エイリックの田中です。
前回までミャンマーの歴史や経済について書いてきました。ミャンマー最終章としては、この軍事クーデターが引き起こす影響を考察していきたいと思います。
まず、このクーデターの背景として、元々2020年11月に行われた総選挙では国民民主連盟(NLD)が、2015年の連邦議会総選挙を上回る396議席を獲得し、改選議席476議席のうち8割以上を獲得して圧勝しました。
しかし、この総選挙において新型コロナウイルス感染症が大流行しているタイミングでもあったため、国軍系の野党・連邦団結発展党(USDP)からは国民の安全が確保されないという理由から選挙の延期が主張されており、またNLD政権において最大の課題でもあるロヒンギャ問題に進展がないこと、それにより多数のロヒンギャには不法移民として選挙権が認められなかったほか、少数民族政党が地盤とする一部地域の投票が治安上の問題を理由に取り消されたため、100万人以上が投票権を剥奪されたと主張していました。
国際社会からは総選挙自体が平和的に行われたことが評価された一方、恣意的な投票取りやめが批判されるなど、選挙の公正性をめぐって懸念の声が挙がっていたのも事実です。
このような背景があった中で、総選挙で敗北を喫した国軍とUSDPは総選挙に不正があったとして抗議を行い、軍の支持者からは選挙の調査を求める声が出てきました。軍としては2021年1月26日にクーデターを示唆したとのニュースが流れましたが、選挙管理委員会は総選挙が公正かつ透明に行われたとの見解を発表し、それに追随するように国連やアメリカ、EUなども選挙結果の尊重を軍に求めるように声明を出しました。
結果的に2021年1月28日に政府と軍の間で事態打開に向けた話し合いがもたれ、その中で軍は票の再集計や議会の開会を延期するよう求めたが、政府側は拒否したことがきっかけとなり、今回の軍事クーデターが起きたと見られています。
選挙に不正があったかどうか、ここに関しては何とも外野の身分では言えませんが、事実として軍事クーデターが起きて政権奪取をしたのですから、国際世論としては非常に厳しい見方をされています。また現段階(2021年2月中旬)においても抗議の声は止まず、インターネットが遮断されていたり、街中の至る所でデモが繰り広げられたりしています。このような状況のため、先進国を中心に今回の軍事クーデターに対しては批判的であり、アメリカはミャンマー国軍の幹部に対して制裁を加えると発表しています(2021年2月10日)。日本でもキリンホールディングスがミャンマー企業との合弁を解消したと発表がありました。
このように今後、先進国から非難を浴び続ける状況であれば、当然ながらミャンマーに投資しようという国が減り、一気に経済状況が悪くなる可能性があります。コロナ禍で世界が厳しい状況の中で、今回の軍事クーデターは残念ながら賛同を得られにくいのは確かでしょう。
2010年にテイン・セイン大統領(当時)が民政移管したのも、経済制裁が厳しくて国内経済が疲弊していたからであったと言われています。また同じ道を繰り返すのか、そう思わざるを得ません。
一刻も早く平和的解決を望むと同時に、成長の実感を噛み締めつつあるミャンマーだっただけに、早く落ち着いて欲しいと思います。
最後に、ミャンマー国民の多くが未だ不安を抱えて過ごしています。皆様の安全を祈念し、希望の光を持ち続けて欲しいと心から願います。
まだまだ成長途中の国です。
ぜひ皆様もミャンマーを注視して欲しいと思います。