテイプレスリリース「分譲マンション賃料の徹底研究(築年別)」(2014年5月7日)

上グラフから
築年数3年、15年、30年の賃料の変化は概ね連動していることから、経年劣化による賃料の低下は、ある程度予測可能です。投資の可否の判断基準となる収益シミュレーションに織り込む必要があります。

一方、同じ築年数であっても賃料相場が変動するので、賃料にバラツキがでています。賃料相場の変動に起因する賃料減少リスクに対しては、自己資金で備えるべきでしょう。理由は、借入返済は、賃貸人からの賃料収入で賄っているので、減少した分は、オーナーが「家賃」を肩代わりして返済に充てることになるからです。

データは、平均値の概ね±10%の幅に数値が入ります。実際の投資期間中の支払は、元利金の返済に加えて、税金、保険、修繕、募集費などがかかります。よって少なくとも20%程度は、自己資金を準備しておきたいところです。

ただ、賃料が高い年から見ると、低い年は15%近く下落しています。「今」は景気がいいのか、不動産市況が過熱気味なのか、といった投資のタイミングも併せて検討することが大切です。

自己資金の割合は、〇%と画一的に考えるのではなく、柔軟に対応するようにしましょう。

【このコラムの著者】

樗木 裕伸

銀行、IT系ベンチャー企業勤務を経て、2005年7月にFP/中小企業診断士として独立。

現在中小企業の経営者に対して、資産運用、後継者育成など包括的な相続事業承継コンサルティングを行なっているとともに、公的活動として東京都大田区の商店街活性化支援事業のアドバイザーとして商店街および個店に対し、創業・経営相談からリタイアメントプランニングまで相談・支援を実施している。
近年、変化の激しい時代を生き抜くための“知恵”の必要性を痛感し、子供とその母親を対象に“金銭”教育に取り組む。

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