田中 圭介の不動産投資コラム

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

No.22 東南アジアに向かう日系企業の状況 その2

エイリックの田中です。

前回のコラムで「なぜ日系大手不動産会社、住宅メーカーがASEANに進出するのか?」というテーマを掲げて、その理由の一つである、「日本の市場が飽和状態であること」について書いていきました。

今回は、日本の市場が飽和状態であるからこそ海外に目を向けた、という話を考察していきたいと思います。

2.ASEANが地理的にも近く、成長中のエリアであること

このコラムの第1回目(【NO.1】ASEANへの不動産投資はなぜ注目されているのか?
https://toushi.homes.co.jp/column/keisuke-tanaka/tanaka01/でも書きましたが、このASEANというエリアが急成長を見せています。

コラムの第1回目を書いた時が2015年10月当時、AEC(ASEAN経済共同体)はまだ発足していませんでしたが、2015年末にAECが正式に発足し、2018年11月現在でほとんどの関税が実質ゼロになりました。

この結果、ASEANエリア内においては人・モノ・カネの移動が活発化し経済成長を後押ししてきました。このAEC構想はASEANが世界で生き残りをかけた戦いであり、また世界中でこのような経済圏を今後築いていくと予測されていますので、AECの統合を今後も推し進めていくでしょう。
図1はそんな世界に存在する経済圏を比較したモノとなります。

図1 世界の経済圏比較表

日本もTPPに参加していますが、AECの中で突出しているのは人口の多さでしょう。単純に人口比較をすると1国で13億人以上いると言われている中国やインドに負けてしまいますが、EUよりも人口が多く、今後が期待されています。

中国、インドという人口大国は一見強力ではあるものの彼らも一枚岩ではありません。また日本は中国、インドという政治的にも文化的にも日本とは違う国に食い込めているかというと少し疑問符がつきます。
その点、ほぼ全てのASEAN諸国が親日国であり、日本に対して好意的な国民性は日本にとっても非常に進出しやすい国なのだと思います。

続いて図2、図3を見てください。

図2 ASEAN全体のGDPと経済成長率推移(出展::IMF各国データよりエイリック作成)



図3 ASEANと日本の生産年齢人口推移

これらを見ても明らかな通り、単純に人口が多いだけではなく、その生産年齢人口、つまり若い人が多いということです。日本は残念ながら高齢化が顕著に表れています。

つまり、全体として経済成長に必要な人口ボーナスがこれからやってくるASEAN諸国(一部の国では少子高齢化が始まっている国もあります)は必然的に経済成長をしやすい、その結果と予測が図2のグラフであり、若い人が多く人口ボーナスをこれから迎え、そして経済成長もしていく、となれば、当然ながら「家」が大量に必要である、ということです。

だから、日系大手不動産会社や住宅メーカーもASEANというエリアを無視してこれ以上の成長は見込めない、そういう結論になっているのです。

さてここで、進出スピードについて少し考えてみます。
例えば自動車メーカーはそれこそ50年以上前からASEANエリアに進出していました。私の父も1990年代にマレーシアで工場を立ち上げ、その後20年以上マレーシアで勤務しておりました。そのおかげもあって親日国が多いのも事実なのですが、不動産会社や住宅メーカーが進出するのは遅くないか?という指摘がたびたびあります。

私自身も今、日系企業のASEAN進出のお手伝いをさせていただいている関係上、もっと早く動いてほしい、なぜもっと多くの企業がASEANに進出しないのか?というのは正直本音としてありました。

ですが、「1円でも安く製造する」という厳しい環境で「人件費の安さ」を追求しASEAN進出を余儀なくされたメーカーと違い、不動産会社は違います。その理由は以下2つに集約されると思います。

1. 政治的、法的問題
2. マーケットの成熟度の問題

まずASEANの多くの国は新興国です。1997年アジア通貨危機で大きな被害を受けたASEAN諸国は自国の不動産や外資企業に対して規制をかけていきます。
逆に自国の雇用や税金を増やす、そして技術を提供してくれる製造業メーカーは大歓迎という構図が生まれます。

不動産というのはその国のものです。ですので、どうしても国の体力が弱ければ外資に乗っ取られる可能性があるので、投資規制や外資規制をせざるを得ません。そのため、今もASEAN諸国においては不動産、許認可に関わるビジネスはなかなか難しいというのが正直なところです。

もちろんアンダーテーブルと呼ばれる賄賂などが今も行われているエリアや省庁もあります。こうなってくるとコンプライアンス重視の風潮の中、日系企業としてはリスクの方が高いのでおいそれと手を出せないというのがあります。

この政治的、法的問題とは別に、上述した通り製造業は「人件費の安さ」でASEANに進出しています。これは「生産国」としての役割をASEANに求めています。ですが、不動産となると「現地の人が購入するもの」が基本になりますから、現地の富裕層、中流層が育たない限り進出したところで正直マーケットがないので意味がありません。

製造業が「生産国」として期待しているのに対して、不動産業やサービス業は「消費国」としてASEANに期待しているのです。
そして今、まさにASEANは「消費国」として世界から目を向けられています。
だからこそ、日系大手不動産会社もこれから「消費者が爆発的に増え、マーケットがまさにこれから成熟していく」という大きな未来が見えるためASEANへ進出をしているのだと思われます。

次回は進出理由の最後「クロスボーダー時代の到来」について書いていきます。

【このコラムの著者】

田中 圭介

1979年兵庫県生まれ、関西学院大学経済学部卒。 新卒で外資系製薬メーカー入社後、出版社を立ち上げる。 2005年より大手不動産ポータルサイトにて営業責任者を5年以上歴任した後、2011年タイにて現地法人の立ち上げ、現地不動産ポータルサイトを立ち上げた経験を持つ。 在タイ時代から数多くの人脈を持ち、ASEAN各国を駆けずり回る。 現場主義を信条とし、自身の経験や知識を元に投資家や企業のサポートを行う。 主な著書に「ASEAN不動産投資の教科書」など3冊。

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