エイリックの田中です。
2021年早々に日本国内でも感染爆発が起きており、不安な中でのスタートを迎えました。今回は前回の続きということで引き続きタイの経済状況、不動産状況について書いていきたいと思います。
図1をご覧ください。
図1:タイのGDP成長率推移(1990年〜2021年)*2020年と2021年は予測

出典:International Monetary Fundよりエイリック作成
2021年の予測は2020年末時点で5.4%のプラス成長と見込んでいますが、正直わかりません。2020年の数字も速報値ベースであるため予測となっていますが、このマイナス幅は1998年のアジア通貨危機と同等のマイナス成長になります。
タイの場合、アジア通貨危機で非常に大きなダメージを受けており、この時は機関投資家によるバーツ売りが震源となっています。つまり、今回のコロナとは全く原因が違います。タイ政府も金融体制においては通貨危機の時から教訓を得て、金融政策に関してはかなり慎重になっています。
ただ今回は経済を完全にストップさせた形でのマイナス成長になります。非常に外部要因が強いものですので、逆を言えばコロナが収束すれば経済は再浮上すると見込まれていますが、いつ終わるのか?という部分が焦点になるでしょう。
同様に不動産マーケットにおいても新規の開発に関してはグレードが低い物件、また郊外、戸建てが中心となっており、都心部の高級物件に関しては慎重な動きを見せています。
図2:新規コンドミニアム販売数推移(2020年第二四半期まで)
図2を見てもらってわかる通り、2020年に入って一気に販売数が減りました。タイは非常事態宣言の延期を何度も行っているため、おそらく2020年全体で見てもかなり厳しい数字になっていると想定されます。
情報元であるナイトフランク・タイランドによると、2020年第二四半期末時点でバンコクのマンションの供給数は約63万戸となっています。2020年第二四半期に販売されたのは4,022戸の新規コンドミニアムで、昨年対比で73.2%の減少となっています(昨年は14,988戸の販売)。また第二四半期で販売されたコンドミニアムの70%以上がグレードCであり、平均平米単価は8万バーツから10万バーツまでの物件がほとんどでした。この価格で販売できるというのは、グレードCだとしても結果的にバンコク郊外がほとんどであるという結果になっています。
特に各デベロッパーも高級コンドミニアムは販売せずに、2020年は郊外や戸建てを中心に実需向けに販売されたものがほとんどであり、またコロナの影響でソーシャル・ディスタンスや感染対策という点も含めて、高密度の都心部よりも郊外のある程度大きめの実需が売れているみたいですが、そもそもの物件数が多いわけでもなく、格差が広がっている現状においては決して良い状況ではないと言えるかもしれません。
ただ、一方で各デベロッパーにおいても、このダウントレンドになっているタイ不動産市場に対して様々なプロモーションを仕掛けています。ですので、実はマーケットに出てこない動きが現地では行われています。具体的には価格として20%-30%引きや早めに決済することによる特典をつける、家具・家電などをつけるなどのプロモーションが積極的に展開されています。
特に中国・香港・台湾などの投資家に向けたキャンペーンを大々的に行っている企業が多いです。日本向けにはほとんどキャンペーンがなくて残念ですが、渡航制限がかかっている中どこまでこのキャンペーンが有効なのか、そこはまだなんとも言えない状況です。
次回はもう少しタイの不動産マーケットについて深掘りしていきます。是非お楽しみに。
それでは今回はこの辺りで終わりたいと思います。