LIFULL HOME'S PRESSの不動産投資コラム

シリーズ連載: HOME'S PRESS編集部

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

マンション標準管理規約の改正で、何がどう変わったのか

無題10
HOME’S PRESS記事より引用 (2016年 06月15日 11時00分 掲載記事)
(※引用元の記事内容は、修正される場合があります)

標準管理規約の改正は多くのマンションに影響が及ぶ

約5年ぶりとなった今回の改正。2016年3月に「マンションの管理の適正化に関する指針」および「マンション標準管理規約」が改正された

約5年ぶりとなった今回の改正。2016年3月に「マンションの管理の適正化に関する指針」および「マンション標準管理規約」が改正された

国土交通省は「マンションの管理の適正化に関する指針」(告示)および「マンション標準管理規約」(局長通知)を改正した。

約5年ぶりとなる今回の改正は、2012年1月に設置された「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」で見直し作業が進められていたものであり、2015年3月に同検討会の報告書がまとめられている。その後、同年10月から11月に実施されたパブリックコメントを経て、指針(ガイドライン)および単棟型マンション向けの標準管理規約(コメントを含む)が2016年3月14日、団地型および複合用途型マンション向けの標準管理規約(コメントを含む)が3月31日に改正されている。

国土交通省が定める標準管理規約に法律的な強制力はないものの、大半のマンションでは分譲の際にこの標準管理規約に沿ったものが作成され、入居後に区分所有者が結成する管理組合で規約内容の大幅な見直しがされることは少ない。これから入居が始まるマンションではこの標準管理規約そのものが適用されるケースも多いため、重要な意味を持つことになる。既存のマンションでも、今回の改正内容に沿って管理規約が見直されることは多いだろう。

「マンションの管理の適正化に関する指針」および「マンション標準管理規約」の改正で何が変わったのか、その主な点を確認しておきたい。

主な改正項目は7つ

今回の改正の背景として、高齢化などによる管理組合の担い手不足、管理費滞納などによる管理不全、暴力団排除の必要性、災害時における意思決定ルールの明確化などが挙げられている。分譲マンションのストック戸数が600万戸を超え、とくに都市部ではマンションが一般的な居住形態となっている現代において、社会環境の変化などに伴う見直しは欠かせないものだ。

改正点は細かなものも含めるとかなりの数にのぼるが、主な項目は次の7つとなっている。

【管理組合運営における選択肢を広げるもの】
□ 外部の専門家も、理事長や理事、監事などへ就任できるようにすること
□ 住戸の価値割合に連動した議決権や管理費負担割合の設定を可能にすること

【適正な管理のために規定を明確化するもの】
□ コミュニティ条項などの再整理
□ 管理費などの滞納者に対する措置について段階を追って整理(フローチャートの提示など)

【社会情勢を踏まえて規定を整備するもの】
□ 暴力団構成員などを排除するための条項
□ 災害時などにおける応急的な補修、緊急時の立入りなどに関する条項
□ 管理状況などに関する情報を開示する場合の条項

これらのうち、とくに大きな改正となったのが「コミュニティ条項」と「外部専門家の活用」に関するものである。この2つについて少し詳しくみていくことにしよう。

コミュニティ活動の重要性を掲げながら「コミュニティ条項」を削除

「コミュニティ条項」とは、旧標準管理規約第27条および第32条において、管理費の使途および管理組合が行う業務に「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成(に要する費用)」を定めていたものである。「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」は、その定義や解釈が曖昧なために、区分所有者間における意見の相違や訴訟を含む争いが起きている事例を問題視し、訴訟などの法的リスクを回避する観点から「コミュニティ条項」を削除することとした。

その方針が明らかにされた2015年3月以降、実際に管理組合運営に携わる多くの人たちから強い反対意見が寄せられたものの、結果的には原案どおり「コミュニティ条項」が削除されたのだ。
検討会では「強制加入である管理組合と、任意加入である自治会・町内会などの混同による弊害」が指摘されたようだが、そのような事態が生じないように留意しながら真摯にコミュニティ活動を推し進めていた人たちが反対の先頭に立っていたことはよく理解しておきたい。

標準管理規約からコミュニティ条項を削除した一方で、「マンションの管理の適正化に関する指針」では「マンションにおけるコミュニティ形成は、日常的なトラブルの防止や防災減災、防犯などの観点から重要なものであり(中略)良好なコミュニティの形成に積極的に取り組むことが望ましい」とコミュニティ活動の重要性を掲げた。また、標準管理規約のコメントにおいて「マンションやその周辺における美化や清掃、景観形成、防災・防犯活動、生活ルールの調整等で、その経費に見合った資産価値の向上がもたらされる活動は(中略)可能である」としている。

だが、「経費に見合った資産価値の向上がもたらされる活動」とはいったい何を基準に判断するものなのか、結果的に「資産価値の低下」が起きたときに支出をめぐって争いが起きる余地はないのかなど、曖昧さの回避を目的とした改正部分が、さらなる曖昧さを生み出している印象も拭えないだろう。

また、コミュニティ条項が削除されることで「マンションでは居住者向けのイベントなどができなくなる」という解釈も広がったようだが、管理組合による決議や支出の承認を正当に行えば開催は可能である。参加者の負担のみで開催するイベントなども問題はない。しかし、異なる解釈や誤解の余地を作ったために、新たなトラブルのリスクが生じる事態になることもありそうだ。

外部専門家の活用は柔軟に

もう一つの重要な改正が、外部専門家の活用を選択肢に加えたことだ。従来の標準管理規約では管理組合員、つまりそのマンションの区分所有者でなければ理事長や役員になれなかったわけだが、その要件を緩和して区分所有者ではない第三者も管理組合の運営に直接、携わることができるようにした。外部専門家としては、主に弁護士やマンション管理士などが想定される。

区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)のうえでは、これまでも外部の者を「管理者」にすることは可能だった。しかし、多くのマンションが準拠する標準管理規約でこれを認めていなかったため、現実の活用事例はごく限られたものに過ぎなかっただろう。

この改正の背景には、高層化や大規模化によって管理業務が複雑になったことのほか、老朽化マンションの増加、居住者の高齢化、空室の増加、役員の担い手の不足などによって管理組合運営が困難になるマンションが増えている現状がある。今後は運営が困難な事態に直面している管理組合だけでなく、新築当初から外部の専門家を活用する事例も出てくると考えられる。

しかし、理事長や役員に外部の専門家を入れたからといって、管理組合への住民参加の重要性が変わるわけではない。外部専門家へ業務を丸投げしたり、外部専門家と管理会社を混同したりすることなく、利益相反取引の防止や適正な業務遂行などについて、しっかりとチェックしていくことを住民の義務として考えなければならない。総会などに参加することも従来同様に大切だ。

マンションが抱える多様な課題に、細部の「再見直し」も必要になる?

管理費の支出項目では「地震保険料」が追加された。これまでは「共用部分等に係る火災保険料、その他の損害保険料」となっていたわけだが、これに地震保険料を加えたことで今後は加入率の増加も見込まれそうだ。

その一方で、2013年頃から問題が顕在化した「脱法ハウス」問題、2014年頃から大きな社会問題となっている「違法民泊」問題などについては、さらなる検討も求められそうだ。現実に問題が生じているマンション管理組合では、どのように対応すればよいのか、民泊など従来の使用方法とは異なる新しい動きに対して、それを許可する場合、禁止する場合を含めて「管理規約に何を加えればよいのか」といった指針を切実に求めているのではないだろうか。

マンションのコミュニティ活動についても今回の改正では曖昧さが払拭されず、紛争の種が残されたままだ。既存マンションで管理規約の見直しをする際にも、標準管理規約の文面をチェックするだけでは混乱を招きかねない。国土交通省による「コメント」部分や「国土交通省の考え方」の書面まで読み込まないと、居住者同士の見解の相違も生まれるだろう。

さらに、コメントでは「一部の者のみに対象が限定されるクラブやサークル活動経費」に全員から徴収する管理費を充てることは不適切だ、としている。これらに直接かかる費用は参加者が負担することで解決できるだろうが、そのために使われる共用施設の維持管理費用などについては、もう少し検討も必要だと感じられる。

次回の「大幅な改正」は何年か先になるとしても、必要な事項については随時「適切なタイミング」で見直していくことを期待したいものである。

共用施設の維持費など、検討余地のある課題も多い。 必要な事項については随時「適切なタイミング」で見直していくことを期待したい

共用施設の維持費など、検討余地のある課題も多い。
必要な事項については随時「適切なタイミング」で見直していくことを期待したい

【このコラムの著者】

LIFULL HOME'S PRESS

LIFULL HOME'S PRESSは、住まいの「本当」の情報を届け、住まいの専門家の知識・見解、住み替え体験者の体験・意見が学べます。 住まいの「今と未来」の新鮮な情報、トレンドを発信や「らしく住む」ための知識・アイディア・ヒントが盛りだくさん。

他のコラム著者も見てみる

不動産投資家によっても違いは様々。
LIFULL HOME'Sが厳選した不動産投資家や専門家のコラムから色々な不動産投資スタイルを吸収してライバルに差をつけよう!

石川 和寿

シリーズ連載: 不動産会社のプロの意見

最新コラム: 賃貸のプロが教える入居者募集の6つのコツ

藤田 博司

シリーズ連載: 不動産投資家が次に着目している民泊投資とは

最新コラム: 民泊の準備で困ったこと

樗木 裕伸

シリーズ連載: 不動産投資を始める人のノウハウ

最新コラム: 不動産投資ローンと住宅ローンの違いと5つの金融機関の特徴

逆瀬川 勇造

シリーズ連載: 不動産投資を始める人のノウハウ

最新コラム: 不動産投資は常に融資との戦い?ローンの基礎知識や流れを解説

LIFULL HOME'S 不動産投資編集部

シリーズ連載: 不動産投資を始める人のノウハウ

最新コラム: 会社員の副業は不動産投資で決まり!?副業で取り組むメリット4つとは?

風戸 裕樹

シリーズ連載: 初心者のための東南アジア投資ガイド

最新コラム: 第2章 日本の不動産市場と海外投資(3)

金井 規雄

シリーズ連載: アメリカ・ロサンゼルスで不動産投資 7年で1億円

最新コラム: あとがき

橋本 秋人

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

最新コラム: 不動産投資で押さえておきたい土地の公的価格

田中 圭介

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

最新コラム: No.41インドネシア不動産投資のチャンス その2

佐藤 益弘

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

最新コラム: 高齢化と不動産投資(2)~「簡易生命表」を見て、人生100年時代を理解する

菅井 敏之

シリーズ連載: 誰も教えてくれなかった「銀行」~その傾向と対策~

最新コラム: 【第四回】必ず行っておきたい、銀行との「コミュニケーション」

LIFULL HOME'S不動産投資フェア

シリーズ連載: 2018/9/15+16 投資EXPO出展企業インタビュー

各出展企業インタビュー記事はこちら

LIFULL HOME'S マーケティング部 データ編集担当

シリーズ連載: ユーザーの本音から探る不動産投資

最新コラム: 将来性を秘めた街 『都心』エリア

鈴木 学

シリーズ連載: ヨーロッパの不動産事情

最新コラム: 経済苦境続くギリシャ不動産のいま

石渡 浩

シリーズ連載: 不動産投資に有益な融資を受けるための知識

最新コラム: 第4回 税引後キャッシュフロー偏重の盲点 銀行は決算書のここを見る(後編)

北野 琴奈

シリーズ連載: 今後はどうする?不動産投資と資産形成・運用の考え方

最新コラム: 利下げと不動産投資

猪俣 淳

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

最新コラム: フィッシャー・ハドソン・ウィルソン・モデル

右手 康登

シリーズ連載: CPM®流「相続・不動産経営 実践術」 右手 康登のコンサル「みぎからひだりへ」

最新コラム: 島国の中での常識 VS グローバルスタンダードを知ることの重要性

末永 照雄

シリーズ連載: 失敗しない不動産投資の法則

最新コラム: 米国不動産投資(2) ― サンディエゴ編

寺尾 恵介

シリーズ連載: 悩める投資家への「目からウロコが落ちる」アドバイス 誌上チャレンジ面談

最新コラム: 27.「決算書思考」で不動産投資が変わる(前編)

伊藤 英昭

シリーズ連載: 伊東英昭氏の不動産投資コラム

最新コラム: vol.13 マンションと高級車

不動産投資・収益物件を検索するなら【LIFULL HOME'S 不動産投資】賃貸経営[マンション経営・アパート経営]をお考えなら、まずは掲載中の投資物件[投資用マンション・売りアパート・一棟売りマンション]を地域や価格帯、会社で検索して、価格や想定利回りで絞り込み!気になる投資物件を見つけたら物件の周辺情報を調べたり、収益シミュレーションを使って実際の運用をイメージ出来ます。不動産会社へはメールか電話でお問い合わせ・相談が可能です(無料)。不動産投資による資産運用をお考えなら【LIFULL HOME'S 不動産投資】

ページトップへ

情報セキュリティマネジメントシステム国際規格

株式会社LIFULLは、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格「ISO/IEC 27001」および国内規格「JIS Q 27001」の認証を取得しています。