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無許可営業が約7割!?急増する京都の民泊、その実態とは?~京都市民泊施設実態調査

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HOME’S PRESS記事より引用 (2016年 08月22日 11時06分 掲載記事)
(※引用元の記事内容は、修正される場合があります)

京都市が民泊の実態調査の結果を発表

2015年の観光客数が5,684万人、外国人による宿泊客数が316万人を記録した京都。同時に、市内の主要ホテルの稼働率が90%近くになるなど、宿泊需要に対し宿泊施設の不足が生じている

2015年の観光客数が5,684万人、外国人による宿泊客数が316万人を記録した京都。同時に、市内の主要ホテルの稼働率が90%近くになるなど、宿泊需要に対し宿泊施設の不足が生じている

個人宅の空き部屋や投資物件を客室として提供する「民泊」。主にインターネットの仲介サイトなどを通じての申込が主流となっている。
これまで民泊を合法的に行うためには、”宿泊料を受け取って人を宿泊させる営業”は、旅館業法で定める営業許可を得て行うか、国家戦略特区である東京都大田区、大阪府(政令指定都市および中核都市の37市町村)で行うかのどちらかしかなかった。しかし、2016年6月に閣議決定された「新法民泊」では、旅館業のような「許可制」ではなく、インターネットによる「届出制」によって、旅館業法で定める営業許可なく部屋を貸し出せるようになる。

この「民泊」が急増している京都市では、民泊仲介サービス計8サイトを対象に「京都市民泊施設実態調査」を実施、その結果を2016年5月9日に公表した。

今回の民泊実態調査の目的について京都市は、「民泊の実態を把握すると共に、日本を代表する観光都市として、宿泊施設の拡充のあり方についての検討につなげたい」としており、あくまで民泊を取り締まり、”民泊そのものを禁止にする”という方針ではないとしている

民泊施設はビジネスホテルの延長線?

「京都市民泊施設実態調査」では、民泊仲介サイト8社で計2,702件(宿泊可能人数1万1852人)の登録を確認し、宿泊施設としての実態や旅館業法許可の有無などを調査している。

まず施設タイプの内訳は、一戸建てが935件、集合住宅が1,677件、その他90件。この中でも、貸し出す物件の施設すべてを宿泊施設として提供する「一棟(一戸)貸し」が、一戸建てで552件(59.0%)、集合住宅で1,486件(88.6%)となっている。
宿泊客に個室を提供しつつ、リビングやキッチン、トイレなどは共同利用する「部屋貸し」や、宿泊客に個室の提供はなく、施設内すべてを管理者、もしくは他の宿泊客と共同利用する「シェアルーム」と比較して高い結果となっている。

また、最低宿泊日数については、1泊から宿泊可能な施設が1452件(53.7%)と過半数を超えている。なお、東京都大田区や大阪府内の一部で実施されている民泊の国家戦略特区における「最低宿泊日数6泊7日以上」という条件を満たしている施設は1.6%しか存在しない。

1泊当たりの宿泊料金は、1人当たり「6001円~1万2000円」が1,051件(38.9%)と約4割を占める。
“一棟(一戸)貸し”や”1泊から宿泊可能”、という傾向から、京都市における民泊は、「遊休資産を活用し、賃貸しながら交友を広げる」という”シェアリングエコノミーの本質”を楽しむ事よりも、ビジネスホテルのような利用が主流であることがうかがえる。これは同時に、民泊施設がビジネスホテルと競合する懸念があることを意味している。

京都市内の民泊施設の状況(施設タイプ、宿泊日数、1泊当たりの宿泊料金) 参照:京都市「京都市民泊施設実態調査について」より一部抜粋

京都市内の民泊施設の状況(施設タイプ、宿泊日数、1泊当たりの宿泊料金)
参照:京都市「京都市民泊施設実態調査について」より一部抜粋

民泊運営に必要な旅館業法に基づく許可の有無、その実態は?

では、国家戦略特区ではない京都の民泊施設のうち、実際に許可を得ている施設はどの程度存在するのだろうか。
旅館業法などの法令に基づく許可は、消防設備の設置やマンションの管理規約、建築物の用途変更の必要性など、クリアすべきハードルが高く、旅館業法の許可を得ていない”違法民泊”が多数存在することは想像に難くない。

調査によって物件の所在地が特定できたのは1,260件(46.6%)。そのうち、旅館業の許可を確認できたもの、つまり、合法的に民泊営業をしているのを確認できたのは、189件(7%)に留まる。さらに、物件の所在地の番地の特定に至らないものの、同じ町内に旅館業の許可を受けている物件がないことが判明している”無許可と思われる施設”776件を加えると、計1,847件(68.4%)と、「無許可で民泊をしている施設の最低数」は、最低でも”約7割”にのぼることがわかった。

京都市内の民泊施設の旅館業法の許可の有無 参照:京都市「京都市民泊施設実態調査について」より一部抜粋

京都市内の民泊施設の旅館業法の許可の有無
参照:京都市「京都市民泊施設実態調査について」より一部抜粋

周辺住民に対するヒアリングでは、「不安感、不快感」が顕著に現れる

また、今回の調査では、市内の民泊施設周辺に住む住民や、民泊運営者などへのヒアリングも実施している。

施設周辺住民へのヒアリングのうち、戸建て住宅に居住する住民からの意見の傾向としては、
「集合住宅と比較して大人数の宿泊が可能であるため、騒音につながりやすい」
「路地奥での施設については、火災が心配」
という声が挙がっており、集合住宅からの意見では、
「不特定多数の観光客が宿泊することで、オートロックの意味がなくなっている」
「1つの集合住宅で多数の民泊が運営されている物件で、ごみ問題、騒音、深夜にインターホンを間違って鳴らされた」
などの、迷惑を被っているという具体的な声もあり、中には物件からの退去を検討している住人もいた。

共通意見としては、
「民泊開業に当たっての事前説明をされていない」
「管理者が常駐せず、トラブル時の連絡先も分からない」
ことなどが、周辺住民の民泊に対する不安や不快感を抱く理由の一つになっていることがわかった。

一方、民泊事業者へのヒアリングでは、民泊施設を提供する側の”法令遵守に対する意識の低さ”が浮き彫りとなった。主な声としては、
「多くの民泊運営者は、旅館業の許可取得を困難と考えている」
「たとえ取得が可能であっても、新たなコストが発生することや手続きに手間がかかることから許可を取得しようとは思っていない」
「保健センター等からの指導を受けたとしても、当該施設の事業を停止すれば摘発されることはないと考えている」
などが挙がっている。

また、京都市内では、民泊施設の増加により競争が激化しており、京町屋での宿泊体験や運営者によるおもてなし強化など、すでにサービスの差別化、価格競争が始まっているという。

民泊の適切なルール整備に向けた大きな一歩となるか

今回の京都市による民泊の実施調査は、”違法性”や”不安”など、民泊がもたらすネガティブな側面が表面化する内容となった。しかし、冒頭でも述べた通り、今回の京都市による調査の目的は、民泊を取り締まり根絶することではない。周辺住民の生活環境との調和を図りつつ、”世界を代表する観光都市「京都」にふさわしい宿泊施設のあり方を検討していく”という多種多様な宿泊施設に対する前向きな姿勢を感じることできる。

京都市は今後の対応として、無許可営業の宿泊施設のうち、所在地が特定されている施設について、現行の法令に基づき営業許可が取得できない施設に対しては営業を中止するよう、指導し、指導に従わない場合は厳正に対処するとしている。また、所在地が特定されていない施設については、民泊仲介サイト運営事業者に対し情報提供を求める要請文書を提出し、引き続き所在地の特定を進め、特定後、直ちに指導に取り組むとしている。

日本を代表する観光地である京都市の実態調査は、今後の民泊のルール整備において大きな意味を持つもつように思う。
京都市の多様な宿泊施設の受け入れに対する前向きな姿勢が、「観光立国」の実現に向けた第一歩になることを期待したい。

【京都市民泊施設実態調査の概要】
■調査目的
市内の民泊施設の実態を把握するとともに、その課題を抽出し、宿泊客と周辺住民の安心・安全の確保と周辺住民の生活環境との調和が図られた宿泊施設の拡充の在り方についての検討につなげる。なお、本調査における民泊施設とは、調査対象とした民泊仲介サイトに掲載されている施設とする。

■調査施設数:2,702件(戸建て 935件、集合住宅 1,677件、その他 90件)

■調査の時期
調査時期:2015年12月1日~2016年3月31日

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