田中 圭介の不動産投資コラム

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

No.94 日系企業のASEAN進出事情 その2

エイリックの田中です。

前回から日系企業のASEAN進出について全体から考察してきました。不動産に直接関係がないかもしれませんが、日系企業がどこに目をつけていて、どういった動きをしているかを知れば、今後の投資戦略に役立つと考えています。
少し細かい数字が多くなってきますが、ぜひ理解していただきご参考にしてもらえれば嬉しいです。

■ASEANへの投資が加速している

JETROが出しているデータを元にここでは考察を深めていきたいと思います。図1をご覧ください。

日本銀行が2021年10月8日に公表した2021年上半期(1~6月)の「業種別・地域別直接投資」によると、当期の日本の対外直接投資(ネット、フロー)は9兆4,852億円でした。この数字をよく見てみると前年同期比で37.4%増と非常に大きく伸びているのがよくわかります。
その構成比でみると、北米が34.6%、APACが33.3%、欧州が22.6%となっており、APACのうち、ASEANが67.1%増の2兆222億円と大幅に拡大しています。しかし、一方で中国は29.8%減の4,781億円、大洋州は92.4%減の1,335億円と縮小しています。ASEAN移行が加速していると言っても過言ではありません。

また、ASEAN各国でみると、特にシンガポールへの投資は前年同期比3.5倍の1兆2,334億円と拡大しています。これは日本ペイント社がパートナーのウットラム・グループからアジア地域の合弁会社の持ち分追加取得などを実施(総額約1兆2,000億円)したことが影響したと思われますが、それでも大きな投資額となっています。

タイは2,537億円とASEANでは投資額が2番目に大きかったのですが、伸び率は前年同期比8.9%減とやや縮小傾向です。ASEANで大きく伸びた国はマレーシアとベトナムでしょう。マレーシアでは1,805億円の投資が行われ、前年同期比38.1%増と大幅に増えました。ベトナムも4.9%増の1,419億円と増大しています。業種別に見ても中国からのシフトといった業種が目立つような数字になりました。

図1 日本の対外直接投資(地域別、ネット、フロー)
*(単位:億円)(△はマイナス値、―は値なし)

出典:日本銀行からJETRO作成のものを引用

■ASEANからの収益は減少

ASEANへの投資が加速している、と言っても残念ながらASEANからの収益に関しては減少しています。コロナによる影響もあったかと思いますが、ここは中国に軍配が上がりそうです。この辺りのバランスが非常に難しく、日系企業としても頭を悩ませているところになります。
図2をご覧ください。

図2 日本の対外直接投資収益(地域別)(単位:億円)(△はマイナス値)

出典:日本銀行からJETRO作成のものを引用

全体的に見ると2021年上半期の日本の対外直接投資収益は8兆4,553億円であり、前年同期比18.1%増の伸びになっていて、構成比をみるとAPAC地域は42.3%を占め、北米25.7%、欧州23.7%を上回っています。そのAPACの中でも、ASEAN14.4%と中国14.0%が中心になっています。

そのASEANの中で最も直接投資収益が大きい国はタイです。とはいえ、前年同期比7.4%減の4,380億円と減少傾向にあります。その次がシンガポールですが、シンガポールも9.0%減の4,087億円となっています。
今後期待できるのがインドネシアです。前期比68.5%増とコロナ禍でも順調に収益を上げていたと言えるでしょう。

日系企業がASEANシフトを開始しており、このポートフォリオが今後どう変わってくるか非常に楽しみですが、まだまだ課題感がありそうです。またシンガポール、タイ、インドネシア、ベトナム、マレーシアあたりへの投資になってくると思いますが、フィリピン、カンボジア、ミャンマー、ラオスといった国への投資がまだまだ弱く、この辺りの底上げが今後の課題感になってくるかもしれません。

次回は実際の具体名を挙げてASEANに進出していった企業を取り上げたいと思います。

【このコラムの著者】

田中 圭介

1979年兵庫県生まれ、関西学院大学経済学部卒。 新卒で外資系製薬メーカー入社後、出版社を立ち上げる。 2005年より大手不動産ポータルサイトにて営業責任者を5年以上歴任した後、2011年タイにて現地法人の立ち上げ、現地不動産ポータルサイトを立ち上げた経験を持つ。 在タイ時代から数多くの人脈を持ち、ASEAN各国を駆けずり回る。 現場主義を信条とし、自身の経験や知識を元に投資家や企業のサポートを行う。 主な著書に「ASEAN不動産投資の教科書」など3冊。

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