LIFULL HOME'S PRESSの不動産投資コラム

シリーズ連載: HOME'S PRESS編集部

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

“不動産競売”での入手は難しくなっている!? その動向と注意点を探る

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HOME’S PRESS記事より引用 (2016年 09月04日 11時00分 掲載記事)
(※引用元の記事内容は、修正される場合があります)

不動産競売での落札は「狭き門」に?

住宅を購入するときには物件を担保にして住宅ローンを借りるケースが多く、債権者(金融機関など)は抵当権を設定する。自営業者などが事業資金を借りる際にも、所有する不動産を担保にすることが大半だろう。そして、返済が滞れば債権者は裁判所へ申立てをして強制的な換価処分に踏み切る。これが「不動産競売」といわれるものだ。

今回はこの不動産競売について、最近の動向や注意点などみていくことにしよう。
まず、不動産競売の件数だが、裁判所の「司法統計年報」をもとに2005年から2014年まで10年間の申立件数(担保権実行および強制競売による新受件数の合計)の推移を表したのが下のグラフである。

2004年頃まで全国で7万件を超える水準だった不動産競売は、長期的にみれば減少傾向が続いている。2008年および2009年が高い水準になっているのは、リーマン・ショックに端を発した金融危機によるものだろう。2010年に急減しているのは、2009年12月4日に施行された「中小企業金融円滑化法」が少なからず影響している。ちなみに各年の申立件数のうち10〜15%程度が強制競売によるものであり、残りの85〜90%ほどが担保権の実行による競売となっている。

2010年以降も不動産競売申立件数は減少が続いており、2014年は全国合計で28,084件と、これまでのピークだった8万件弱に比べおよそ3分の1の水準にとどまった。これには、いわゆる「アベノミクス」による景気回復が奏功している一面もあるだろうが、不動産競売が実施される前の「任意売却」が浸透しつつあることも考えなければならない。任意売却は、債権者との合意に基づいて競売前に一般市場で売却をするものだが、競売よりも高値で処分できるケースが多く、債権者と債務者の双方にメリットが生まれやすいのだ。次第に件数が減っているぶん、購入者側からみれば不動産競売は「狭き門」になっているかもしれない。

裁判所「司法統計年報」をもとに作成

裁判所「司法統計年報」をもとに作成

不動産競売入札の主な流れ

まずは、「BIT(不動産競売物件情報サイト)」で三点セット(物件明細書、現況調査報告書、不動産評価書)の確認を

まずは、「BIT(不動産競売物件情報サイト)」で三点セット(物件明細書、現況調査報告書、不動産評価書)の確認を

一般的な既存住宅あるいは土地の売買相場よりも安く手に入れることができる場合も多い不動産競売だが、まず初めに行われるのは「期間入札」だ。これが公告された後に、物件の内容について2週間程度の閲覧期間が設けられるため、入札希望者はこの間にチェックすることになる。現在は全国ほぼすべての裁判所の物件が「BIT(不動産競売物件情報サイト)」で公開されているため、まずはインターネット上で三点セット(物件明細書、現況調査報告書、不動産評価書)を確認すればよいだろう。

ただし、BITシステムでは固有名詞などが「黒塗り」されているので、実際に入札しようとする物件については、裁判所で閲覧をして確認するようにしたい。

入札は、指定された期間内にまず保証金(売却基準価額の20%相当額)を振り込み、その証明書とともに入札書および一定の添付書類を裁判所へ持参または郵送することで行う。入札書を入れる封筒は「入札書在中」と印刷された専用のものが用意されている。その際に考えなければならないのが入札額だが、売却基準価額から20%減額をした金額が「買受可能価額」であり、それ以上であればいくらでも構わない。他の入札者よりも1円でも高い者が落札するのだ。

裁判所はあらかじめ定めた開札期日に入札書が入った封筒を開き、最も高い価格で入札した者が「最高価買受申出人」となるが、この時点で確定ではない。その「最高価買受申出人」が適格かどうかを裁判所が審査して「売却許可決定」を出し、その後一定の「執行抗告期間」(所有者や占有者などからの異議受付期間)を経て、売却許可決定が確定するのである。それから「代金納付期限の通知」が出され、買受人が代金を納付してようやく所有権が移転する。その際の登記申請は裁判所の嘱託で行われるが、買受人が指定する司法書士に依頼することも可能である。

競売物件はリスクがあるからこそ安くなる

裁判所が用意する「三点セット」は物件の内容や条件を把握するための重要な手掛かりだが、これだけでは分からないことも多いのが不動産競売の難しいところである。一般の不動産取引なら宅地建物取引士による重要事項説明の対象となる事実も、三点セットでは明記されていないか、あるいは法的な表現で分かりづらい場合もあるのだ。

たとえば、不動産会社なら「再建築不可」として説明するような接道条件も、競売では「幅1.8メートルの法定外道路に接道する」というような事実関係のみが記載される。それによってどのような結論(建築基準法上の接道義務を満たさず、建築確認を受けることができない)が生じるのかを理解するための基本的な知識が欠かせないのだ。それ以外の法的な条件や権利関係全般についても同様である。

また、「物件明細書」の内容は「執行裁判所の一応の認識」を示したものであり、必ずしも正しいとはかぎらない。「現況調査報告書」についても、現況調査の際に室内立入りができず、現状がどうなっているのか、あるいは増築や間取り変更などの状況が把握されていない場合もある。物件明細書などには「公信力がない」とされるが、簡単にいえば「内容が間違っていても裁判所は責任を負わない」ということだ。競売の申立てから実施までに1年近くかかることもあるため、調査時点からの時間経過で状況が変わっていることもあるだろう。

マンションの場合には管理費や修繕積立金などの滞納額にも注意が欠かせない。これらの滞納金については買受人が管理組合に支払わなければならないのだが、調査時点の金額と落札時点の金額が大きく異なることもある。裁判所による調査後に大規模修繕工事が行われ、費用の臨時徴収があったことで、買受人の負担すべき額が数百万円も増えていることすらあるのだ。

売却許可決定が出た後に、「最高価買受申出人」が保証金を放棄せずに競売手続きを取り消すことができるのは、裁判所側に重大な誤りがあった場合だけだ。また、自殺や殺人事件などがあった事実を裁判所が見落としていた場合でも、その事実に気付いたのが代金を納付した後なら、競売手続きを取り消して代金を返してもらうことはできない。

裁判所による調査内容だけでは十分といえないため、入札しようとする物件については自分で現地調査をすることも欠かせないのだが、室内の内覧はできないケースが大半だ。三点セットとは別に、登記事項証明書は自分で取得して内容を確認することも必要である。

不動産競売ではスムーズな引渡しが受けられるかどうかも大きな問題だ。占有者が存在する場合には明渡しをめぐるトラブルも多い。買受人の費用と責任で引渡しを受けることが原則となるため、その方法や費用、期間などを見極めることも重要になるが、裁判所による「引渡命令」を出してもらえる物件なのかどうかもポイントだろう。「引渡命令」が出ない場合は「明渡訴訟」によらざるを得ない場合もある。落札後に残る権利、消える権利の見極めも必要だ。

これらの状況を判断するためには、一定の知識のもとに自分で理解しなければならないわけだが、競売に精通した不動産会社など専門家のアドバイスを受けることも考えたい。

スムーズな引渡しが保証されているわけではなく、物件に欠陥や故障、腐食などの瑕疵があっても何ら補償されない。そのような「蓋を開けてみなければ分からないリスク」があるからこそ、不動産競売は一般の相場よりも安くなることが原則なのだ。

いくらで入札をするのかが難題

入札をするのであれば、相場観をしっかりと磨いておくことが大切

入札をするのであれば、相場観をしっかりと磨いておくことが大切

しかし、一般の相場よりも本当に安いのかどうかはケースバイケースだ。不動産競売における「売却基準価額」は、原則として市場価格の7割程度に抑えられることとなっている。

ところが、市場価格の判断そのものがあいまいなうえ、評価から競売の実施までにかなりの期間が経過していることもある。とくに不動産価格の下落局面では、必ずしも相場より安いとはかぎらないため、先入観を持たずによく調べてみることも必要だ。

また、自殺や殺人事件があった物件についてはさらに2割から4割程度の減額がされていることも多いが、裁判所側がこれらの事実を把握しているとはかぎらず、通常の評価がされていることもある。全体からみればその可能性は低いとはいえ、一般に流通する物件よりは「事故物件」のリスクが高いだろう。

売却基準価額にいくら上乗せをして入札するのかも難しい。人気の高い物件、リスクの低い物件などには数多くの入札が集まり、競売を専門に取扱う者でもなかなか落札できないことが多い。BIT(不動産競売物件情報サイト)では過去の事例も検索できるが、自己競落などによる高値が付いた物件の判断は難しいのである。

地域によっても状況は大きく異なるだろうが、不動産価格の上昇局面で競売が過熱してくると、一般の相場よりも入札額が高くなってしまうこともある。入札をするのであれば、相場観をしっかりと磨いておくことも大切だ。不動産競売における評価方法が一般の不動産取引市場とは異なる(建物=建物+土地利用権の価額、土地=利用権を除いた価額)ことも知っておきたい。

なお、1998年の民事執行法改正により不動産競売でもローンも使えるようになったが、対応してくれる金融機関は依然として少ない。仮に落札できても、引渡しを受けるまでに相当な期間を要することが多いため、くれぐれも高利で資金調達をすることは避けるべきだ。

「10,000円」でも売れない競売物件がある!?

BIT(不動産競売物件情報サイト)の一画面より引用。売却基準価額が「10,000円」となっているが……

BIT(不動産競売物件情報サイト)の一画面より引用。売却基準価額が「10,000円」となっているが……

期間入札で入札者がいなければ、通常は「特別売却」の期間が設けられ、期間入札の際の買受可能価額以上であれば先着順で受け付けられる。それでも売れなければ、裁判所は売却基準価額を見直し、3ケ月程度の期間をおいたうえで再度期間入札を実施する。

次第に値を下げていくため大半は3回目までに入札されるが、3回目までに売れない場合には、原則として競売手続きは停止される。債権者はいったん取り下げて任意売却など他の手段を試すか、一定期間を経てから再度不動産競売の申立てをすることになるだろう。

だが、地方都市のバス便エリアや山間部の町村などでは、どうしても買い手の見つからない物件が存在する。不動産競売を繰り返しても、任意売却を試みても、その他の手段でも処分できず、費用や手間との兼ね合いで債権者が諦めた状態になるようだ。もともとの所有者は最初に競売を申立てられる何ケ月も前から住宅ローンの返済を停止しているわけだが、結果的に何年も「タダ」で住み続けることができるという。

また、BIT(不動産競売物件情報サイト)をみると、ときどき売却基準価額が「10,000円」という中古マンションが掲載されている。これは管理費や修繕積立金の滞納額が大きく実質的な評価はマイナスとなるものの、制度上の最低価格として「10,000円」の値が付けられたものだ。仮に10,000円で落札したとしても、買受人は数百万円の滞納管理費などを支払わなければならないことになる。そのような競売物件では、とりあえず保証金の「2,000円」を振込んで入札するものの、落札後に滞納額の正確な数字を知って、そのまま保証金を放棄してしまう事例も多いようだ。そのようなことの繰り返しで、いつまでも処分できない事態になりかねないが、マンションの管理組合が積極的に関与して、全額は無理でも滞納管理費などの一部を回収できるような制度づくりも必要だと考えられる。

【このコラムの著者】

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