田中 圭介の不動産投資コラム

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

No.36 2019年ベトナムの不動産マーケット その2

エイリックの田中です。

前回はベトナムの改正住宅法のおさらいとベトナム経済が堅調であるということについて書きました。

今回は実際の現場で起きている状況などについてレポートしたいと思います。
1年半前にベトナムについてコラムをここで書きましたが、当時はある意味ピークだったかもしれません。下記、図1、図2をご覧ください。

図1 ホーチミンの新規供給戸数推移

出典:CBRE Vietnam

図2 ホーチミンの販売戸数推移

出典:CBRE Vietnam

ベトナムにはハノイとホーチミン、そしてダナンと日本で宣伝される物件が3つほどありますが、ここではやはり一番大きなマーケットかつ身近であるホーチミンに特化して書いていきます。

まず図1、図2を参照にしていただければわかりますが、2016年をピークに供給数も減り、販売数も減ってきています。
具体的には

2016年:新規供給戸数:約38,000戸、販売数:約35,000戸
2017年:新規供給戸数:約31,000戸、販売数:約34,000戸
2018年:新規供給戸数:約31,000戸、販売数:約31,000戸


供給数も少しずつ減らしつつ、販売数も減ってきています2015年7月から外国人が購入できるようになってから4年で、少しずつ下がってきていると見えます。CBRE Vietnamでは2019年強気に販売数が増えると予測していますが(約35,000戸、2016年時とほぼ同じ水準)、私はそこまでは伸びないと見ています。

販売数がそこまで伸びないのは、ある種当然といえば当然の帰結だと思っています。単純に供給と需要のバランスを見れば落ちているというより、「落ち着きを取り戻している」と表現をしたほうが的確かと思います。
またその供給数と販売数の中身に注目してください。
2016年〜2018年はラグジュアリー物件(超高級物件)とハイエンド物件(高級物件)が市場でも供給され、販売戸数でも動きがあったのですが、2019年予測になると、供給も販売も一気にミッドエンド物件(中級物件)物件の割合が高まり、いよいよ中間層が手を出せるような物件開発が増えてきたということを表しています。

具体的な話をすると、ホーチミン1区の中心地にある物件は、供給数が減っていき(そもそも開発する土地が減ってきたし仕込み価格が高いので物件価格も高くなるため)、郊外物件の供給が増えてきた、という話です。

それと図2の「Primary Price」つまり「一次取得時価格」は微増しています。これは新築物件価格が上昇していることに他なりません。あくまで平均値ですので、2016年は平米1,500USDだったのが2019年予測では平米1,850USDまで上昇しています。ただ、1区の物件などは平米単価3,000USDを超えてくるものも出てきています。平均値から大きく乖離してきている、そんな状況です。

この辺りの結果を受けて、他の国でも起きたように「中心部の値段が上がり、郊外を開発していくデベロッパー」と「中心地が高すぎて購入意欲を少し抑え出した投資家や現地購入者」という絵が透けて見えます。

実際、現地に行ってベトナム人にヒアリングしていくと
「さすがに買いすぎたから、今は小休止だね」とか「今は値段が高くなりすぎたから様子見」とか「郊外のほうが狙い目だよ、地下鉄ができるから」などの意見が多く、デベロッパーの販売側も放っておいても売れる、という時はなくなり、少しずつではありますが在庫が積み上がって行っているのかもしれません。

そういう意味でもベトナムの急速な不動産マーケットの成長は、今は少し静かなマーケットに変わってきているという感じがします。現地でも雰囲気的にはそんな感じです。ブームはいったん落ち着いたかな、そんな空気すら感じられます。

とはいえ、ブームがいったん落ち着いたからといっても、デベロッパーの手はそう簡単に緩めるわけにはいかないので、郊外の開発を積極的に行っています。経済が成長しているわけですから、急激な伸びはしない、となっても適正価格で売り出せば、やはりインフレ基調のこの国において不動産を持つということは大きな強みでもあります。

現地の人たちは当然それを理解していますので、まさに小休止といったところでしょうか。

次回はベトナムの最終回として、もう少し深掘りをしつつ、今後のベトナム不動産マーケットについて書いていきたいと思います。

【このコラムの著者】

田中 圭介

1979年兵庫県生まれ、関西学院大学経済学部卒。 新卒で外資系製薬メーカー入社後、出版社を立ち上げる。 2005年より大手不動産ポータルサイトにて営業責任者を5年以上歴任した後、2011年タイにて現地法人の立ち上げ、現地不動産ポータルサイトを立ち上げた経験を持つ。 在タイ時代から数多くの人脈を持ち、ASEAN各国を駆けずり回る。 現場主義を信条とし、自身の経験や知識を元に投資家や企業のサポートを行う。 主な著書に「ASEAN不動産投資の教科書」など3冊。

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