石渡 浩の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資に有益な融資を受けるための知識

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

第3回 税引後キャッシュフロー偏重の盲点 銀行は決算書のここを見る(中編)

個人部門のアパートローンの審査では利益+減価償却費-元金返済=キャッシュフローが重視されます。これが十分にプラスになることが求められます。それゆえ、同じ物件を同じ融資額、同じ金利で融資を受けて購入するのでも、融資期間が長いほど融資が受け易くなるのが一般的です。
例えば、1億円の物件を内訳として土地1,000万円・建物9,000万円で買い、その際の仮定として、借入額1億円、減価償却期間33年、返済方法30年元利均等返済、金利3%、所得税または法人税率30%、年純収入1,000万円としましょう。
1年目の税引後キャッシュフローの概算は以下のとおりです。

・純収入1,000万円 - 減価償却費300万円 - 支払利息297万円 = 税引前利益403万円 → 税額121万円
・純収入1,000万円 - 元利返済額506万円 - 税額121万円 = 税引後キャッシュフロー 373万円

ここで、融資期間の仮定を変化させましょう。もし融資期間が20年ならば、また、40年ならばどうなるかということです。

●融資期間を20年にすると
・純収入1,000万円 - 減価償却費300万円 - 支払利息295万円 = 税引前利益405万円 → 税額122万円
・純収入1,000万円 - 元利返済額666万円 - 税額122万円 = 税引後キャッシュフロー 212万円

●融資期間を40年にすると
・純収入1,000万円 - 減価償却費300万円 - 支払利息298万円 = 税引前利益402万円 → 税額121万円
・純収入1,000万円 - 元利返済額430万円 - 税額121万円 = 税引後キャッシュフロー 449万円

このように、融資期間が2倍違うと、上記例ではキャッシュフローが2倍以上増えます。しかし、それはあくまでキャッシュフローであり、儲けすなわち利益ではありません。利益はむしろ融資期間が短いほうが多くなっています。そして、所有・借入後時間が経過するほど、融資期間が短いほうが利益が高くなります。

20年ローンですと20年間の支払利息総額が3,310万円になります。これに対し40年ローンですと40年間の支払利息の総額は7,183万円になり、うち当初から20年間の支払利息額合計は5,046万円に及びます。すなわち、20年間で利息という名の経費が1,736万円も多くかかる計算になります。

また、20年後の残債は20年ローンですとゼロですが、40年ローンですと6,455万円です。

個人部門で扱われるアパートローンの審査ではキャッシュフローが重視されますが、法人部門で扱われる事業性融資では利益と純資産が重視されます。
20年間の利益と20年後の純資産がどうなっているか比較してみましょう。

●融資期間を20年にすると
・純収入1,000万円×20年 - 減価償却費300万円×20年 - 支払利息3,310万円 = 税引前利益10,690万円 → 税額3,207万円、税引後利益7,483万円
・純収入1,000万円×20 - 元利返済額13,310万円 - 税額3,207万円 = 税引後キャッシュフロー 3,483万円
・資産
  不動産1億円-(300万円×20年)=4,000万円 ※簿価
  現預金3,483万円
  計7,483万円(……①)
・負債 ゼロ(……②) ※借入残高
純資産(①-②) 7,483万円 ※簿価

●融資期間を40年にすると
・純収入1000万円×20年 - 減価償却費300万円×20年 - 支払利息5,046万円 = 税引前利益8,954万円 → 税額2,686万円、税引後利益6、268万円
・純収入1000万円×20年 - 元利返済額8,592万円 - 税額2,686万円 = 税引後キャッシュフロー 8,722万円
・資産
  不動産1億円-(300万円×20年)=4,000万円 ※簿価
  現預金8,722万円
  計12,722万円(……①’)
・負債 6,455万円(……②’) ※借入残高
純資産(①’-②’) 6,267万円 ※簿価

20年間の利益と20年後の純資産を比較すると次のようにまとめられます。

利益 融資期間20年のほうが多い(経費である利息額が少ないため)
資産 融資期間40年のほうが多い(返済額が少なく現預金が多く積み上がるため)
負債 融資期間20年のほうが少ない(返済スピードが速く20年で完済するため)
純資産 融資期間20年のほうが多い(二つの融資期間を比較すると、負債の差額のほうが資産の差額よりも大きいため)

このように、法人融資審査で重要な利益、純資産ともに、融資期間が短いほうが高くなります。もちろん、法人融資審査でも購入物件単体でのキャッシュフローがプラスである必要があります。しかし、そのために融資期間を長く取り過ぎるとその後の利益と純資産に悪影響を及ぼし、次の融資を受ける際に不利になります。

銀行が好む貸し先はどちらでしょうか。もちろん、20年ローンを組んで完済している先です。これは極端な例だったかもしれませんが、私が不動産投資を始めて8年が経ちました。融資期間は15-25年であり、既に1/3とか半分とか融資を返済している物件もあります。

個人部門のアパートローンで扱われている30年、35年といった融資を受けていないため、支払利息が少ない分利益が高くなり、そして、負債の減り方が速いので、仮に同じ物件を長過ぎる融資期間を取って買った人と比べると、簿価上の不動産額が同じでも負債額が資産額に比べて少なくなっているので、財務状況がよく見えるのです。

銀行の法人部門の融資審査では、購入物件の収支以前の問題として、貸出先企業の財務状況を判断します。決算書でまず見るのは利益と純資産です。毎月のキャッシュフローを高くしようとして融資期間を長くすると、利益にも純資産にも負の影響を及ぼしますので、気をつけて下さい。

今回のシミュレーションはキャッシュフローの再投資をしない仮定であり、再投資をすることで利益も純資産も変わってきますが、融資期間を長くしてキャッシュフローを多くすることでその後銀行からの評価が高まる訳ではないことを分かり易く説明するため、再投資をしない仮定にしました。

銀行は融資期間の長い会社よりも短い会社のほうを好みますし、なるべく短い期間の融資をしたがります。融資期間が短いほうが、銀行にとっても会社にとってもリスクが低いと考えるからです。

【このコラムの著者】

石渡 浩

神奈川県生まれ。神奈川県在住。
2007年慶応義塾大学大学院経済学研究科修了。大学院在学中の2005年12月に不動産投資を始め、大学院修了後の2007年4月に不動産投資会社を設立して不動産賃貸業に専念する。2012年までに、アパート・マンション20棟194戸、区分所有 (分譲)マンション20戸、一戸建て住宅12戸、計225戸を所有し、年間家賃収入 約2億円になる。
また、2009年1月からブログとメールマガジンによる不動産投資情報提供を開始し、不動産賃貸業の傍ら講演・執筆にも取り組む。講演は不動産会社・証券会社・不動産ポータルサイト運営会社等の主催者から招聘されて出講するものに加え、自身で企画・募集する自主セミナーもある。メールマガジン・ブログ読者を対象に、有料セミナーの申込を1日で300人から得た経験を持つ、インターネットを利用した集客のプロでもある。
現在、不動産投資とその講演・執筆に加え、資金調達やインターネット集客について中小企業経営者向けの情報提供活動も行っている。

【メールマガジン】
「石渡浩の不動産投資を本業に―保証人無しでも融資を受け自己資金にレバレッジをかけて家賃年1億円越えを― 」
http://www.mag2.com/m/0000279415.html

【ブログ】
「不動産投資家石渡浩のブログ」
http://blog.fudosan-toshi.org/

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