こんにちは、藤田博司です。
「駅から遠い物件を民泊で運用するのはかなり難しい」と以前コラムに書きましたが、工夫次第で「駅から遠い物件でもじゅうぶん民泊で運用できる」ことが分かりました。
今回は、駅から遠い物件でも民泊を成功させる方法についてご紹介します。
駅から遠い物件は本当に不利?
車社会である地方の場合、駅からの距離は利便性にあまり影響がないケースもあるでしょう。しかし都心では、駅近物件と比べて駅から遠い物件は圧倒的に利便性が落ちます。
大きな荷物を持った旅行客(主に外国人)を利用者として想定すると、駅から遠い物件の場合、利用者募集に苦労するのは明白でしょう。
私は神奈川県、東京都に駅から徒歩25分以上あるアパートを保有しています。民泊運用できないかと思い、民泊運営代行会社に査定してもらったところ、どちらの物件も到底収支が合いませんでした。
もちろん例外もあります。
池袋、新宿といったターミナル駅や、浅草などの観光名所から徒歩25分というのであれば、利便性が悪くても高稼働で民泊運営ができるそうです。
駅から遠くても収益を上げられるというのは、このように限られた好立地の物件にだけ当てはまる話なのでしょう。
つまり、基本的には「駅から遠い物件で民泊運営するのはかなり難しい」ということです。
ところが先日、千葉県のとある中核市で駅から徒歩25分ほどの物件で簡易宿所を運営し、成功している方(以降Aさん)の話を聞く機会がありました。
簡単に説明すると、簡易宿所は民泊より許認可の難易度は高い一方で、営業日数や宿泊日数に制限がないというメリットがあります。
しかし「一般の住宅やマンションに有料でゲストを宿泊させる」という点では、民泊とほぼ同じと考えて相違ないでしょう。
さて、Aさんはなぜ駅から徒歩25分もある場所で、簡易宿所を成功させているのでしょうか?
駅から遠い物件での成功要因
それではAさんの事例を基に、駅から遠い物件での成功要因について説明しましょう。
Aさんが駅から遠い物件で簡易宿所を成功させている主な要因には、次の4つが考えられます。
・ターゲティング
・立地
・集客方法
・差別化
1つずつ説明します。
ターゲティング
Aさんの簡易宿所成功の1番のカギは「ターゲティング」です。
Aさんの物件の場合、「駅から遠い」というネガティブ要素を全く不便に思わない人たちが、メインの利用者となっているのです。
「駅から遠くても全く不便に思わない人」ってどのような人でしょうか?
「駅を利用しない人」
つまり
「電車を移動手段としていない人」です。
そうです。
「車で移動している人」です。
車で移動している人にとって、駅から遠いか近いかはさほど影響がありません。むしろ重要なのは、駐車場があるかないかです。
Aさんの物件にはもちろん駐車場があります。しかも駐車場の利用は無料にしているそうです。
車で移動して宿泊するお客さんなので、大半は日本人です。
私もそうでしたが「民泊 = 外国人観光客」というイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。
Aさんのケースでは、「民泊 = 外国人観光客」という前提そのものが違うのです。
そうです、そもそもターゲットが違う!
ターゲットが違えば、当然ニーズも違います。
「民泊のターゲットは、大きなスーツケースを持って電車移動する旅行者」という固定概念を取り払ったことが、駅から遠い物件でも高稼働で簡易宿所運営ができているカギなのです。
ただし、駅から遠い物件の場合、駐車場があることはかなり重要な要素となるでしょう。
このように、駅から遠い物件でもターゲットとターゲットにあった工夫次第で、じゅうぶん民泊運営を成功させることができます。
Aさんの例をまとめると、
ターゲット → 車で移動する日本人
ターゲットにあった工夫 → 無料で利用できる駐車場がある
となります。
立地
ターゲットをどう設定するかと同時に、もう1つ大事な要素があります。
それは「立地」です。やはり立地という要素は外せません。ただ駐車場さえあれば、人が来て泊まっていくわけではないのです。
実はAさんが所有する物件の宿泊者の約60%は、東京ディズニーリゾートの利用者だそうです。Aさんの物件の例だと「利用者宅 → Aさんの物件 →東京ディズニーリゾート」またはその逆の移動があります。
つまり利用者は「東京ディズニーリゾートに行く」というメインの目的があり、そのために便利なAさんの物件に宿泊するのです。
Aさんの物件に関していうと、「東京ディズニーリゾートに行きやすい立地」ということが大きなポジティブ要素となっています。
このように、駅から遠くても車で移動するなら苦にならない程度の距離に名所がある立地であれば、じゅうぶんに民泊運用できる可能性があります。
ターゲットにあった集客方法
Airbnb、ブッキングドットコムをはじめ、民泊の集客に利用できるサービスはいくつもあります。その中で、ターゲットとする層がよく利用しているサービスを使って募集することが大切です。
例えば「日本人」をメインターゲットにするのであれば国内での集客に強いサービス、「中国人」をメインターゲットにするなら中国人の集客に強いサービスを利用するのが効果的です。
しかし、実際に運用してみないと分からないニーズも必ずあります。多少手間がかかりますが、最初は複数のサービスを使って募集し、しばらく運用してみるのがお勧めです。
どのような利用者が多いのかを把握した後、いくつかのサービスに絞っていくのがよいでしょう。
ちなみにAさんの物件の場合、ブッキングドットコムからの集客が大半を占めるそうです。
差別化
最後に、駅から遠い物件でも民泊運用を成功させる要因の1つ「差別化」について説明しましょう。
例えば
・その場所でしか食べられない料理
・その場所でしか見られない景色
・他にないような部屋
・独特の雰囲気
などです。
他にはないような特徴があれば、利便性のよくない物件であっても、利用者に魅力をアピールすることができます。
競合が少ない場合はあまり影響しませんが、競合が多くなるほど差別化することが大切です。
Aさんは「おもてなし」について学ぶために、自宅から遠い物件を1年間ご自身で管理、運営されたそうです。
利益だけを考えるのではなく、利用してくれるゲストに「いかに喜んでもらえるようにするか」を試行錯誤していくことが「差別化」につながったのでしょう。
そして、他にはないような「おもてなし」が受けられる物件として、集客に成功しているのだと思います。
まとめ
今回のコラムでは「東京ディズニーリゾートを利用する車移動の日本人」をメインの宿泊者とする簡易宿所の例をとりあげました。
民泊というと「大きなスーツケースを持った外国人が利用する」というイメージが強いですが、実際には他にもさまざまな利用者が考えられます。
ターゲットを変えることで、今までデメリットだと思っていたことが全くデメリットではなくなったり、今まで必要なかったことが必要になったりします。
新しい発想、アイデアが、当たり前だと思っていることや既存の常識、前提を覆すことがしばしばあります。そして、そうしたアイデアを形にした先には、広大なブルーオーシャンが広がっている。
Aさんの事例は、まさに目からウロコでした。
Aさんも最初から全て分かっていたわけではないでしょう。手探りで行動、模索し続けた結果、今の成功があるのだと思います。
許容可能なリスクを冒しつつ、挑戦・行動することで、新たな可能性を切り開いていけるのでしょう。
このコラムが、民泊運営に興味のある方や運営方法に悩んでいる方々に、何かしらお役に立てますと幸いです。