エイリックの田中です。
2022年5月9日、フィリピン大統領選挙が行われ、故フェルディナンド・マルコス元大統領の長男フェルディナンド・マルコス・ジュニア氏が当選確実となりました。同時に実施された副大統領選にはドゥテルテ氏の長女サラ氏が当選確実となりました。おそらくドゥテルテ氏のやり方を踏襲すると思われます。ですので、特段何か大きな変化は起きないだろうと見られています。
外交に関してもASEAN諸国との連携を重視し、日米中との関係に重点が置かれると思います。アメリカに関してはフィリピンにとって唯一の同盟国で安全保障上非常に重要な国という位置付けです。元々50年近く植民地支配があったため、政治、経済、文化などアメリカの影響が大きいし、公用語も英語です。アメリカ本土には約400万人以上のフィリピン系住民がいるということもあり、この関係が崩れるとは考えにくいです。
日本との関係においてもドゥテルテ大統領が「兄弟よりも近い関係」と言及したほど日本とフィリピンの関係は良好です。この関係をわざわざ崩すとは考えにくく、経済面においても約1,500社以上の日系企業が進出しており、在留邦人数も1.5万人以上を記録し、日本人にとっても非常に良い環境になってきています。これはフィリピン人側から見ても同様で、対日感情は非常に良いので、これもわざわざ関係悪化になるようなことは考えにくいと思います。
ただ、注意しないといけないのは中国との関係です。中国に対するフィリピン人の信頼感が低くなってきています。特徴的なのがオンラインカジノです。2018年頃から急速に広まってきたオンラインカジノの拠点がフィリピンに広がり、一気に不動産価格にまで影響が出るほど中国人の進出が目立ちました。
しかし、ドゥテルテ政権はオンラインカジノ問題や南シナ海問題などは一時棚上げして中国との関係改善を優先し、経済成長、インフラ開発投資を進めてきました。この点をマルコス氏がどう判断するのか。そこは要注目です。
*現段階では中国との軍事衝突を避けるため、中国との関わりを継続的に維持する姿勢を見せています。
つまり、ドゥテルテ政権と大きな違いはないと想定されます。
ではそうであれば、不動産マーケットはどのように動いていくか?
コリアーズの調査によれば、2021年を底として2022年には再度成長曲線を描くと予測が出ています(図1参照)
図1:不動産価格とGDP成長率推移(1995年〜2022年)
出典:コリアーズ・フィリピン
ただ、このグラフはあくまで全体的な話であり、局所的にはこのように動くとは思いません。そこは慎重に見ていく必要があります。図2をご覧ください。
大統領が変わったとしても、ドゥテルテ政権時代に策定したインフラ政策は継続されると思いますので、この政策を中心に見ていく必要があると思います。
図2 マニラ中心部のストック住宅数(2021年末〜2024年予測)
出典:コリアーズ・フィリピン
ここで1番供給されるのがベイエリアです。カジノや新しく開発されているエリアでもありますが、ここは日本人が投資をしてもなかなか難しいと言われているエリアです。理由は中国人マーケットだから、です。上述した通り、フィリピンはオンラインカジノの拠点として発展していることもあり、多くの中国人がマニラのベイエリアに投資をしています。そして住む人も中国人が多い傾向があります。もちろんローカルのフィリピン人マーケットでもありますが、ただ難しいエリアの一つでもあります。
また近年マカティやBGC(ボニファシオ・グローバル・シティ)で新規開発ができる土地が少なくなってきている状況から、アラバン(マニラの南側)に開発が広がっている傾向があります。これは地下鉄計画の影響もあると思われます。今後発展が見込まれているエリアでもありますが、様々な開発会社が入っているので目利きが難しいエリアであるのも確かです。
日本人投資家が最も多く投資しているのがマカティ、BGCですが、今後オルティガスやアラバンに広がっていくと思いますが、コロナ禍が落ち着きつつあるので、目利きがとても重要になりますし、やはり中心部の程度の良い中古物件というのが選択肢に入ってくると思います。改めて現地に行き情報収集する時期に来たかと思います。
フィリピンも大統領選が終わり、そしてコロナによる影響もかなり抑え込まれていますので、この夏に向けていよいよ動きそうです。楽しみですね。