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これから10年間の住宅政策の指針、「住生活基本計画(全国計画)」のポイント

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HOME’S PRESS記事より引用 (2016年 04月19日 11時05分 掲載記事)
(※引用元の記事内容は、修正される場合があります)

新たな「住生活基本計画(全国計画)」が閣議決定された

2016年度から2025年度までの10年間における住宅政策の指針となる「住生活基本計画(全国計画)」が3月18日に閣議決定された。これは「住生活基本法」に基づいて策定されるものであり、前回の計画(2011年3月15日閣議決定)から5年ぶりに見直されたものだ。新しい「住生活基本計画(全国計画)」では、次の8つの目標が掲げられた。

【居住者からの視点】
 目標1 結婚・出産を希望する若年世帯・子育て世帯が安心して暮らせる住生活の実現
 目標2 高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現
 目標3 住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保
【住宅ストックからの視点】
 目標4 住宅すごろくを超える新たな住宅循環システムの構築
 目標5 建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新
 目標6 急増する空き家の活用・除却の推進
【産業・地域からの視点】
 目標7 強い経済の実現に貢献する住生活産業の成長
 目標8 住宅地の魅力の維持・向上

少子高齢化や人口減少などを背景に、日本の住宅政策や住宅市場のあり方は大きな転換を迫られており、その構造改革も急務とされる。だが、従前の計画に基づく政策が順調に進捗したとは言い難い。新たな「住生活基本計画(全国計画)」が、実効性を伴う住宅政策の指針として機能することを期待したいものだ。

ここでは、計画に掲げられた施策方針や数値目標のなかから主なものをみていくことにしよう。

日本は世界に例のない高齢社会へ

すでに減少局面となっている国内の総人口だが、それは主に出生率の低下に伴う若年層の減少であり、高齢者人口は今後も増加が続く。高齢者の割合は2013年時点で25%を超え、すでに「世界に例のない高齢社会」へ突入しているとされるが、その割合がさらに高まっていき、2025年には30%を超えると見込まれる。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2012年1月推計:出生中位・死亡中位)」によれば、後期高齢者(75歳以上)の人口は2025年に全国で2,179万人となる。2015年比では32%の増加だ。首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)ではさらに増加スピードが速く、2015年から2025年までの増加幅が44%になると推計されている。ちなみに、全国の後期高齢者人口がピークを迎えると予測されるのは、2053年の2,408万人だ。

高齢者人口が増加しても、それと同時に若年人口、生産年齢人口が増えていけば大きな問題はないだろう。だが、現実に出生率を高めていくためにはさまざまな困難が伴うとともに、住宅政策の問題だけにとどまらない。そのため、住生活基本計画の目標に掲げられた「結婚・出産を希望する若年世帯・子育て世帯が安心して暮らせる住生活の実現」は、人口対策のための基盤づくりの1つして考えるべきであり、これだけに効果を求めることはできないだろう。

「住生活基本計画(全国計画)」では、さまざまな支援を通じて若年世帯・子育て世帯が「必要とする質や広さの住宅」に居住できるようにすること、親などとの三世代同居や近居を促進すること、地域ぐるみで子どもを育む環境を整備することなどを基本的な施策とした。しかし、「子育て世帯における誘導居住面積水準達成率」の成果指標は2025年時点で全国、大都市圏とも50%である。2013年時点の42%(全国)、37%(大都市圏)からはそれぞれ改善を見込むものの、子育ての積極的な動機付けに資するためにはまだ足りない水準だとみるべきかもしれない。

高齢者の居住に対しては、安全性の向上などに配慮した「新たな高齢者向け住宅のガイドライン」の策定、サービス付き高齢者向け住宅等の供給促進、「生涯活躍のまち」の形成、高齢者世帯や子育て世帯の支援をする地域拠点の形成、リバースモーゲージの普及などが掲げられた。また、「住宅確保要配慮者」に対する住宅セーフティネット機能の強化なども基本施策に盛り込まれている。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(出生中位・死亡中位)」をもとに作成

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(出生中位・死亡中位)」をもとに作成

既存住宅流通・リフォームの市場規模「20兆円」は2025年の目標に

「新たな住宅循環システムの構築」などについては、数値目標を中心にみていくことにしよう。

まず、既存住宅流通の市場規模については2013年の4兆円を2025年に8兆円とすること、リフォームの市場規模については2013年の7兆円を2025年に12兆円とすることが掲げられた。両者を合わせた市場規模は20兆円だが、これをみて首をかしげる人が多いかもしれない。「2012年日本再生戦略」や「日本再興戦略 改訂2015」などにおいて「2020年までに実現すべき成果目標」としていた既存住宅流通・リフォームの市場規模が20兆円(2010年比で倍増)である。

ところが、2008年時点で約6.06兆円だった住宅リフォームの市場規模は2013年時点で約7.49兆円と伸び悩み、既存住宅取引件数にいたっては2008年時点が約16.7万戸、2013年時点が約16.9万戸とほとんど変化がみられない。「既存住宅活用型市場」への転換が遅れ、従来計画の軌道修正(5年の後ろ倒し)をしたものだが、数値(20兆円)そのものの見直しは見送られた。

だが、建物状況調査(インスペクション)の活用推進をはじめとした既存住宅市場の環境整備、リフォームによる住宅の安全性や質の向上、住宅ストックビジネスの多様化などは着実に進みつつある。今後の10年間で既存住宅流通・リフォーム市場の活性化に大きな進展がみられることを期待したい。

それ以外に2025年時点の数値目標(成果指標)として、既存住宅流通量に占める既存住宅売買瑕疵保険に加入した住宅の割合を20%(2014年:5%)にすること、新築住宅における認定長期優良住宅の割合を20%(2014年:11.3%)にすること、耐震性のない住宅ストックをおおむね解消(2013年:18%)すること、省エネ基準を満たす住宅ストックの割合を20%(2013年:6%)にすることなどが掲げられている。

空き家数の数値目標を初めて設定

総務省が実施した「住宅・土地統計調査」では2013年時点の空き家数が約820万戸とされたが、このうち賃貸用または売却用のものや二次的住宅を除いた「その他の空き家」がとくに問題視されている。2003年時点で212万戸だった「その他の空き家」が、10年間で1.5倍の318万戸まで増加しているのだ。

「その他の空き家」の大半は放置されたり何ら使い道がなかったりするものだが、このまま何ら対策をとらなければ2023年には500万戸まで膨れ上がるとする民間の予測もある。そこで「住生活基本計画(全国計画)」に初めて、空き家数に関する数値目標が設定された。2025年時点において「その他の空き家」を400万戸程度におさえようとするものだ。ただし、現状よりも空き家数を減らす目標ではなく、増加のスピードダウンを図ろうとする目標であることに注意しておきたい。

空き家数の増加を抑制するための基本的な施策として、生活環境に悪影響を及ぼすものについては「計画的な解体・除去の促進」、それ以外のものについては「新たな住宅循環システムの構築」「空き家を活用した地方移住、二地域居住等の促進」「古民家等の再生・他用途活用」「他用途転換の促進」などが掲げられている。

だが、空き家対策法などによる解体が大幅に増えることは考えられず、所有者個人による老朽空き家の解体・除去がどこまで増えるかも未知数だ。仮に解体が進んだとしても、それが低・未利用地の増加につながることもある。空き家の流通を促進することで「その他の空き家」は減っても、代わりに「賃貸用または売却用」の空き家が急増することもあるだろう。物件のダブつきによって流通価格が大きく落ち込むことも考えられる。さらに、2019年をピークに国内における世帯数の減少も本格的に始まる見込みだ。

賃貸用または売却用以外の「その他の空き家」の増加を抑制することだけでは根本的な解決に結びつかない。5年後に行われる予定の「住生活基本計画」見直しでは、さらなる議論も期待したいものである。

総務省「住宅・土地統計調査」をもとに作成

総務省「住宅・土地統計調査」をもとに作成

住宅地における自然災害対策も急務

最後に目標の中の1つである「住宅地の魅力の維持・向上」についてみておきたい。
ここでは「居住環境やコミュニティをより豊かなものにすること」「自然災害等に対する防災・減災対策を推進し、居住者の安全性の確保・向上を促進すること」などが掲げられた。

「どの世代も安心して暮らすことのできる居住環境・住宅地の魅力の推進・向上」にあたっては、スマートウェルネスシティやコンパクトシティなどのまちづくりとの連携も指摘されているが、とくにこれから各自治体で策定される予定の「立地適正化計画」に留意が必要だろう。都市機能誘導区域とそれ以外の区域における住宅政策をよく見極めなければならない。

住宅地に関する成果指標としては、2015年時点で約4,450ヘクタールにのぼる「地震時等に著しく危険な密集市街地」を2025年におおむね解消すること、最大クラスの洪水・内水・津波・高潮に対応したハザードマップを作成・公表したうえで一定の住民訓練などを実施した市区町村の割合を2025年に100%とすること、市街地等の幹線道路の無電柱化率(2014年:16%)を2025年に20%とすることなどが盛り込まれている。

また、日常生活だけでなく災害対応においてもコミュニティの役割は大きい。地域コミュニティと利便性の向上を促進すること、豊かなコミュニティの維持・向上を目指すこと、マンションのコミュニティ活動が積極的に行われるよう推進することなども掲げられた。

今後の具体的施策にどう反映されるのかしっかりと見守っていきたい。
これから10年間の住宅政策の指針がどのように具体策として反映されるのか注目していきたい

これから10年間の住宅政策の指針がどのように具体策として反映されるのか注目していきたい

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