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国土交通省が対策に乗り出した!? 賃貸住宅における「サブリース問題」の背景

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HOME’S PRESS記事より引用 (2016年 10月24日 11時05分 掲載記事)
(※引用元の記事内容は、修正される場合があります)

改正された「賃貸住宅管理業者登録制度」が2016年9月1日に施行

2016年9月1日、改正した「賃貸住宅管理業者登録規程」および「賃貸住宅管理業務処理準則」が施行された

2016年9月1日、改正した「賃貸住宅管理業者登録規程」および「賃貸住宅管理業務処理準則」が施行された

国土交通省はこのほど「賃貸住宅管理業者登録規程」および「賃貸住宅管理業務処理準則」を改正した。これは2011年12月1日にスタートした「賃貸住宅管理業者登録制度」について一部を見直し、管理業務の適正化を一層促進することなどを目的としたものだ。

改正は2016年8月12日に告示公布され、同9月1日に施行されている。

主な改正内容は次の3点である。
□ 事務所ごとに「一定の資格者」(実務経験者等)の設置を義務化
□ 「貸主への重要事項説明」などを一定の資格者が行うよう義務化
□ サブリースの借上げ家賃などについて「貸主への重要事項説明」の徹底

このうち「一定の資格者」については「管理業務に関し6年以上の実務経験者」または「同程度の実務経験者」としたうえで、「同程度」の要件として「賃貸不動産経営管理士」を挙げている(不動産業課長通知)。ただし、すぐに人材を確保できないケースもあることから「一定の資格者の設置」および「一定の資格者による重要事項説明」については2018年6月30日まで経過措置が設けられた。

また、サブリースに関する重要事項説明の徹底は、借上げ家賃の内容や将来の賃料水準変動に伴う改定条件などを書面に明記し、あいまいな説明や誤解によるトラブルを防止しようとするものだ。サブリースとは、管理業者が賃貸住宅を一括して借上げたうえで転貸し、貸主(オーナー)に対して「家賃保証」をする仕組みである。近年はこのサブリースをめぐるトラブルが増えているといわれるが、いったいどのような状況なのか、その背景を考えてみることにしよう。

「貸家」の着工戸数はピーク時の約半分に減ったが……

「サブリース問題」が取り沙汰される背景には「賃貸住宅を造りすぎている」という認識が強まりつつあることも挙げられる。5年ごとに実施されている「住宅・土地統計調査」(総務省統計局)によれば、2003年時点で367.5万戸だった「賃貸用の空き家」は2013年に429.2万戸となり、10年間で約62万戸増加した。また、「住宅着工統計」(国土交通省)によれば、2004年から2013年までの10年間における「貸家」の着工は約400万戸にのぼる。

その一方で、「住宅・土地統計調査」による「借家住まい」は2003年に約1,724万世帯、2013年に約1,857万世帯である。つまり、10年間で借家の需要は約133万世帯分が増えたのに対して、約400万戸が新規供給され、賃貸用の空き家は約62万戸が積み上がっているのである。

なお、新規供給分から世帯数の増加分、空き家の増加分を差し引いた残りのおよそ200万戸については、老朽化により取り壊されたり建て替えられたりしたケースが多いだろう。だが、老朽化したまま放置され、「賃貸用」から当面の使い道がない「その他の空き家」に振り変わったものが少なからず存在するのかもしれない。

ちなみに、「貸家」の着工戸数について「2015年1月の相続税強化を背景に、相続税対策としての賃貸アパート着工が増えた」という指摘が多くみられる。もちろんその側面は否定できないが、「貸家」着工戸数の推移でみると1980年代のピークの頃に比べ、近年は約半分の水準で推移している。それでも問題視されるのは「世帯数の減少」が目前に迫っているためであり、また、そのリスクが十分に認知されないまま「サブリース」(家賃保証)の契約形態が広がってきたことによるものだろう。

国土交通省「住宅着工統計」をもとに作成

国土交通省「住宅着工統計」をもとに作成

あと数年で全国的な世帯数の減少が始まる

ここで、総住宅数と総世帯数の関係について改めて確認しておくことにしよう。「住宅・土地統計調査」(総務省統計局)によれば、1963年には総住宅数が総世帯数を下回る「住宅不足」の状態だった。しかし、約50年前の1968年時点では数のうえで住宅は充足し、その後は世帯数の増加を上回るペースで住宅が増え続けている。戦後、一貫して新築重視の住宅政策が続いてきた結果だ。2013年には5,245万世帯に対して6,063万戸の住宅数となり、空き家問題が広く認知されるようになっている。

しかし、国立社会保障・人口問題研究所の予測によれば、2019年頃をピークにその後は世帯数が減少に転じる見通しで、住宅市場はかつてない事態に直面しているといえるだろう。その一方で、東京など大都市圏はまだ当分、人口も世帯数も増加が続くから大丈夫だという楽観論も聞かれる。ニーズが増えるかぎりは住宅数を増やさなければいけない、立地さえよければ埋まるから問題ない、といった論調だ。だが、世帯数の増加分のうちの何割かは、分譲住宅でニーズが満たされることにも留意しなければならない。

地域によって様相は大きく異なるだろうが、一例として神奈川県における直近の動きを確認してみよう。2015年1月から2016年8月まで20ケ月間で世帯数は約4.6万世帯増えた。それに対して、同期間における分譲住宅着工戸数は約4.9万戸、貸家着工戸数は約4.8万戸である。もちろん、その裏側には取り壊された住宅も数多く存在するわけだが、世帯数増加分のほぼ2倍の住宅が供給されているのだ。

ただし、2015年に実施された国勢調査により、統計上の世帯数は10月を境に大きく調整されている。調整後の2015年10月から2016年8月まで11ケ月間の神奈川県合計では、世帯数の増加が約4.1万世帯、分譲住宅および貸家住宅の合計着工数は約5.3万戸となる。世帯数と着工数の乖離はやや狭まるものの、それでも過剰な印象は否めないだろう。神奈川県にもすでに賃貸用の空き家は約30.4万戸、売却用の空き家は約2.5万戸(2013年住宅・土地統計調査)が存在しているのである。

総務省統計局「住宅・土地統計調査」をもとに作成

総務省統計局「住宅・土地統計調査」をもとに作成

「未登録業者」への対応に課題が残る?

さて「サブリース問題」に話を戻すが、今回の国土交通省による「賃貸住宅管理業者登録規程」および「賃貸住宅管理業務処理準則」の改正の背景には、サブリース(家賃保証)における説明が不十分なことでトラブルが起きているという問題がある。たとえば、契約期間が30年のときに「30年間ずっと同額の家賃が保証される」と貸主(オーナー)が勘違いすることに起因するものだ。その収入を見込んだ返済計画をもとに借金をして賃貸アパートを建てれば、契約家賃が引下げられた途端に行き詰ることになりかねない。

よほど条件に恵まれた物件でなければ、数千万人規模の人口減少が予測される30年後まで現行の賃料水準を維持できるはずもないのだが、賃貸アパートのオーナーには賃貸経営の意識や情報が乏しいのにもかかわらず、「相続税対策のため」という理由で建設業者から勧誘されるままに金融機関から借入れをした例も少なくないだろう。そのような層に対して十分な説明を尽くさないままに事業を進めれば、「そんなはずじゃなかった」という事態を招くことになるのだ。

そのような認識の相違によるトラブルを防ぐために今回の改正が行われたわけだが、そもそも「賃貸住宅管理業者登録制度」への登録はどれくらい進んでいるのだろうか。賃貸不動産経営管理士協議会が調べた管理業者総数は、全国で14,859社(2015年6月時点)にのぼる。それに対して「登録業者」は3,015社(2015年8月末現在:管理戸数がゼロの管理業者を含めた登録業者数は3,689社)となっている。それぞれの資料を見比べると、管理戸数が1,000戸を超える「未登録業者」も1,000社近くにのぼるようである。

そのため、サブリースの全体像は分からないのだが、登録業者を対象とした集計ではおよそ4分の1の管理業者(860社)がサブリースを取扱い、契約戸数は約157万戸となるようだ。また、登録業者の約3%にすぎない「サブリース戸数5,000戸以上」の管理業者が、戸数ベースではほぼ9割を占めているという。一部の大手による寡占が際立つ一方で、わずかな戸数を対象にサブリースを行う管理業者が多いのが実態のようだ。

国土交通省は「未登録業者」についても「当該ルールの趣旨に則った業務の執行」を求めて、不動産業界団体などに対する通知を発した。だが、どこまで周知が進み、ルールが守られるのかは不透明な面が否めない。

賃貸住宅オーナーの自覚も求められる

国土交通省が改正に乗り出す前から「顧客へはきちんと説明をしていた」という賃貸管理業者は多いはずであり、「サブリース問題」を引き起こしているのは一部の管理業者にすぎないだろう。だが、大都市の郊外や地方都市へ行くと、駅からかなり離れたエリアや田畑に囲まれた土地に建てられた木造アパートも少なからず見かける。

これから人口や世帯数の減少が進むのと同時に、空き家もどんどん増えていく。いまから15年あまり後には空き家数が2,000万戸を超えるという民間の予測も出されている。そのような状態が近づくにつれ、真っ先に競争力を失うのが立地条件の劣る木造アパートだろう。仮に同じ立地、同じ築年数の木造アパートと鉄筋コンクリート造の賃貸マンションがあれば、木造アパートのほうが不利にならざるを得ない。人口や世帯数の減少がさらに進めば、鉄筋コンクリート造などの賃貸マンションでも次第にニーズは失われていく。

また、都市部で建てられる投資用の賃貸マンションは専門家が関与し、緻密な将来予測に基づいて立地が選定されることも多い。それに対して相続対策で建てられるアパートは、「たまたまそこに土地を持っている」ことをスタートラインにして事業が計画されることになる。「ニーズに基づく物件」と「偶然の要素に基づく物件」が、同じ土俵で競わなければならなくなるのがこれからの賃貸住宅市場だろう。

そう考えれば、競争力が劣る物件に対して長期間にわたり同額の家賃保証が続くほうが不自然なのである。管理業者も営利が目的であって、ボランティアで家賃保証をするわけではない。20年、30年といった期間内にはサブリース契約をした管理業者が倒産するリスクもあるわけであり、貸主(オーナー)が賃貸経営者としての自覚を持つことも求められる。

だが、建設業者などから勧誘されて「相続税対策のために賃貸アパートを建てた」という人の中には、すべてを管理業者任せにするだけで賃貸経営者としての自覚がないケースもあるという話が聞かれる。そのような状態は入居者にとっても不幸なことになりかねないが、将来は「物件の競争力を高めるため」として、管理業者から言われるままに過剰な追加投資を強いられるケースも出てきそうだ。現在の「サブリース問題」よりも大きな問題に発展するかもしれない。

そのような事態や空室リスクなどを避けるために、さまざまな民間組織が貸主(オーナー)などを対象に勉強会や研究会を開催したり情報交換をしたりしており、勉強熱心なオーナーも多い。賃貸マンション、賃貸アパートなどによる資産運用や相続対策を考えるのであれば、その戸数にかかわらず賃貸経営に対する意識を明確にし、積極的に情報収集をすることも欠かせないのだ。

貸主(オーナー)が賃貸経営者としての自覚を持つことも求められている

貸主(オーナー)が賃貸経営者としての自覚を持つことも求められている

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