LIFULL HOME'S PRESSの不動産投資コラム

シリーズ連載: HOME'S PRESS編集部

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

【大家さんの本音炸裂トーク①】需給バランス変化でがんばる大家増加中

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HOME’S PRESS記事より引用 (2014年 11月28日 11時32分 掲載記事)
(※引用元の記事内容は、修正される場合があります)

知られざる大家さんの世界を覗いてみる意義

行動する大家さんの会では100人規模で集まるセミナー、勉強会を年に2~3回、それ以外の小規模な勉強会を不定期に開催、首都圏を中心に800人ほどが登録しているという

行動する大家さんの会では100人規模で集まるセミナー、勉強会を年に2~3回、それ以外の小規模な勉強会を不定期に開催、首都圏を中心に800人ほどが登録しているという

賃貸市場は家を借りたい人、仲介をする人、そして家を貸す人から成り立っているはずだが、これまで家を貸す人、つまり大家さんがどのような人たちなのか、何をしているのかなどについては専門誌・紙以外では語られることはなかった。

しかし、市場の一翼を担う人たちの存在を無視して良い物件が増えることはないし、借りやすい状況が到来するはずもない。この連載ではこれまで知られてこなかった大家さん像、その仕事内容などの紹介を通じて、入居者、大家さん、そして仲介する人が三方良しになれる道を考えていきたい。

第一回目ではこの30年間の需給バランスの変化とその中での大家さんの変化をご紹介しよう。ご協力いただくのは、2011年に発足した行動する大家さんの会(A0A)の皆さん。今回は賃貸を巡る環境の変化をテーマにするということで、大家歴36年という菅完治さんにもお出で頂いた。まずは当時の賃貸事情をお話しいただこう。

「私が文京区内に初めての賃貸住宅を建てたのは36年前、29歳の時です。自宅を3階建にし、1階を駐車場に、2階に2DKを2戸作り、それを賃貸にしたのが始まりで、当時は何も努力しなくても入居者は決まったし、更新の度に賃料も1000円、2000円と上がるのが普通。その後、20年前に建て直しましたが、それから5年間は賃料は上がってきた。家賃交渉が入るようになったのはウィンドウズ98が出始めた頃、つまり、入居者間で情報が共有され始めた頃からじゃなかったかと思っています」。

たかだか30年前、日本は住宅不足の時代だったのである。現在、土地活用といえばハウスメーカーでアパートを建てることをイメージする人が多いと思うが、ハウスメーカーが集合住宅を作り出したのは昭和60年前後から。その当時は建てている最中から入居希望者が列をなしたそうで、賃貸住宅を供給する側には黄金時代だったのだ。

サラリーマン大家登場、原状回復トラブルなど、変化はバブル時代に起こった

ベテラン大家の菅完治さんと、始めて11年目という佐藤明子さん。市場の動向の変化がお二人の話からよく分かる

ベテラン大家の菅完治さんと、始めて11年目という佐藤明子さん。市場の動向の変化がお二人の話からよく分かる

変化が起きたのはバブル期。それまで大家さん、賃貸経営といえば土地を持っている人がそこに賃貸住宅を建てるケースが主流だったのだが、そこに節税目的のワンルーム投資が登場、サラリーマン大家さんが急増したのである。

「この時代には土地を持っている大家さんに『全部、ウチで面倒みますから建てましょう』と言ってきた会社も多く、それが不動産業界内での仲介と管理の分離につながったようです。それ以前は地主がアパートを建て、敷地内に住んで管理する例が大半で、管理だけをやる会社はほとんどなかった。でも、数が増えると大家さんだけでは面倒が見きれないし、バブル期に登場したサラリーマン大家も自分で管理するのは無理。それで管理だけが商売として成り立つようになったのでしょう」。

この時代に賃貸の“原状回復”の概念も変化した。この時代以前の原状回復は簡単な清掃程度で、現在のほとんど新築時の状態にまで復するほどのものではなかった。学生時代にそうしたアルバイトを経験、現在は大家さんになっている佐藤明子さんに聞いてみると、

「学生時代、不動産会社でアルバイトしていた時には退去した部屋の掃除も仕事でした。その当時は素人の学生が掃除する程度で済んでいたのに、その後、自分が社会人になって部屋を借りたら、退去時には畳を換え、壁紙を張り替えるからなどと言われ、預けた敷金2カ月分が返還されず。非常に短い期間で原状回復の内容が変わったように思います」。

ローンを組んで物件を購入したサラリーマン大家さんにとって原状回復の費用は負担が重い。そこで入居者負担とし、かつ入居者のニーズを先取りする形で新築同様にするという現在の形が生まれてきたのだろう。

その後、敷金が返還されない、さらに敷金以上の原状回復費用を請求されるなどが社会問題化する。これに対し、国土交通省が平成10年に「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を、その後東京都が平成16年に「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」を出し、現在、敷金トラブルは当時に比べ、かなり減少している。

バブル期以降に家賃下落、敷金減少が始まる

現在の敷金、礼金、更新料の状況は地域、物件、大家さんの考え方などで大きく異なる。敷金については地域差が大きい

現在の敷金、礼金、更新料の状況は地域、物件、大家さんの考え方などで大きく異なる。敷金については地域差が大きい

バブル崩壊後に起こったのが家賃の下落、敷金の減少である。分譲価格と異なり、賃料はそれほど一気に下がることはない。というのは一度入居した人の賃料は基本、契約更新時までそのままであることが多いためだ。とはいえ、その後、地域によっては現在に至るまで賃料は下がり続けている。

もうひとつ、下がっているのは敷金・礼金。10数年前の首都圏ではそれぞれ家賃の2カ月分が一般的だったが、その後はじりじりと下がる傾向にある。7年前、リーマンショック後の、経済的には暗い時代に競売で物件を購入し、大家さんになった渡辺よしゆきさんによると「7年前の時点で埼玉県内の駅から遠い地区では、礼金・敷金無しが当然だった」とのこと。ただ、どこでも無しといういうわけではなく、「横浜では礼金・敷金は無しが多いけれど、リフォーム費としてワンルームで家賃1カ月弱というケースが多い」(廣田裕司さん)、「練馬区の大泉学園では礼金・敷金無しは1割程度)(下條雅也さん)などと地域、物件による差も出るようになってきている。

敷金、礼金はともに慣習的に大家さんに渡されてきたものとされ、そのうち、礼金は貸してもらったことへの謝金であるため、需給バランスが変わった以上、不要となるのは当然だろう。だが、敷金は大家さんに預けるものと解され、家賃滞納や室内を破損・汚損した場合の原状回復に充てられるものとして使われてきた。敷金を預かることができない状況の一方で原状回復には以前よりも費用がかかるようになっており、大家さんとしては原資となる敷金がない中、出費だけが必要という状況。慣習に則った経営では立ちいかない時代に直面しているわけだ。また、最近では更新時に家賃が上がることはなく、更新料自体がないというケースもある。

物件情報共有によって広告にお金がかかる状況に

インターネット利用で物件探しは便利になったが、その一方で変化が生まれることにも

インターネット利用で物件探しは便利になったが、その一方で変化が生まれることにも

原状回復費用同様、特にここ数年で大家さんにとって大きく出費が増えたのが広告費である。本来、不動産会社は物件の仲介に当たって家賃の1カ月分までしか手数料はもらえないことになっている。菅さんによると「30年前には入居者、大家で家賃半月分を不動産会社に払っていた」そうだが、現在はそれでは足りない。

というのは1990年に登場したレインズ(Real Estate Information Network System 不動産流通標準情報システム)の影響で、ひとつの物件で入居者を決めるまでに複数の不動産会社が関わることが増えたため。一般には元付、客付などという言い方をするが、元付は大家さんから仲介を依頼されて情報をコンピュータシステムにアップする不動産会社で、客付はその情報を入居希望者に紹介して入居を決める不動産会社。2社が関わるようになったにも関わらず、仲介手数料の上限は1カ月である。当然、どこか、違う名目でお金を取ろうと考える会社が出てくる。その名目が広告費で、払うのは大家さんである。

また、入居者募集のためにポータルサイトを利用すると、それにもお金がかかることがあるし、このところ、仲介手数料ゼロを売りにする不動産会社も増えた。入居者が仲介手数料を払わないとなると、その分は大家さんが払うことになる。大家さんにとってのここ30年間は収入減、支出増が続く、あまりうれしくない時代だったわけで、しかも、今後、賃貸市場が好転する見込みもない。では、現役大家さんたちはこの状況をどう考えているのだろう。

厳しいから面白い。現役大家さんたちはパワフルだった

参加した大家さん全員に聞いてみたが、いずれの意見も前向き。厳しいから面白い、他との差別化ができるというのである。

「昔に比べると厳しいのは事実かもしれない。でも、住宅不足でどんな物件でも借りてもらえた時代のほうが異常で、今、大家業がサービス業であることを認識、経営に真剣になっているのが普通の状況。ようやく、大家業が他の業界と同じスタートラインに立ったように思いますね」とは自身も大家さんであり、大家さん専門の税理士・司法書士事務所を経営する渡邊浩滋さん。「経営まで管理会社任せにしているなんておかしいですよ」。

「80年代、90年代のサラリーマン大家さんはラクだったかもしれないが、これからはラクして儲かる時代ではない。人に会う、気持ちよく住んでもらうように工夫する、そんなことが好きで、できる人でないと大家業は務まらないね」(上田肇さん)。

実際、ここ2~3年で大家さんは変わってきている。大家さんには家業として管理会社任せで漫然と経営をしている人、完全に投資と割り切って収益だけを考えている人、入居者に長く住んでもらうことで収益を上げようと考える人の大きく3種類があるが、最後のタイプが増えてきているのである。

一部にはマスコミに頻出するスーパー大家さんとも言うべき人もいるし、そこまで目立つことはないまでも毎日清掃や修繕などで地道に入居者に住みやすい環境作りに励む大家さんも増えている。今回参加してくださった大家さんは全員、入居者には携帯番号を教え、何かあったらすぐにかけてねという人たちばかり。もちろん、そこまでできる大家さんはまだまだ多くはないものの、気持ちよく住みたいなら、大家さんがどういう人か、どんな考えで経営しているかを意識してみることは役に立つはずだ。

次回は巷でよく聞く「大家さんは楽して儲かる」が本当かどうかを聞く。どうなんだろう?

行動する大家さんの会 http://www.o83nokai.org/

行動する大家さんの会の、左から渡邊浩滋さん、下條雅也さん、上田肇さん、菅完治さん、佐藤明子さん、廣田裕司さん。座談会にはもうひとり、渡邊よしゆきさんも参加

行動する大家さんの会の、左から渡邊浩滋さん、下條雅也さん、上田肇さん、菅完治さん、佐藤明子さん、廣田裕司さん。座談会にはもうひとり、渡邊よしゆきさんも参加

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