田中 圭介の不動産投資コラム

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

No.46 2020年ASEAN不動産マーケットの動き その2 〜各国考察:フィリピン〜

エイリックの田中です。
2020年1回目のコラムでは各国の全体考察を書きましたが、今回からは各国に絞って書いていきたいと思います。まずは私も注目しているフィリピンです。私自身もフィリピンに物件を購入しているので、この国の成長には期待をしています。

それでは世界銀行が今年の1月に発表したデータを見てみましょう。

図1

*世界銀行データより(赤字は予測)


2016年に当選した現大統領のドゥテルテ氏により6%以上の経済成長率を実現。6年に1度ある大統領選、次は2022年です。昨年の中間選挙でも大きく支持を集めたので、2022年までは安定していると言えるでしょう。

現在、世界的にコロナウィルスが広まっており、その影響も多少はフィリピンでもあると言われていますが、フィリピン政府としては限定的としています。

ただ少し気になるのは、6%以上の経済成長率と言っても地滑り的に下がっていることがグラフからは読み取れます。元々ドゥテルテ政権ではインフラ投資の加速や外貨規制の緩和による外資誘致にも積極的です。その中でも憲法を改定することで外資の出資比率の制限を改正することを目指しています。

2019年5月30日〜31日に東京にて開催された『第25回国際交流会議「アジアの未来」』(日本経済新聞社主催)に出席したドゥテルテ大統領は、講演にて下記のように述べています。

「フィリピンでは「ビルド・ビルド・ビルド」と名付けたインフラ政策も実施している。国内総生産(GDP)に占めるインフラ向けの支出割合を拡大しようとしている。フィリピンには投資が必要だ。日本からでも中国からでも投資は歓迎する。工場の建設やビジネスに安全かと聞かれれば十分に安全な環境は整っている」
*日経新聞2019年6月4日朝刊より抜粋

これがドゥテルテ大統領の本音だと思います。日本と同じ島国であるフィリピンには残念ながら資源がそこまで多くありません。また出稼ぎ等で稼いできた歴史があるため、製造業に関しては正直弱いという部分があります。

ただし、産業が少ないからと言ってこの国を切り捨てるには早いです。なぜなら人口は1億人を突破しており、英語を話す国です。東南アジアでも珍しいキリスト教国であり、サービス業に関しては非常に面白い存在になりつつあります。

この辺りのビジネスが今成長している最中です。

そして、上記でも触れた通り「ビルド・ビルド・ビルド」と名付けられたインフラ政策が徐々に形になってきました。

マニラでは今2つの大きな地下鉄ができる予定です。
それが「マカティ市地下鉄(Makati City Subway)」と「マニラ首都圏地下鉄(Metro Manila Subway)」です。

マカティ市地下鉄は昨年末から着工し、2024年開通を目指すと言われています。ルートはまだ暫定的ではあるものの現地では大きな期待が寄せられています。

*図2:Makati City Subway 路線図(予定)

*The Philippine Daily Inquirer graphicより抜粋


またマニラ首都圏地下鉄に関してはもっと大掛かりであり、全長36キロ、15の駅ができる予定です。2025年の全線開通を計画していますが、ドゥテルテ大統領の任期中(2022年まで)に実績を作りたいとの思惑もあり、第1フェーズにあたる「キリノ・ハイウェイ」「タンダン・ソラ」「ノース・アベニュー」の北部3駅間のみ2022年に部分開通する予定です。このプロジェクトは日本も関わっており、資金・技術の両面で支援が行われています。日本政府は2018年3月、国際協力機構(JICA)を通じてフィリピン政府と、メトロ・マニラ・サブウェイ(第1フェーズ)への1,045億3,000万円を上限とする円借款貸付契約を締結しました。そして、すでに第1フェーズに対して、510億ペソの政府開発援助(ODA)を行っており、事業の進捗状況に応じて支援を拡大させていく考えで、本プロジェクトの完工に向けて最終的には最大で6,000億円規模の円借款を検討するとしています。かなり大掛かりです。

ちなみに、第1フェーズの設計・建設は清水建設、フジタ、竹中土木といった日本の大手ゼネコンとフィリピンの財閥系建設会社EEIで構成する共同事業体が行っており、最初の3駅と同区間の地下鉄構造、バレンスエラ車両基地、フィリピン鉄道訓練センター「Philippine Railway Institute(PRI)」などを手掛ける予定となっています。PRIは質の高い鉄道運営・維持管理のための人材育成を目的としたもので、その設立には東京メトロも参画することが発表されています。まさに日本とフィリピン両国で立ち上げる一大事業と言えます。

図3:Metro Manila Subway路線図(予定)

*CNN Philippine news より抜粋


この2つの地下鉄ができることで今後のフィリピンは大きく土地の資産価値が上がりそうだと想定されます。そしてその頂上は2025年。もちろん、ドゥテルテ大統領の任期がありますが、再選する可能性も大いにあるでしょうし(長女に継がせるという声もあり)、今の安定した政権であればこのまま突っ走るであろうと想定されます。

直近だけでいうと中国人投資家の台頭や満足のいくサービスが受けられないという話を現地や日本人投資家から聞きます。

ですが、この大きなインフラ整備はそのような話を飛ばすほどの威力を持ってくると思います。それはシンガポール、マレーシア、タイで地下鉄や高架鉄道ができた時と同じです。再度フィリピンの不動産投資に熱が入ってくると想定されます。

そう考えると、フィリピンに関しては2025年を見越した上で検討をしていったほうが良いと思います。事実、日本の大手デベロッパーが2018年、2019年と進出をし始めました。日本からも近く、人口が多い、インフラが整いつつある、その割にまだ価格はシンガポールやバンコクに比べると安い、ここにチャンスがあるのではないか、という判断をしていると想定されます。

今のフィリピンでも高いという投資家さんもいらっしゃいますが、私の考えはまだ中心部の管理の良い物件は値段が上がると思います。まだまだ良い物件は正直少ないですから、これから成熟期に向けて動いていくのがフィリピンだろうなと考えています。

次回はまた違う国を考察したいと思います。
それではまた。

【このコラムの著者】

田中 圭介

1979年兵庫県生まれ、関西学院大学経済学部卒。 新卒で外資系製薬メーカー入社後、出版社を立ち上げる。 2005年より大手不動産ポータルサイトにて営業責任者を5年以上歴任した後、2011年タイにて現地法人の立ち上げ、現地不動産ポータルサイトを立ち上げた経験を持つ。 在タイ時代から数多くの人脈を持ち、ASEAN各国を駆けずり回る。 現場主義を信条とし、自身の経験や知識を元に投資家や企業のサポートを行う。 主な著書に「ASEAN不動産投資の教科書」など3冊。

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※ No.1表記について:不動産投資ポータルサイトが掲載をする物件数統計 2020年6月時点(フジサンケイビジネスアイ調べ)

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