田中 圭介の不動産投資コラム

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

No.75 ASEAN不動産投資の失敗事例 〜プレビルド投資の失敗 その1〜

エイリックの田中です。

前回は3回に渡って「ASEAN不動産投資の成功事例」をお届けしてきました。しかし、当然ながら「成功事例」ばかりではありません。私の体感値ではありますが、おそらく7割程度の投資家が「失敗」と感じている気がします。

もちろん、投資ですので良いこともあれば悪いこともあります。売却タイミングによって成功と失敗が分かれるということもあると思います。基本的に不動産投資ですし、人口が伸びているASEANエリアへの投資は「長期投資」が前提だと私は思っています。長期投資であるがゆえに、早々簡単に成功と失敗は語れないと感じていますが、それでも「失敗」と感じている方が多いのは事実です。

その「失敗」から学ぶことは多いので、今回は「失敗」について書いていきたいと思います。現在、コロナ禍ということもあり、海外投資家はなかなか積極的に動けないと思います。また今までとマーケットの動きが違う状況になっているのも事実です。その辺りも含みつつ、失敗事例と対策を見ていきたいと思います。

■失敗事例 その1
タイ:プレビルド投資の失敗例
購入時期:2014年9月
売却時期:2016年3月(2016年1月竣工)
物件:バンコク中心部のコンドミニアム 1Bedroom
購入時価格:約3,000万円(頭金900万円支払済)
売却時価格:約2,200万円
損失:約800万円(手数料・税金等は考慮していません)

2014年にバンコクに行かれた時に、日本人投資家の方は現地の不動産会社から提案されたこの物件に飛びついたそうです。その時の謳い文句が「プレビルドで頭金30%さえ入れておけば1年か2年で1.2倍-1.5倍くらいには値上がります。手付金(頭金)だけ入れておいて、竣工前に売却すれば実質900万円の投資だけで2倍の利益が見込めますよ!そこまでフォローしますので。」という謳い文句だったそうです。

具体的に言うと、物件価格自体は3,000万円だとしても竣工するまでに2年ほど時間があります。つまり、3,000万円全て支払うのは2年後になります。その前に手付金として30%ほどの頭金だけでこの物件の権利を購入することができます(物件によって頭金の金額は変動します)。

そして、実際に竣工される2年後の間に3,000万円が仮に1.2倍に値上がりしていたのであれば、3,600万円の価値があるということです。3,000万円を支払う前に転売できれば、お金の動きだけでいうと、900万円の頭金だけで、600万円の利益が2年以下で得られるという話です。

もちろん、これは嘘ではありません。前回のベトナムのプレビルド投資で成功事例を書きましたが、内容自体は本当にあり得る話ですし、ローカルの投資家もこの方法をよくやっています。

しかし、この投資方法には「決定的なリスク」があります。それが何かわかりますか?

答えは「期限が決まっていること」です。
意外とここを理解していない人が多いです。もちろん、値段が上がらない、思った価格で売れないというリスクももちろんありますが、それ以上に「期限が決まっていること」の方がリスクは大きいです。

このプレビルド投資というのは、「少ないお金(頭金のみ)で多くの利益を得る」手法ですので、基本的に「物件を購入しない」が前提になっています。つまり、そもそもレバレッジを効かせたかなりギャンブル的な買い方になります。

本来であれば、物件を購入できる余力があり、もし価格が上昇しているのであれば売却しても良い、というのがスタンダードな考えですが、プレビルド投資に特化していくと、「いかに少ない予算で大きな利益を取るか?」に目が向きます。これが失敗する引き金にもなります。

この投資家さんは、「2年くらいすれば絶対値上がりすると聞いた。しかし、もうすぐ物件ができるということで残額を支払えとデベロッパーから連絡があり、元々購入する気はない。なんとかして欲しい。」という相談を私に持ちかけてきました。

私自身もこの物件のことは知っていて、非常に良い物件だったので、「そのまま購入した方が良いですよ」と伝えましたが、どうやら「投資部分」にしか頭がないみたいで、「そんなお金はない」という話でした。
また購入した現地の不動産会社に何度も催促をしているが、「まだ売れていない」の一点張りで埒が明かないから私に相談しにきたという内容でした。

正直申し上げると、この物件は確かに「投資対象物件」のような扱いになっていました。非常に良い物件なので、登記をして自分の物件にしてから、ゆっくりと売却に向けて動いた方が良いと私は思っていましたが、そんなことはお構いなしに、タイの不動産の悪口を言われていました。

結論から言うと、頭金900万円を少しでも取り返して、損切りする形でタイ人に購入してもらいました。私も現地のデベロッパーや仲介会社さんにお願いして色々と動いてもらいました。

この例はプレビルド投資をする人にとっては非常に参考になる話なので、次回もこの話を続けます。

【このコラムの著者】

田中 圭介

1979年兵庫県生まれ、関西学院大学経済学部卒。 新卒で外資系製薬メーカー入社後、出版社を立ち上げる。 2005年より大手不動産ポータルサイトにて営業責任者を5年以上歴任した後、2011年タイにて現地法人の立ち上げ、現地不動産ポータルサイトを立ち上げた経験を持つ。 在タイ時代から数多くの人脈を持ち、ASEAN各国を駆けずり回る。 現場主義を信条とし、自身の経験や知識を元に投資家や企業のサポートを行う。 主な著書に「ASEAN不動産投資の教科書」など3冊。

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