エイリックの田中です。
移住を考えるなら避けては通れないのがビザです。各国のビザについて書いてきましたが、今回はマレーシア以外のビザについて書いていきたいと思います。
マレーシアのMM2Hが厳しくなる、ということは、「移住者が他国に流れる」ということでもあります。そういう意味で、移住者を積極的に取り入れようとしているのがタイです。またそもそも移住者に対してビザが取りやすいと言われている国がフィリピンです。今回はその2カ国のビザについて見てみたいと思います。
■タイのリタイヤメントビザとエリートビザ
◯リタイヤメントビザ
・リタイアメントビザは、タイに90日間滞在できるものと1年間滞在できるものがあり、タイのリタイアメントビザは退職者に発行されるビザのため、リタイアメントビザを取得した人がタイで働くことはできません。
またタイへの移住に際してリタイアメントビザを申請するには、以下の条件を満たしている必要があります。
– 満50歳以上
– タイ王国の入国禁止者リストに載っていない
– 過去、日本でタイの治安を脅かすような犯罪歴がない
– タイ王国の特定疾患(ハンセン病・結核・麻薬中毒・象皮病・第三期梅毒)ではない
– 日本国籍もしくは日本に永住権を持つ外国籍の方
– 80万バーツ以上の貯金、または月65,000バーツ以上の年金収入、または貯金及び収入の合計が80万バーツ以上ある方
◯エリートビザ
リタイヤメントビザは退職者に発行されるビザですが、タイにはもう一つタイの国家プログラム、タイランドエリートのメンバーに発給されるタイラインドエリートビザというものがあります。2003年にスタートしたタイランドエリートはタイに長期滞在を希望する外国人、タイと外国を頻繁に行き来する外国人に人気を得ています。
タイランドエリートの特筆すべき点は、タイの長期滞在を可能にするタイランドエリートビザの発給です。タイの法律でタイランドエリートメンバーだけのために認められたビザで「お金で買えるビザ」とも言えます。
主な得点は以下の通りですが、非常に細かく分かれているため、HP等で確認をされるのが良いと思います。
1 5年、10年、20年の滞在を実現
2 毎回入国の度に1年間の滞在許可
3 何度でも入出国可能
4 申請・受け取りが簡単
5 入国時に空港でビザ受け取り可能
*また現在コロナ禍にあるため、タイでは「スマートビザ」が検討されています。これが実現すれば外国人でも土地が購入できるという内容なのですが、要件等はまだ決まっていません。ぜひチェックしてみてください。
■フィリピンのビザについて
フィリピンでは観光ビザを含めたくさんのビザがありますが、その中でも永住権に近いようなビザを3つご紹介します。フィリピンが人気なのはこういった受け入れしてくれるビザがあるというのも一つかもしれません。
◯SRRV(Special Resident Retiree’s Visa)
他国のリタイヤメントビザと比べ、若いうちから取得できる点が大きな魅力となっています。
【SSRVの特徴】
– 取得可能年齢:35歳以上
– 取得に必要な金額:供託預金として10,000〜50,000USドル
(日本円で約110万〜540万円)
– 取得に必要な滞在期間:30〜40日
– 住居の必要性:不動産を購入もしくは賃貸し、住所の確保が必要
– 滞在可能日数:無制限
– 滞在義務なし(出入国自由)、現地での就労も可能
– 更新:1年毎
◯クオータービザ
各国に対して年間50人分しか発給されていないのがクオータービザです。そのため取得が非常に厳しいのですが、もし取得できればメリットは大きい、そんなビザになります。
【クオータービザの特徴】
– 取得可能年齢:20歳以上
– 取得に必要な金額:供託預金として50,000USドル(日本円で約540万円)
– 取得に必要な滞在期間:30〜40日
– 住居の必要性:不動産を購入もしくは賃貸し、住所の確保が必要
– 滞在可能日数:無制限
– 滞在義務なし(出入国自由)、現地での就労も可能
– 更新:1年毎
クオータービザもSRRVと同様に供託預金が必要となりますが、クオータービザの場合は、ビザの取得が完了してしまえば預けている50,000USドルを自由に使うことができます。この点は、供託預金を投資に使うか銀行に預け続けなければならないSRRVと大きな違いです。
ただし、年間50人という取得者制限もあり、クオータービザの入手は極めて困難かつ複雑と言われています。なかなかレアな案件とも言えるでしょう。残念ながら私はこのクオータービザを持っている人にお会いしたことはありません。
◯APRV(APECO特別永住権プログラムビザ)
これはある種かなり独特なビザになります。フィリピンの開発事業に投資することでビザが取得できるというものです。
【APRVの特徴】
– 取得可能年齢:制限なし
– 取得に必要な金額:事業開発援助費20,000USドル+登録手数料150万円(日本円で合計約370万円)
– 取得に必要な滞在期間:5日
– 住居の必要性:不要
– 滞在可能日数:無制限
– 滞在義務なし(出入国自由)、現地での就労も可能
– 更新:5年毎
SRRVやクオータービザを取得するには、フィリピンに30〜40日間の連続滞在が必要とされていますが、APRVの場合は5日間の連続滞在だけとなります。
加えてSRRVとクオータービザは現地の住居・住所が必要になりますが、APRVを取得するとAPECO内のリゾート施設を住所として申請できるため、住居の確保をする必要もありません(フィリピン国内の他の場所に住居を確保することで住所を移転することも可能)。
良いこと尽くめのようなAPRVですが、デメリットは資金です。上述した通り、開発援助費用等で370万円前後が必要ですが、これはSRRVやクオータービザの供託預金とは異なり、投じた資金は永住を辞めたとしても戻ってきません。
つまり、370万円ほどで「永住権を買う」という感覚に近いかもしれません。
ただ、決して高すぎるわけではないので、このビザも非常に人気になっています。よって、今後このビザが発行されるか、もしくはマレーシアのようにいきなり値段が上がるなどのことは考えておいた方が良いと思います。
マレーシアのMM2Hが改変された通り、ビザは常に流動的です。今回の情報は2021年10月時点での話ですが、コロナ禍でMM2Hが変わったように、もしかすると2022年で変わる可能性があります。こればっかりは正直なんとも言えないので、常日頃からの情報収集が非常に重要だと思います。
ただ、日本だけでなく新しい国でも暮らせるというのは非常に魅力的です。単純な旅行や出張だけでなく、現地で生活をしてみるというのはとても豊かな人生だと私自身の体験からも感じるわけで、ぜひビザについて情報収集して欲しいものです。