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東京都が宿泊施設向けに容積率緩和基準を改定、「最大500%上乗せ」の背景とは?

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HOME’S PRESS記事より引用 (2016年 09月20日 11時03分 掲載記事)
(※引用元の記事内容は、修正される場合があります)

東京都が先行して容積率の緩和基準を改定、今後は他の自治体でも改定が進む

改定によって、ホテルや旅館など宿泊施設の容積率を最大で500%まで上乗せすることが可能となった

改定によって、ホテルや旅館など宿泊施設の容積率を最大で500%まで上乗せすることが可能となった

東京都は2016年6月24日に「宿泊施設の整備促進に向けた都市開発諸制度活用方針等の改定」を公表し、即日施行された。これは2003年6月に策定された「新しい都市づくりのための都市開発諸制度活用方針」などを見直したもので、同方針のほかに「東京都特定街区運用基準」「東京都高度利用地区指定方針及び指定基準」「東京都再開発等促進区を定める地区計画運用基準」が同時に改定されている。

「都市開発諸制度」とは、公開空地の確保などを伴う建築計画に対して容積率などを緩和する制度の総称だが、今回の改定によって、ホテルや旅館など宿泊施設の容積率を最大で500%まで上乗せすることが可能となった。

東京都の改定が発表される10日ほど前の6月13日に、国土交通省は「宿泊施設の整備に着目した容積率緩和制度の創設に関する通知」を各都道府県知事および各指定都市の長あてに発出しており、東京都の改定はこの通知を受けて行われたものだ。ただし、その方針は2016年3月30日に政府が策定した「明日の日本を支える観光ビジョン」に盛り込まれていたため、改定準備は国土交通省の通知よりも先に進められていたと考えられる。

ちなみに、2016年6月2日に閣議決定された「日本再興戦略2016」および「経済財政運営と改革の基本方針2016」でも、ホテルや旅館など宿泊施設の整備促進を目的とした容積率緩和制度の創設、活用などが取上げられていた。

基準の見直しはこれから全国の自治体で進められていくだろうが、まずは今回の東京都における「ホテル・旅館に対する容積率緩和」の主なポイントや、改定の背景などについて考えてみることにしよう。

東京都では「最大500%上乗せ」のタイプを加えてホテルの建設促進を図る

国土交通省が「通知」の中で示していた例(基本的な考え方)では、「指定容積率の1.5倍以下、かつ300%を上限」に容積率を緩和することとしているが、東京都ではさらに踏み込んだ内容で基準を策定した。「都心等拠点地区」は300%、「一般拠点地区」は250%、「複合市街地ゾーン」は200%の緩和幅(宿泊施設の床面積に相当する容積率に限る)を定める「タイプ1」と、さらに上乗せが可能となる「タイプ2」だ。

「タイプ2」では、ホテルなど「宿泊施設による緩和」は300%が限度となるものの、公開空地を設けたり緑化をしたり、あるいは子育て支援施設や福祉施設などの設置による優遇措置を組み合わせたりすることで100%〜200%が上乗せされ、最大で500%の容積率緩和が可能となる。

なお、制度の対象となるのは東京都の「都市開発諸制度活用方針」で示された都心等拠点地区、一般拠点地区、複合市街地ゾーンなどであり、東京都内全域で緩和されるわけではない。また、客室の床面積がシングルルームで15平方メートル以上、ツインルームで22平方メートル以上の施設が対象であり、それに満たない場合は対象外となる。さらにラブホテルや簡易宿所営業、下宿営業のための施設は適用除外となっている。

東京都の方針を受け、渋谷区では独自に制定した条例を改正し、2016年10月1日に施行する予定となっている。これは渋谷区内での新規ラブホテル建設を抑制するため、2006年から運用されていた規制だが、その厳しい内容がビジネスホテルなどの建設も妨げていたという。一定規模以上のホテルについて規制を緩和するものだが、ラブホテルの建設は規制しながら他のホテルは建てやすくなるようだ。

東京都「宿泊施設の整備促進に向けた都市開発諸制度活用方針等の改定について」公表資料より引用

東京都「宿泊施設の整備促進に向けた都市開発諸制度活用方針等の改定について」公表資料より引用

2015年における全国の宿泊者数は初めて延べ5億人を突破

ホテルなど宿泊施設の容積率を緩和して整備を急ぐ背景には、改めていうまでもなく外国人旅行者(インバウンド)数の増加とそれに伴うホテルなど宿泊施設の不足がある。JNTO(日本政府観光局)のまとめによれば、2015年の訪日外国人旅行者数は前年比47.1%増の1,973万7千人に達した。東日本大震災の影響を受けた2011年は減少したものの、その後は急激な増加が続いているのだ。

従来は「2020年に2,000万人」の目標が掲げられていたものの、早くもそれを達成する勢いとなり、2016年3月30日策定の「明日の日本を支える観光ビジョン」では、2020年に4,000万人、2030年に6,000万人(従来目標3,000万人)の訪日外国人旅行者数を目指すものとされた。この新たな目標については実現を疑問視する声も多いようであり、また訪日客のうちかなりの割合を占める中国、台湾の経済動向に左右される面も否めない。

だが、いずれにしても2020年の東京五輪に向けた受入体制づくりは欠かせないだろう。五輪後にも訪日客の増加を継続させることができるかどうかは、今後の政策にかかっている。

観光庁がまとめた2015年の観光統計によれば、約1,974万人の外国人旅行者数に対して、外国人宿泊者数は延べ約6,561万人である。その一方で、日本人宿泊者数は延べ約4億3,846万人にのぼり、合計は調査開始後初めて「5億人泊」を超えた。延べ宿泊者全体に占める外国人宿泊者の割合は13.0%だ。

また、東京都産業労働局観光部がまとめた2015年の「訪都外国人旅行者数」は1,189万4千人、「訪都国内旅行者数」は5億1,669万5千人にのぼり、いずれも過去最多となった。このうち「宿泊客」は外国人(外国在住者)が901万1千人、日本在住者が3,433万1千人となっており、日本人は10人に1人も宿泊していないことになる。大半は日帰り客とみられるが、近隣の他県に宿泊した人や、中には東京都内のホテルが予約できずに宿泊を諦めた人もいるだろう。

訪日・訪都外国人旅行者数および訪都国内旅行者数の推移:東京都産業労働局観光部の資料をもとに作成

訪日・訪都外国人旅行者数および訪都国内旅行者数の推移:東京都産業労働局観光部の資料をもとに作成

宿泊者数の増加に比べて客室数はそれほど増えていない

2015年における東京都内の延べ宿泊者数(外国在住者+日本在住者)は、観光庁による統計で約5,909万人、東京都の統計で約4,334万人と開きはあるが、統計手法や調査対象の違いによる部分も大きいだろう。いずれにしても旅行者数だけでなく宿泊者数も急激に増加しており、東京都における客室の平均稼働率は宿泊施設全体で82.6%(観光庁まとめ)となっている。予約が取りづらくなるとされる目安が80%だ。

ちなみに施設タイプ別でみると、ビジネスホテルで客室稼働率が80%を超えているのは東京、京都、大阪、兵庫の4都府県、シティホテルで80%を超えているのは千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡、沖縄の9都府県である。主要都市では、なかなかホテルの予約が取れない状況も続いているだろう。なお、旅館の客室稼働率は最も高い東京都でも59.0%だった。

それに対してホテルや旅館の施設数、客室数はどうなっているだろうか。厚生労働省が毎年度まとめている「衛生行政報告例」をもとに調べてみると、2005年度から2014年度までの10年間で、東京都のホテル客室数は14.5%増、旅館客室数は38.1%増となっている。その一方で、ホテル施設数は2.6%減、旅館施設数は9.9%減だ。平均すればホテル・旅館の大型化が進んでいるようだが、宿泊者数の増加に対して客室数の増加はわずかな印象である。東京都だけの数字は明らかでないが、全国における同時期の延べ宿泊者数の増加は6割を超えている(観光庁調べ)。

東京都における「ホテル・旅館」施設数・客室数の推移:厚生労働省「衛生行政報告例」年度報をもとに作成

東京都における「ホテル・旅館」施設数・客室数の推移:厚生労働省「衛生行政報告例」年度報をもとに作成

賃貸マンションや社宅のリノベーションによる、ホテルへの用途変更も進む!?

容積率が大幅に緩和されるからといって、大型のホテルが急に増えるわけではない。計画から着工、竣工まで何年もかかるような新規ホテル建設では、2020年の東京五輪には間に合わない場合も多い。それよりも主に想定されているのは比較的小規模なホテル・旅館の新設や増改築、あるいは既存建物の用途変更による宿泊施設としての活用だろう。

国土交通省による「通知」では、少し奇異に感じられるほど「比較的小規模な宿泊施設も対象とするという本制度の趣旨を踏まえつつ」という文言が繰り返し何度も記載されている。大型の宿泊施設を「どん」と造るよりも、小さなものでも早急に「どんどん」と積み上げていって欲しいという印象だ。

客室数の確保に関しては「民泊」の活用も推し進められようとしているが、現状では違反状態のものも多く、またその実態も不透明な面が強い。宿泊施設の安定的な供給という側面で考えたとき、「民泊」では将来に不安が残ることも否めないだろう。だが、急増する宿泊需要に対しては、ホテル・旅館と民泊のどちらも両輪として増やさなければならないのであり、ホテルなどに対する容積率の緩和制度が民泊の整備を否定するものでもない。

既存建物の用途変更では、賃貸マンションなどを1棟丸ごとホテルに改装することも有効になりそうである。マンションなどの「共同住宅」では、共用廊下や階段、エントランスホール、エレベーターホール(共用のもの)などが、それらの開放の有無を問わずに容積率算定上の延べ床面積から除外する特例が設けられている。ところが、これをホテルに用途変更すると容積率に含む扱いとなるため、従来の規定では容積率の制限を超えることになり、実質的に用途変更が認められないケースも多かったのだ。古くなったマンションや社宅のリノベーションによって、ホテルに生まれ変わる事例も数多く出てくるだろう。

容積率の300%(最大500%)の緩和はそれなりに大きなものであり、圧迫感のある高い建物が増えることを心配する人がいるかもしれない。だが、マンションではすでにかなりの緩和措置がとられていること、対象地区は限られること、それらの地区では従来から他の都市開発制度などによって200%〜500%の容積率割増が行われていたことなどを考えれば、今回の宿泊施設向けの緩和が街並み形成に及ぼす影響は小さいだろう。それよりも訪日外国人が現在の2倍、3倍に増えたときの街の変化のほうが大きいはずだ。

古くなったマンションや社宅のリノベーションによって、ホテルに生まれ変わる事例も今後は出てくるだろう

古くなったマンションや社宅のリノベーションによって、ホテルに生まれ変わる事例も今後は出てくるだろう

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