田中 圭介の不動産投資コラム

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

【No.2】 ASEANへの不動産投資で気をつけるべき点

図1_1

皆様、こんにちは。
前回のコラムではASEAN不動産投資の魅力について書きました。
おかげさまで問い合わせをいただき、改めてASEANへの投資にご興味がある人が多いと思いました。

そんな魅力あるASEAN不動産投資ですが、気を付けなければいけない点を今日は書いていきたいと思います。
少しネガティブな書き方になるかもしれませんが、現実問題としてしっかりと認識してください。

では早速、その気をつけるべき点を以下に挙げていきます。

1. 権利関係をきちんと確認すること
2. デベロッパーをきちんと見極めること
3. 不動産仲介・管理会社をきちんと選ぶこと
4. 最終的な出口戦略をきちんと考えること

まず、権利関係についてですが、ASEANエリアの中には非居住者の外国人名義で不動産が所有できるかどうかをきちんと知っておいてください。

以下にまとめてみましたので、ご参考にしてください。

図1:ASEANエリア内での外国人名義での保有可否について

国名
外国人名義で
土地保有
外国人名義で
住居保有
備考
シンガポール
コンドミニアムのみ
マレーシア
日本同様、建物+土地で購入可能
ただし、約3,000万円以上の外国人最低購入額規制あり
タイ
コンドミニアムのみ
ただし、購入時には外貨証明書が必要
インドネシア
原則としてインドネシア国政を持つ個人、法人に限られる
フィリピン
コンドミニアムのみ
ベトナム
2015年7月以降から外国人所有権が与えられた。
カンボジア
コンドミニアムのみ
ラオス
使用権の購入は可能
※コンドミニアム方が存在せず
ミャンマー
不動産規制は厳しい
ブルネイ
不動産規制は厳しい

シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピン、カンボジアの5カ国では既に非居住者の外国人でもきちんと登記できる事は確認できておりますが、2015年7月に解禁となったベトナムに関しては、まだ確認ができていません。

ベトナムに関しては、改正住宅法の細則が出ていないので、現地の日系不動産会社も対応に非常に慎重になっています(2015年10月末現在)。
ベトナムに関しては、もう少し時間が経って、きちんと整備されるのを待つ方が良いかもしれません。

またインドネシアに関しては、2016年以降1戸だけではありますが、外国人名義で登記できる可能性があるというニュースが流れました(まだ確定ではありませんのでご注意ください)。

さらに、ミャンマーでも2015年11月の総選挙以降、インドネシアのように外国人に開放する可能性があります。来年は色々と変化がありそうな気がします。

そもそも、なぜ国によって違うのか?という話ですが、大きくは2点あると思っています。

1. 外国の資本を受け入れて、より経済発展をするため
2. 逆に外国資本を入れすぎ、バブル経済になってしまうことを防ぐため

この2点のせめぎ合いだと思っています。
ですので、簡単に外国人の購入をOKにしてしまうと、2のような事態を引き起こしてしまう可能性があるので新興国ではなかなか開放しないという側面もあるわけです。

次に2のデベロッパーについてですが、ASEAN諸国においても当然ですが株式市場があり、上場しているデベロッパーも多くいます。

これら上場している企業の物件はある一定の評価はできるかと思いますが、そうではないデベロッパーに関しては、実績で判断するしかありません。

ASEANエリアでデベロッパーリスクとして考えられるのは「物件の未完成リスク」です。

新築のコンドミニアムを建設する時は、デベロッパーは先に青田売りをして、その販売実績をもとに銀行等で資金調達をするケースが多いです。

マレーシア、タイ、フィリピンなどではデベロッパー側でも資金調達はきちんと対応していて、物件の未完成リスクは非常に低くなってきています。
とはいえ、経験の浅いデベロッパーや土地の権利関係で揉めて建設が遅れるケースがたまに出てくることがあるので、このあたりは現地を確認して色々な方に聞いてみることをお勧めします。

図2 タイ:建設中の物件の様子(リッツカールトン・レジデンス)、デベロッパーはタイ上場企業のペースデベロップメント

図2 タイ:建設中の物件の様子(リッツカールトン・レジデンス)、デベロッパーはタイ上場企業のペースデベロップメント

そして、例を挙げた中でも最も重要といっても過言ではないのが、3の不動産会社選びです。

投資家の皆様からすると、どうしても海外の不動産、しかも非居住者となれば、わからないことだらけだと思います。
そんな時に非常に頼りになるのが現地、もしくは日本で海外不動産を販売している不動産会社の存在でしょう。

しかし、ここでデベロッパーと投資家を結ぶ不動産会社の選定を誤ると、後々まで非常に大きな痛手となって自らに返ってきます。

不動産会社選びで重視して欲しいのは以下の3点。

1. 日本、ないしは現地にて「実績があるかどうか」
2. 組織体制はきちんとしているかどうか
3. 賃貸付け、管理、売却までのフォローアップの確認

となります。

よくあるのが、

「賃貸付け、管理、売却などは現地企業と提携していますので、購入後はそちらを紹介します」

ということですが、これは一見すると「きちんとやってそう」と思ってしまいますが、その中身をきちんと確認してください。
私が知る限り、現地ローカル企業で日本人向けに対応してくれる会社はそんなに多くありません。

理由として挙げられるのは、物件完成後、一斉に賃貸付けが始まる時に、現地ローカル企業が大事にする顧客優先順位は必ず「現地人オーナー」です。外国人オーナーの優先順位は基本的に下になります。

もちろん、現地ローカル企業も対応はしてくれますが、現地に住んでいない日本人オーナーなんて、彼らからすると「日本人はお金を持っているから、そんなに焦らなくても大丈夫でしょ?」という態度になりがちです。

結果、賃貸付けに非常に苦労するという事態が起きています。
当然ですが、売却に関しても優先順位が低いわけですから時間ばかりかかってしまうという話になります。

海外不動産を扱っている不動産会社のほとんどは真面目に経営をされています。しかし、彼らですらわからないことや対応しにくいことが現地にはあります。

私は投資家の皆様によく話しているのは、
「何を買うかも重要だが、誰から買うかはもっと重要である」ということです。

ここはぜひ意識をしていただければと思います。

そして、1社だけではなく、複数の企業や人から情報を得るようにしてください。現地に住んでいる日本人も非常に多いです。彼らは基本賃貸で住んでいる事が多いので、彼らに話を聞いてみるのも一つだと思います。
実際に賃貸で住んでいて、どこのエリアが住みやすいのか、人気がある物件はどこか?など生の情報を持っています。

こういう人たちを活用しない手はないですね。

今はSNSなどで簡単につながる事ができる時代です。
ぜひ気になった物件やエリアなどは複数の情報ソースを持って、情報の信頼性を高めて、信頼できる不動産会社を選んでください。

そして、最後に4の出口戦略の話になるわけですが、
不動産という資産は「インフレに強い」というメリットがありますが、「流動性が低い」というデメリットが存在します。

ですので、株式のように「明日売ろう」と思っても、そんな簡単に売れるものではありません。

具体例を挙げると、弊社のお客様で下記のようなご要望がありました
「3,000万円相当のコンドミニアムを購入したのだが、どうやら値上がりをしているみたいなので早急に売却したい。強いては信頼できる不動産会社を紹介してほしい」
とのこと。

早速、弊社提携企業3社ほどに打診をしてみたところ、確かに販売価格はこのお客様が購入された時より20%ほど値上がりを見せていました。

お客様は15%ほど価格を上げた形で売却活動を開始されたそうです。

しかし、後から伺った話ですが、このお客様は日本で違う物件を購入されるということで、本当に「早急」だったらしく、3日くらいで売却できると思ったそうです。

残念ながら、日本でも同じですが「売却したい」と思ってから3日で購入客がついて即売却される例はほとんどありません(あくまで市場で売却をする場合)。

それでも弊社の提携先が頑張って2週間で購入客を見つけたのですが、指値が入ってしまい、結局購入金額とほぼ同額に近い形で売却という結果に終わりました。

こんなに早く見つかるのは稀有な例ですが、不動産は流動性が低いという事をきちんと認識した上で、中長期保有を前提に考えてください。

図3 地価の値上がりが続くシンガポールのビル群の様子

図3 地価の値上がりが続くシンガポールのビル群の様子

以上、4つの視点で「気をつけるべき事」を書いてきましたが、これらはあくまで基本的な内容になります。

上記でも述べた通り、やはり「不動産会社(パートナー)選び」が一番重要です。彼らがきちんと対応をしてくれて、間に入ってやってくれるのであれば、気をつけるべき点を全てカバーしてくれるわけです。

そして、最後にお伝えしておきたい事として、
「現地に必ず行ってください」
ということです。

すでに複数の海外物件をお持ちで、土地勘もあるし、信頼できる人が現地にいる方に対して私は何も言いません。あくまで相場であったり、賃貸事情をお伝えしたりするだけでだいたい終わります。

しかし、現地に行った事もない方の場合、まずは現地に行ってください、と強く言います。私が持っているASEANエリアの不動産事情と皆様が感じているASEANエリアの不動産事情は、残念ながら大きな乖離があると思います。

これは現地に住んでいたことがあり、さらに毎週のように提携企業とミーティングをしたり、情報提供をお互いにしあったりしている私と皆様ではやはり違うわけです。

だからと言って、私を信じろという話ではありません。

それくらい人の感覚は違うもので当然だと思いますし、皆様が思っている以上にASEANエリアは発展もしていれば、まだまだ未発展の部分もあるということです。そして、百聞は一見に如かず、という言葉もある通り、現地で見て、感じて、理解する事が一番重要です。

私はよく海外不動産投資をしたいという方に対して、
「どこの国が好きですか?」という話をさせてもらいます。

投資だから国は関係ないと言われるかもいらっしゃいますが、私は長年HOME’Sで実需中心に不動産を見てきた手前、やはり物件に愛情を持ってほしいですし、投資するといってもそこに人が住むわけですから、自分が気に入ったところに投資をしてほしいと思っています。

だからこそ、「現地に行ってください」という思いも強いわけです。

単純に数字だけの投資ではないドラマが現地にはあります。
現地ではそれこそ「坂の上の雲」を求めている人間であふれています。
そういった熱気を感じに現地に旅行で行かれるのでも良いと思います。

ぜひ現地を訪れて可能性を見出す事ができれば、今回書いた内容を改めて見直してください。そこからでも良いとすら思っています。

今回は気をつけるべき事を中心に書いてきました。
次回のコラムは、もう少し数字を使って、ASEAN各国を水平に見てみたいと思います。

今回もお読みいただき、ありがとうございました。

【このコラムの著者】

田中 圭介

1979年兵庫県生まれ、関西学院大学経済学部卒。 新卒で外資系製薬メーカー入社後、出版社を立ち上げる。 2005年より大手不動産ポータルサイトにて営業責任者を5年以上歴任した後、2011年タイにて現地法人の立ち上げ、現地不動産ポータルサイトを立ち上げた経験を持つ。 在タイ時代から数多くの人脈を持ち、ASEAN各国を駆けずり回る。 現場主義を信条とし、自身の経験や知識を元に投資家や企業のサポートを行う。 主な著書に「ASEAN不動産投資の教科書」など3冊。

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