エイリックの田中です。
前回はシンガポールの2020年、2021年の経済成長率予測を中心に話を書いてきました。今回は不動産について書いていきたいと思います。
まずはシンガポールの直近の不動産マーケットを見ていきましょう。
図1をご覧ください。
図1:シンガポール不動産タイプ別投資推移(2006-2020F)

出典:Colliers Research – Singapore
コリアーズが調査したデータですが、不動産タイプごとに棒グラフになっています。この中で2020年に関しては2019年よりも高い予測になっています。特にIndustrial、つまり産業系の案件が伸びています。ちょうどシンガポール港や空港拡張などがあり、それに伴い工場や倉庫などへの投資が増えました。ですので、不動産マーケット全体で言うとコロナの影響はほぼ無し、と思って良いと感じます。ただし、いわゆるResidential、居住用物件のマーケットはほぼ横ばい。ここをもう少し深掘りしてみましょう。図2をご覧ください。
図2:シンガポールの居住用物件の供給と空室率推移

出典:Colliers Research – Singapore
2020年の予測は一気に供給数(広さ)が減っています。元々シンガポールは土地が狭いのでそこまで多くの供給があるわけではありませんが、2020年はそれでも少ないです。ただ、これがコロナの影響なのかどうか、の関連性は正直不明です。
それと同時にチェックして欲しい部分は「空室率」です。2013年くらいから空室率が5%を超えてきている部分があります。ここは2013年、2014年に供給数が増えています。それに合わせて空室率が増えています。つまり、ここには明確に関連性があって、供給が増えた結果、空室率が増えています。これを埋めるには「供給に合わせて需要を作る」という点ですが、2013年頃のシンガポールの人口増加率は1%台でした。つまり供給に対して人口増加率が追いついていないという部分があります(シンガポールの人口は約560万人)。そのため空室率が上昇したわけです。
こういう状況が出てきて、さらにシンガポールの移住は年々厳しくなってきていることからも供給を増やす理由が正直ないとも言えます。ちなみにグラフに出ている「Net Absorption」は「実質賃貸契約面積」とも言われる言葉でして、「表に出ている誰でも借りられる場所」という意味で考えてください。
ただ、2015年は借りられる面積がマイナスになっているので、この辺りの調整は難しいですね。
かと言って、不動産の流動性がなくなれば、「移動の自由」がなくなり、それこそ住みにくい社会になってしまいます。なので、ある程度の供給と空室率がないと流動性が担保されません。
シンガポールの不動産マーケットはコロナによって大きな変化があるか?と言われると、そもそもの人口動態と土地の狭さがあるので変化は少ないと思っています。局地的に値段が下がることはあったかもしれませんが、大きく見てほぼ関係ないと思っています。
コロナは関係なしに「人口動態」と「供給と需要の関係」から、シンガポールの不動産マーケットはある程度予測ができます。その上で、やはり不動産投資という点では魅力度に欠けると思います(そもそも外国人が買える物件が少なすぎますし、高すぎますが・・・)。それは流動性がそこまで大きいわけではないからです。やはりシンガポールは不動産投資ではなくて、金融面から掘り下げて投資案件を見ていった方が良いと面白い国だと思います。
次回はASEANで一番感染者数が増えているインドネシアを取り上げたいと思います。インドネシアの不動産マーケットが今後変わる可能性があります。その辺りにフォーカスしていきたいと思います。