LIFULL HOME'S PRESSの不動産投資コラム

シリーズ連載: HOME'S PRESS編集部

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

不動産がタダでも売れなくなる日

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HOME’S PRESS記事より引用 (2015年 01月09日 11時10分 掲載記事)
(※引用元の記事内容は、修正される場合があります)

「どんな不動産でも売れる」はもう過去の話

売れないマンションとは?

売れないマンションとは?

筆者が不動産仲介をしていた時代、およそ15年ほど前の話。どうにも条件が悪くなかなか買い手がつかない物件があった。売れないことを愚痴っているのを聞いた先輩の女性営業マンが言った言葉は今でも心に残っている。

「どんな不動産にだっていいところはある。売れない不動産なんてない。」

その言葉通り、その物件は程なく売却できた。その後、いろいろな不動産を見てきたが売却価格が希望を下回ることはあったにしろ、売りに出した不動産は、そのほとんどが売却できた。「売れないマンション」と評された新築マンションも価格改定なりされて売却されていった。売買が成立するかどうかは需要と供給の関係なので、価格を合わせれば売ることができた。

ところがここ最近は、傾向が変わってきた。「売れない物件」が珍しくなくなってきたのだ。需要供給の関係で言えば需要が限りなくゼロに近い物件が出てきたのだ。

以下、幾つか具体的なケースを取り上げてみる。

商業テナントは「タダでもいらない」

「売れない不動産」としてまず思う浮かぶのは商業用途のものだ。

商業テナントの利用者は購入よりも賃貸の方が多い。オーナー視点では賃借人が入って初めて収益用不動産であり、借り手のない商業用途の不動産は税金、修繕費等の出費ばかりの「負債物件」すなわち「売れない不動産」といえる。

自己所有物件や親の持ち家等々がない限り、人は必ずどこかの住居を借りて住まなければならない。住居を借りる費用はいわば生活していくための経費であり必ずかかるコストだ。経費であるがゆえ、同じ条件であればなるべく家賃は安い方がよく、金銭的に余裕がなければ多少「駅から遠い」「狭い」等の悪条件を我慢してでも経費削減のため安い賃料の住宅を選ぶ。極論すれば、住宅の場合は賃料を下げれば借り手は付く、すなわち賃料から逆算し収益用不動産としての価格設定が可能となる。

商業用途の不動産はちがう。賃料をタダにしてもテナントがつかない物件は存在する。「入ってくれたらお金をあげる」といわれてもテナントが入ってくれない物件がある。

テナントにとって店舗の賃料は商品の仕入れや人件費等と同じランニングコストの一部だ。全てのテナントにとってランニングコストは安いに越したことはなく、下げたい要素。しかし、それは儲かる見込みがあっての話であって、いくらコストが下がるとしても売り上げもそれ以上に下がるようであれば、そこのコストは下げない。売れない商品は仕入れないし、出来の悪いバイトは雇わない。いくら「賃料無料」という不動産があったとしても、客がこないような立地条件であれば借りることはない。

ここが住宅用不動産と商業テナントとの大きな違いだ。住宅は経費なので安いに越したことはない。多少条件が悪かろうが住んでいる人が我慢すれば済む話。商業テナントはそうはいかない。商業は投資、儲からない立地と判断されればタダでも借りない。

自宅や最寄駅の周辺にも「貸しテナント」の看板が何年もかかっている物件があるだろう。それらの物件はオーナーの希望賃料が高いから借り手がつかない場合もあるが、そもそもその場所で商売が成り立たないから借り手がいないという物件もある。郊外の住宅地で、特に深い考えもなく「1階は店舗、2階は事務所/住宅」といった用途で建てられた物件ではよく見られる光景だ。

「タダでも住めない」分譲マンション

「タダでも住めない」分譲マンションのからくりとは?

「タダでも住めない」分譲マンションのからくりとは?

場所は関西屈指の人気住宅地である神戸市東灘区。JRの快速停車駅である「住吉」駅から徒歩10分未満の立地で住吉川に面するとあるマンション。広大な敷地と敷地内庭園、コンシェルジュ、24時間有人管理etc。バブル時代に建てられて超高級マンションだ。仮にAマンションとでもしておこう。

そのAマンション、現在の中古価格は驚くほど安い。80m2台で1,000万円台、100m2超でも2,000万円台の売物件がある。その価格でもすぐに買い手は見つからない。別に物件の管理状態が悪いわけでも周辺環境が悪くなったわけでもない。今もその外観は威容を呈し、住吉川を見下ろすそのファサードは威圧感すら感じる。

どれくらい安いか。情報公開されているものでいちばん安い住戸は1,180万円(85.48m2、13.8万円/m2)。同じ最寄駅で築40年超のバス便の団地で580万円(54.25m2、10.7万円/m2)で売り出されているのと比較するとその安さがよくわかる。かたや「築20年未満/バブル仕様/徒歩便」、かたや「築40年超/団地/バス便」。なぜこれほど安いのであろうか?

理由は、ランニングコストが高いから。上記の1,180万円の物件、管理費や修繕積立金、敷地内施設管理費・積立金などを合計すると月額10万円以上となる。持家といえども「家賃並み」の支払いが住宅ローンとは別に必要になる。予算が1,000万円程度(住宅ローンで月額5万円程度)の人であれば、物件価格は支払い可能でも管理費等が支払えない。

とはいえAマンションは好立地の高級物件。現時点では、その高いランニングコストも「賃料相当」よりは断然安い。賃貸物件を借りるよりも割安だという理由で買う人もいる。問題が深刻なのは、交通便の良くない築年数の古い小規模マンションだ。修繕に関する費用は立地の良し悪しに関係ないため、交通便の悪いマンションの方が売買金額が安くなる分、住宅ローンを含めた月額負担における管理費/修繕積立金割合が高くなる。また、修繕に関する費用は小規模マンションの方が一戸当りのコストが高くなるため、専有面積が同程度の住戸であっても小規模マンションの方が管理費/修繕積立金割合が高くなる。現状でも、60〜70m2程度の3LDKで管理費/修繕積立金合わせてランニングコストが月額5万円以上する物件も見受けられる。マンション毎の管理状況により差があるので築古/戸数小物件でも維持費が安く済む物件もあるであろうが、大きな傾向としては今後「築古/交通便悪/戸数小/面積大」となるマンションは、どんどん売れにくくなる方向にある。

「お金なんていらないから引き取って欲しい」賃貸にも出せない不動産

「築古/交通便悪/戸数小/面積大」となるマンションであっても、賃貸需要があれば所有者にとってまだ打つ手はある。賃貸に出せばランニングコスト程度はまかなえる。本当に問題なのは賃貸需要も見込めない不動産だ。

例えば、バブル期に開発された都心まで2時間以上かかるようなバス便ニュータウン。「土地値が下がったことにより若年層が買いやすくなった」「隣地を買い増して広々と済む人が増えている」といった明るい話もあるが、多くのエリアでは空家が続出して売物件に買い手がつかない状況が続いている。開発当時には営業していた商業施設や開発業者によるバスサービスがなくなり孤立してしまった街もある。賃貸に出そうにも借り手が思い浮かばない。そのようなエリアの多くは、住民の高齢化が進んでおりさらに売物件/空家が増えるにちがいない。

築年数が古く設備が劣化/陳腐化した狭小再建築不可物件。これが風情豊かな町家であったり、交通至便な都心であれば話は別であるが、そうでない場合はそうそう買い手がつかない。賃貸に出すためにはリフォーム費用が必要となるが、数百万円もかかるような物件であれば、初期投資を回収するのに数年かかってしまい割に合わない。賃料月額5万円しかとれない物件にリフォーム費用を300万円出す気がするだろうか? そのままでは住めない、(リフォーム)投資をしても収益が合わない、持っているだけでも固定資産税がかかり損が出る。

地方では「お金なんていらないから引き取って欲しい」という不動産はさらに多くなる。筆者がそのような事案の相談を受けたこともあるし、行政に寄付しようとしたが断られたという事案も知っている。今後は都心エリアでも数が増えてくるに違いない。

「割安だから買う」ではなく「割高でも良い条件の物件を買う」

割高でも良い条件の物件を買った方がいいようだ

割高でも良い条件の物件を買った方がいいようだ

以上「売れない不動産」として、立地の悪い商業テナント、ランニングコストのかさむマンション、賃貸需要のない住宅の3パターンをみた。以前であれば価格や賃料の調整で買い手/借り手がつき、資産としての処分活用ができた不動産でも、価格下落、供給過多、人口減少等の要因が重なり合い、簡単に処分活用ができない物件が増えている。大きく価格が下落したため売却価格で抵当権が抹消できない不動産を「不良資産」と呼ぶことがあるが、今では、そもそも処分すらままならない本当の「不良資産」が増えているのだ。

そんなトレンドの中、どのような物件を買えば良いのか。

一つ言えるのは「安いから」というだけでは買わないこと。割安物件には必ず、その理由がある。相続や買替えで処分を急いでいるような場合であれば検討しても構わないが、それ以外の割安物件はなぜ安いのかをよく考える。同じマンション内で極端に安い住戸があるものであれば心理的瑕疵物件かもしれない。同じ町内の極端に安い一戸建ては相隣関係でもめているかもしれない、道路条件が悪いのかもしれない。「少し我慢して通勤すれば大丈夫」なエリアは、多くの人には我慢できない通勤条件なのかもしれない。あなたは「安いから」で買ったとしても、次に処分する時に「安いから」では売れないかもしれない。

不動産が余る時代とはいえ、自身が不動産購入を検討しているそのエリア全体が無人集落になるわけではない。都市圏であれば少子高齢化や過疎化が進んだとしても需要がゼロになるわけではない。需要が半減したとしてもまだ半分の不動産は売れる、もしくは貸せる。その時その半分に、もしくは三分の一に残っているような物件であるかどうか。これからの時代に不動産を購入するのであれば、そのような視点で不動産選びをしてほしい。

【このコラムの著者】

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