田中 圭介の不動産投資コラム

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

No.89 増加するASEAN中間層の動き 〜その3 ASEAN不動産比較〜

エイリックの田中です。

ASEANの中間層をテーマに今月は書いてきましたが、コロナ禍でありつつ中間層は成長している、そして中長期で見るとASEANは期待できると書いてきました。

その影響を受けて、ASEAN各国の不動産を比較していきたいと思います。データがなかなか揃いにくい部分ではあるので、予測値として見ていただければ幸いですが、まずは図1をご覧ください。

図1:高級コンドミニアムの価格推移

出典:ナイトフランク等、各国データよりエイリック作成

2012年9月を100とした時の指数グラフとなります。これを見ていただいたら分かりますが、コロナ禍と言えど、価格だけでいうとそこまで落ち込んでいません。ただ、これはあくまで「販売している価格」であり、「実際に購入された価格」ではないので注意が必要です。あくまで高級コンドミニアムということで、イメージで言うと30万USD(約3,300万円)以上の物件になります。価格は少しだけ下がっているだけかもしれません。しかし、重要なのは価格よりも「販売数」であり、販売数のデータが取れなかったので見えなくなっていますが、現地からヒアリングをしていると「ほとんど動きがない」状況です。

外国人投資家がいなくなっている現在、高級コンドミニアムの価格はそこまで下がっていないのですが、かといって、「今のまま売れる」と思ったら大間違いです。そもそも動きがない状態で「止まっている」と認識した方が良さそうです。この辺りはグラフのマジックですので気をつけてください。

一方で少し顕著に数字として出てきているのが、賃料に関してです。
賃料というのは売買価格と違い、ある程度の相場が生まれてきます。つまり、売買ほど値動きが大きいわけではありませんが、逆を言うと「下がることも少ない」ということです。

それで現地側と色々とヒアリングをしていたデータがまとまったのでご覧ください。図2となります。

図2:ASEAN各都市のコンドミニアム賃料推移

出典:CBRE等各社データと現地ヒアリングによりエイリック作成

このデータが100%正しいとは言いませんが、ある程度的を得ている結果となりました。つまり、コロナ禍に入るまでは、ゆっくりと賃料は各都市で上昇していたのですが(上昇していない都市もあります)、2020年3月を境にゆっくりと下降線を辿っています。都市によっては5年前の水準を下回って貸し出しされている部屋もあるようで、不動産オーナーからすると利回りが取れなくなっている、そんな様子が見て取れます。

日本のようにコロナ禍における家賃補助のような仕組みが整備されているわけでもないので、この辺りは賃料に直撃しているのが理解できます。特に大きく賃料が下がっているのは、バンコクとプノンペンです。この2都市に関しては大きな特徴があります。
タイのバンコクに関しては、2010年頃から一気にコンドミニアムの供給数が増えました。外国人も多く住む都市のため、それなりに賃料も上昇していたのですが、コロナ禍でこれが逆回転してしまったという結果です。

一方でカンボジアのプノンペンはまさにこれからコンドミニアムが供給されようとしているタイミングでのコロナ直撃ということで、外国人が入ろうとしていたタイミングで賃料を値下げせざるを得ないという状況です。

その他の都市はまだ賃料水準で言えばギリギリを保っていると言えますが、長引くようであればじわりじわりと下げざるを得ないかもしれません。

このような状況が続くと「現地で借りられる人を増やす」、つまり「中間層の伸び」が非常に重要になってきます。タイも中間層が増えてきていますので、物件供給数に合わせて、現地の人が住める水準まで賃料が落ちてくれば下げ止まりすると思いますが、如何せん物件価格が高いままですので、どうしても投資として考えると利回りは低くなると思います。カンボジアは中間層がこれから育ってくるので、少し時間がかかりますが、やはり外国人の力がまだ必要でしょう。

このように各都市でそれぞれの問題や課題があるのは確かですが、この辺りをきちんと見極めつつ、そして一刻も早く世界が落ち着きを取り戻せば、ASEANにおける不動産市場もまた成長曲線に乗ると思います。

ちなみにオフィス、商業施設、ホテル、そしてロジスティック関連に関してはまた違うマーケットになっています。この辺りは機会を見つけて書いていきたいと思います。

【このコラムの著者】

田中 圭介

1979年兵庫県生まれ、関西学院大学経済学部卒。 新卒で外資系製薬メーカー入社後、出版社を立ち上げる。 2005年より大手不動産ポータルサイトにて営業責任者を5年以上歴任した後、2011年タイにて現地法人の立ち上げ、現地不動産ポータルサイトを立ち上げた経験を持つ。 在タイ時代から数多くの人脈を持ち、ASEAN各国を駆けずり回る。 現場主義を信条とし、自身の経験や知識を元に投資家や企業のサポートを行う。 主な著書に「ASEAN不動産投資の教科書」など3冊。

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