藤田 博司の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資家が次に着目している民泊投資とは

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

【民泊投資】民泊開始までの準備

こんにちは、藤田博司です。

前回は、私がなぜ民泊を始めようと考えたのかから始まり、民泊のメリット、デメリットについて書きました。

今回は、民泊を始めるためにどのような準備が必要か、東京都大田区(特区民泊)での私の実体験を基に書きたいと思います。
私の場合は、民泊運営代行会社に民泊運用を始めるための特定認定申請を依頼しております。各所への相談、申請書類の作成は、全て民泊運営代行会社にて進めていただきました。

はじめに

民泊に関しては、自治体ごとにルールが異なります。
当記事の内容は東京都大田区(特区民泊)での事例を基に執筆していることをご留意の上、ご覧ください。

民泊準備の概要

主に下記関係各所との調整、申請、設備の準備が必要となります。

●民泊管理会社の選定
●民泊適性の査定
●生活衛生課との事前相談 (必須)
●消防署での事前相談と消防設備の設置 (必須)
●建築審査課との事前相談 (最低滞在期間7日未満の場合は必須)
●ゴミの処理について(必須)
●用途変更確認申請(用途変更が必要な場合のみ必須)
●近隣住民への周知(必須)
●家具家電準備(必須)
●特定認定申請(必須)
●募集開始

1つずつ詳しくご説明します。

民泊管理会社の選定

前回の記事でも書きましたが、家主不在型で民泊を運用する場合においては、民泊管理会社の利用が必須条件です。苦情があった場合、30分以内を目安に管理会社が現地へ駆けつけることが求められています。
一方家主が同じ屋根の下にいる家主滞在型の場合、家主が直接トラブル対応することができるため、管理会社の利用は必須ではありません。

つまり自分が住んでいない住戸を民泊として貸し出す場合、まずは運用する住戸の管理を委託する民泊管理会社を選定しましょう。

民泊適性の査定

「民泊での運用が可能か」「民泊の運用に向いているのか」の査定のため、次の2点を確認します。

1.用途地域
2.採算性

⒈用途地域

大田区で民泊もしくは特区民泊が可能なのは、「ホテル・旅館」の建築が可能な用途地域です。既存の都市環境、住環境保全の観点から、このように定められています。
具体的には下記の用途地域が該当します。

●第一種住居地域(床面積3,000m2以下)
●第二種住居地域
●準住居地域
●近隣商業地域
●商業地域
●準工業地域

これらの用途地域でなければ、そもそも民泊はできませんので、用途地域の確認は必須です。
用途地域は各自治体のホームページで確認することができます。不動産会社に問い合わせて確認するのもよいでしょう。

⒉採算性

法的に民泊が可能な物件だとしても、収支が合わなければ民泊運営をするメリットが希薄になってしまいます。
近隣のホテルや民泊物件の稼働状況、宿泊費の相場を基に、ある程度収益を予測してみましょう。
私の場合は、民泊運営代行会社に査定してもらい、採算性を確認しました。
他のエリアの物件では、査定の結果、到底採算が合わず民泊を見送った物件もあります。具体的に動き出す前に、採算の取れる民泊運用ができるかどうか、しっかりと見極めましょう。

生活衛生課との事前相談

用途地域が適切で、採算が合う見通しが持てれば、具体的な手続きに入っていきます。
最初にやるべき手続きは、生活衛生課との事前相談です。これは特区民泊の申請前手続きにおいて必須となります。
相談の内容は、主に特区民泊の要件に関してです。それ以外にも、次にどこでどのような手続きが必要かなど、民泊に関して分からないことがあれば、ここでほとんどのことは教えてもらえます。

私の場合は、民泊運営代行会社が大田区の生活衛生課に連絡を取り、事前相談当日に同行しました。ちなみに民泊の申請を代行会社に依頼している場合、オーナーが同行する必要はありません。私の場合は、自らの学びのために同行させてもらいました。

必要書類

●平面図(換気設備、採光、暖房、冷房、台所、浴室、便所、洗面設備及び寸法)

主な認定要件

●1居室の床面積が25m2以上で施錠可能であること
●台所、浴室、便所・洗面設備があること
●寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理・清掃に必要な器具などがあること
●外国語を用いた案内があること
●滞在期間が2泊3日以上であること
●建築基準法上「ホテル・旅館」が建築可能な用途地域であること

連絡先
大田区生活衛生課環境衛生担当
(「大田区特区民泊申請前手続について」より抜粋)

消防署での事前相談と消防設備の設置

生活衛生課での事前相談が終わったら、関係各所への事前相談を行います。
まず消防関係で行うべきことは次の4つです。

1.消防署での事前相談
2.消防法令上の用途判定
3.消防設備の設置
4.消防立ち会い点検

⒈消防署での事前相談

消防署での事前相談は必須です。所轄消防署予防係に事前に連絡をしてから、相談に行きましょう。
消防署では、民泊を行おうとする物件の図面や情報を基に、必要な消防設備を確認します。
消防設備について詳しくない方がほとんどだと思いますので、消防署での事前確認の際には、消防設備業者と一緒に相談に行くことをお勧めします。

必要書類

●民泊を行う部分の平面図(必須)
●民泊を行う部分の内装(不燃・難燃性能等)

把握しておくべき情報

●建物所在地と建物名称(必須)
●民泊を行う階、号室、床面積(必須)
●建物全体の階層、延べ面積、構造、階段の数・種類(屋内・屋外等)(一戸建ての場合は必須、それ以外は可能であれば)
●現在の建物全体の消防法上の用途、設置されている消防用設備等

連絡先
所轄消防署予防係

⒉消防法令上の用途判定

民泊を行うには、消防法令上、該当住宅を適切な用途に変更する必要があります。

家主不在型となる場合、もしくは家主滞在型であっても宿泊室の合計床面積が50m2を超える場合、その該当住宅は一般住宅ではなく「宿泊施設」として取り扱われます。
これは、一戸建て住宅・マンションやアパートなどの共同住宅どちらにおいても同様です。
宿泊施設として利用者の安全を確保できるよう、自動火災報知設備など防火措置を取ることが求められます。

さらに共同住宅の場合、民泊を行おうとする部屋が含まれる建物全体の何割が宿泊施設扱いになるかによって、さらに用途が分かれます。
該当する用途によって求められる防火措置が異なるため、管轄の消防署にて用途判定をしてもらいましょう。

必要書類
必要書類や添付が要求される書類は自治体によって異なるため、管轄の窓口に問い合わせて確認してください。

連絡先
所轄消防署予防係

⒊消防設備の設置

消防署で確認した消防設備を、該当住宅に設置します。資格を持った人しかできない工事もありますので、消防設備業者に依頼しましょう。
設備の種類に応じて設備前、設備後の届け出が必要な場合があります。自身の該当物件に設置した消防設備の種類を確認し、届け出を行いましょう。

参照:設備種類ごとの必要な届出
参照:申請様式

先述の通り、用途や物件により必要な設備は変わりますが、私の物件で設置した設備を参考までにご紹介します。

●熱感知機
●誘導灯
●漏電火災警報器
●消化器
●煙感知器(特定小規模施設用自動火災報知設備) ※家庭用のものとは異なる

⒋消防立ち会い点検

消防設備の設置が終わったら、消防署の立ち会い点検を行います。
立ち会い点検で不備が無く、消防法令に適合していると認められれば、「消防法令適合通知書」が交付されます。通常1~7日程度で交付されますので、消防署に受け取りに行きましょう。

建築審査課との事前相談

建築審査課で行うべきことは次の通りです。

1.事前相談

⒈事前相談

以下に該当する場合、建築審査課での事前相談が必須となります。

●新築物件
●用途変更が必要
●最低滞在期間が7日未満

建築審査課では、該当住宅が建築基準法に関連する規定に適合しているか、民泊の実施が制限される地域に該当していないかなどの確認を行います。

適合性チェックシート
(「大田区特区民泊申請前手続きについて」より引用)

連絡先
大田区建築審査課建築審査担当:03−5744−1388

ゴミの処理について

民泊施設から出るごみは「事業系ごみ」として扱われます。家庭ゴミとして捨てることはできません。
つまり民泊施設の利用者が出したごみは、民泊を運営する事業者の責任です。事業者には排出責任が課され、処理にかかる費用は事業者が負担することになります。
廃棄物処理業許可業者と契約を結び、ごみ処理を委託しましょう。
自分自身で、各自治体が定める規定の処理場に持ち込む、もしくは事業系有料ごみ処理券を購入し、有料で持っていってもらうという方法もあります。

参照:大田区のゴミの処理について

用途変更確認申請

建築基準法では、建物の主要用途に応じて基準が定められています。一般的な住居は「一戸建ての住宅」「共同住宅」などに該当し、その他「ホテル又は旅館」「事務所」「病院」など細かく分類化されています。

建物の用途を変更したい場合に必要なのが「用途変更」の手続きです。
特区民泊の場合、「一戸建ての住宅」「共同住宅」「長屋」など住宅としての用途が設定されている建物なら、用途変更せずに住宅扱いのまま民泊の運用が可能なケースが多いです。
しかし自治体によっては、住宅以外の用途が設定された建物で、かつ民泊に使用する部分の床面積が100m2を超える場合など、用途変更を必要とするケースがあります。条件に当てはまる場合、用途変更の確認申請が必要となりますので、手続きを行いましょう。

近隣住民への周知

民泊を始めるには、近隣住民への周知が必須です。
近隣住民への周知は次の手順で行います。

1.周知用書面の事前確認
2.近隣住民への周知

⒈周知用書面の事前確認

近隣住民へ周知を実施する前に、周知用書面の内容を生活衛生課に確認してもらいます。
メール、ファックスなどで送付することが可能です。

周知する範囲についてもこのタイミングで確認しておくとよいでしょう。

周知用書面の必須項目

●特定認定を受けようとする者の氏名(法人はその名称、代表者氏名)
●施設の名称及び所在地
●近隣住民からの苦情等の窓口の連絡先(担当者名、所在地、電話番号)
●廃棄物の処理方法
●火災等の緊急事態が生じた場合の対応方法
●当該書面に関する問合せ先の名称、連絡先
●意見の申出期限
●平易な表現を用いた当該事業の内容

(「大田区特区民泊申請前手続について」より抜粋)

連絡先

大田区生活衛生課環境衛生担当

⒉近隣住民への周知

生活衛生課で確認済みの書面を、近隣の住民にポスティングなどで配布します。
近隣住民への周知において、民泊運営に対する近隣住民の同意を得る必要はありません。しかし、意見の申し出や質問などがあった場合は、誠意を持って回答するよう求められています。
近隣住民からの問い合わせ対応などが完了した後、最後の「特定認定申請」を行うようにしましょう。

家具家電準備


寝具、テーブル、椅子、収納家具、調理・清掃に必要な器具などを設置します。
カーテン・じゅうたんなどを設置する場合は防炎製品が必要となりますので、事前に生活衛生課に確認しておきましょう。

特定認定申請

民泊事業を行うために必要な最終申請が「特定認定申請」です。
生活衛生課、建築審査課、消防署での確認、近隣住民への周知が全て完了後、必要書類(消防法令適合通知書など)を添付し、申請手数料を納めて、特定認定申請を行いましょう。

設備や苦情・緊急時対応が基準を満たしているか、消防法や建築基準法に準拠しているかなどを改めて確認します。書面上の確認プラス実地検査が行われるケースもあります。

全てをクリアしたら、ついに認定書の交付です。特定認定申請を行なった後、約1〜2週間で民泊届出番号が発行されます。
民泊経営の事業者として認められたことになり、区のホームページで公表してもらうことができます。

必要書類などの詳細は下記大田区のホームページをご参照ください。

参照:大田区資料

募集開始

認定書を受理し、民泊届出番号が発行されれば、ようやく民泊の運営が開始できるようになります。
民泊マッチングサイトなどを利用して募集を開始しましょう。

まとめ

法の整備が始まったばかりの民泊運営を始めるには、少し心理的障壁がある人もいるかもしれません。
確かに不動産賃貸経営と比べると、準備の手間、労力、時間はかかるように思います。
しかし1度経験してしまうと、思ったほど難しいことはありませんでした。準備に関しても、経験を重ねるほどより楽にできるようになると感じます。
慣れるまでは、特定認定申請や民泊運営は、民泊運営代行会社のサポートを得ながら進めるとよいでしょう。
不動産賃貸経営でも同じですが、信頼できる代行会社を見つけ、チームで運営していくことが大事だと実感しています。

当記事の内容は、私自身の大田区での特区民泊の体験を基に書きました。
最初に書いたように、民泊に関するルールは自治体によって異なります。
皆さんが実際に民泊を始める際には、各自治体に確認しながら準備するようにしましょう。
当記事が、民泊運営に興味を持つ皆さんのお役に立てますと幸いです!

【このコラムの著者】

藤田 博司

2011年に0から不動産賃貸経営(不動産投資)をスタートし、
2019月8月現在、東京、神奈川、北海道に築古木造アパートを中心に全6棟、 区分1戸を所有。
再建築不可、借地権、旧耐震等やや癖がある物件もあり。
自主管理2棟、区分1部屋。

三重県出身。
筑波大学卒業後、ITベンダーを渡り歩き、フリーランスを経て、LIFULLに就職、2018年9月にLIFULLを卒業し、現在は不動産賃貸経営を中心に活動中。
不動産賃貸経営以外の分野も模索、検討中。

【自由で幸せな人生】のためのオススメ情報発信のため、ブログ「ひろすたライフ」を不定期更新中

■保有資格
LTILファンデーション、ソフトウェア開発技術者(現応用情報技術者試験に該当)、ビジネス文書検定2級、宅地建物取引士

■好きなこと
読書、サッカー、旅行

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