田中 圭介の不動産投資コラム

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

No.77 ASEAN不動産投資の失敗事例 〜プレビルド投資の失敗 その3〜

エイリックの田中です。

プレビルド投資の失敗について書いてきました。ASEAN不動産投資をされて「失敗した!」という人の多くがプレビルド投資の失敗です。話を聞いてみると、ほとんどの方が「きちんと理解されていない」「不動産会社の良い話しか聞いていない」というものでした。

もちろんプレビルドの成功事例もあるので、一概に言えない部分ではありますが、基本的には「日本に住む投資家はプレビルド投資で儲けるということを意識しない方が良い」というのが私のスタンスです。どうしても「売って欲しい」という「買い手」がいて、売り手が納得したら売っても良いと思いますが、最初から「プレビルド投資ありき」で話を進めると怖い話になります。不動産は金融商品と違って「買い手」と「売り手」がいて初めて成立する商品です。どうしても「人が介在する」商売なので、ここはきちんと理解して欲しいです。

さて、このプレビルド投資の失敗例ですが、前回前々回と書いてきましたが、その後の当該物件および投資家の状況を書いていきたいと思います。
その前にそもそもどういう投資だったか?ということをおさらいします。
また前回の図も合わせて掲載しておきます。

■投資家情報
タイ:プレビルド投資の失敗例

購入時期:2014年9月
売却時期:2016年3月(2016年1月竣工)
物件:バンコク中心部のコンドミニアム 1Bedroom
購入時価格:約3,000万円(頭金900万円支払済)
売却時価格:約2,200万円
損失:約800万円(手数料・税金等は考慮していません)

図1 : プレビルド投資の価格推移イメージ図

この投資家は上の図でいうと、1番価格が底の段階で売ってしまったという話です。しかし、「物件引き渡し時には残金を全て支払わないといけない」という絶対ルールがあるので、そのお金を用意できなかったから、でもあります。

ちなみに、この投資家が購入された物件はタイ人が購入して、そのタイ人は竣工後1年ほどで3,500万円という価格で売却されたそうです。私自身、何度もこの日本人投資家に「登記した方が良い」と伝えましたが、お金がないことには仕方ありません。色々と不動産会社に相談をして何とかタイ人に購入してもらったのですが、このタイ人からすると「美味しすぎる案件」だったと思います。彼は2,200万円で仕入れて、3,500万円で売却したので、1年半ほどで約1,300万円を儲けたわけです。このタイ人が売却した先は住宅ローンを使ったタイ人だったそうです。

実際、竣工前の「投げ売り物件」というのはASEANの中では割と多いです。物件を購入するお金がなくて、頭金だけは支払っているというケースは多いです。デベロッパーもそこは承知済みで、竣工時に全戸のうち5%から10%は「資金不足による権利放棄」物件が出てきます。ちなみにデベロッパーではそれらの物件を「リターンユニット」と呼びます。このリターンユニットは当然ながらデベロッパーのものになりますが、既に頭金をもらっているので、大幅な損はなく相場の金額でまた販売されます。

このような状況をきちんと理解した上でプレビルド投資は行うべきです。
逆を言えば、「竣工前の投げ売り物件」を購入するのが1番良いのではないか?
と思われた方もいらっしゃるでしょう。実際、そういう投資家もたくさんいます。しかし「(物件を一括で買えるだけの)現金を用意しないといけない」ため、決して数は多くありません。現金をお持ちの方であれば、この「投げ売り物件」投資は非常に優位に働くケースが多いです。価格交渉も強気でいけますので、上述したタイ人のように大きく儲けが増える可能性があります。

ただ、基本的には不動産というのは「実物」であり、立地と物件価値が重要な資産です。投機的なプレビルド投資というのは今後のASEANでは制限されていく方向になると思います。特にコロナ禍の中で、多くのデベロッパーが苦境に喘いでいます。今までは煽りに煽っていた企業やマーケットもかなり落ち着きを見せてきました。ですので、あくまで中長期で判断をして、ASEANの成長とともに不動産価値も上がっていくという本来の姿で判断した方が結果的に良いと思います。

さて、次回はプレビルド投資ではなく、違う失敗事例について書いていきたいと思います。

【このコラムの著者】

田中 圭介

1979年兵庫県生まれ、関西学院大学経済学部卒。 新卒で外資系製薬メーカー入社後、出版社を立ち上げる。 2005年より大手不動産ポータルサイトにて営業責任者を5年以上歴任した後、2011年タイにて現地法人の立ち上げ、現地不動産ポータルサイトを立ち上げた経験を持つ。 在タイ時代から数多くの人脈を持ち、ASEAN各国を駆けずり回る。 現場主義を信条とし、自身の経験や知識を元に投資家や企業のサポートを行う。 主な著書に「ASEAN不動産投資の教科書」など3冊。

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