エイリックの田中です。
気がつけば2021年も残り1ヶ月。今年はずっと新型コロナウイルスとの戦いに明け暮れた1年となりました。そんな中でも東京ではオリンピックが開催され、そして年末に向けて日本においては感染者数も激減し、2022年に向けて明るいニュースになってきていると感じています。
来月のコラムでは2021年ASEAN不動産の振り返りを書いていきたいと思いますが、今月はこの2021年でもASEANに進出していった日系企業や経済事情などについて書いていきたいと思います。
■日本の投資先は?
日本において1番の投資先はAPAC(アジア太平洋地域)になっています。アメリカやヨーロッパを上回る水準になっています。図1をご覧ください。
日本銀行が出しているグラフですが、2014年〜2020年の「日本の対外直接投資残高」の推移になります。
これを見るとAPAC地域の残高は2014年末の49兆円から2020年末で64兆9,000億円に達し、北米や欧州を上回る水準になっています。もちろん、北米も60兆6,000億円、欧州も50兆5,000億円へと増えているので、北米と欧州は依然日本にとって重要な相手先と言えるでしょう。
そんな中でAPACの伸びが顕著であり、その中でもインドとASEANが非常に大きいと言える。ここから読み取れるのは、日本企業のAPAC投資の増大要因はASEANにある、といっても過言ではないと思います。
図1 日本の対外直接投資残高の推移(単位:兆円)
出典:日本銀行
さらに2020年末時点で中国、ASEAN、インドへの投資残高について図2をご覧ください。中国への投資残高においては、様々な業種からバランスよく投資されていますが、ASEANは国によって業種のバラつきが非常に大きくなっています。
総額では、シンガポールが9兆6,258億円と最も大きく、金融・保険業(2兆6,865億円)や卸売・小売業(1兆7,061億円)など非製造業が中心の構成となっています。これはシンガポールだからこそ、とも言えます。香港が難しい立ち位置にいることからシンガポールへの投資が加速しているようにも思えます。
また次点に来るタイも依然として日本からの投資が多い国の一つです。ASEANにおいてはシンガポールとタイに投資している姿が見て取れます。そこに勢いづいているのがインドネシアです。インドネシアはコロナで大きな被害を出していますが、人口2.5億人以上のマーケットは魅力的であり、日本からも4兆円近くの投資が行われています。
ついでベトナム、マレーシア、フィリピンと続きますが、ベトナム以上にインドに投資が集まっているのが特徴的と言えるでしょう。世界最大の人口を誇る民主主義国家のインドへの期待感が数字にも表れていると言って良いかと思います。
図2 日本の対外直接投資残高(2020年末)(国別)
出典:日本銀行
次は、APACの地域向け対外直接投資残高を業種別・国別にみてみたいと思います。図3をご覧ください。
いずれの業種でも、中国が占める割合が大きくなっています。ただ、今後中国との関係性の中で中国依存にリスクを感じる企業が増えているのも事実です。それらの企業がASEANへと投資を拡大していくと思われます。
図3 日本のAPAC向け対外直接投資残高
出典:日本銀行
次回はさらに数字を使って細かく見ていきたいと思います。