田中 圭介の不動産投資コラム

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

No.98 2021年のASEAN不動産マーケット総括 その3

エイリックの田中です。

2021年最後のコラムとなります。来年こそは良い年になるよう期待したいですね。

さて、前回書いたASEAN高級コンドミニアムの下支えしている要因について掘り下げてみたいと思います。そして最後にASEAN不動産の2022年動向について書いていきたいと思います。

■ASEAN高級コンドミニアムを下支えしている3つの要因
1. 経済成長による中間層〜富裕層の厚さ
2. キャッシュ中心で購入している実需の強さ
3. ある意味マーケットが止まっている

1. 経済成長による中間層〜富裕層の厚さ
2005年〜2015年の10年間でリーマンショックがあったとは言え、平均してASEAN全体の経済成長は5%を超えています。この経済成長を経てASEAN各国の中間層や富裕層が増えてきました。今、現地での不動産購入者はほとんどがローカルです。海外投資家比率はせいぜい10%-20%程度です(一部のリゾート物件などは除く)。

そう考えると彼らローカルは投資目的というよりも実需に近しい感覚ですし、どちらかというと売り抜けるというよりは、買い支えて価値をあげようという動きになっていきます。これがASEANの不動産価格がそこまで下がらなかった要因ではないかと思います。

もちろん大きく失敗している物件もあれば、値下げをしている物件も存在します。海外投資家や海外のお金を当てにして建設され販売された案件は苦戦していますし、マーケットを無視したような価格の物件は淘汰されている、という意味では下げ要因ですが、現地できちんと評価されているような物件は決してマイナスになっているわけではありません。この辺りはマーケットに非常に忠実だなと思います。

2. キャッシュ中心で購入している実需の強さ
また昔の日本のようなバブル崩壊にならないのは、ここにも要因があると思います。つまり過剰な住宅ローンや銀行融資を使い倒す前にコロナが来てしまった、という感じです。

実際、ASEAN諸国でも住宅ローンは存在しますし、不動産開発においても銀行融資は当然存在します。しかも3%-5%と今の日本と比べると非常に高い金利が課せられています。ただし、現地の人々がフルローン、オーバーローンで無茶をして購入しているか?無茶して開発しているか?と言われると、もちろんそういう方や企業もいますが、案外そこまで多くないというのが現地の感覚です。

この辺りは日本のバブル時代と違って、堅実なのかわかりませんが、いずれにせよマーケットを崩すほどではなかったという感覚です。あくまで仮説ですが、コロナによって痛手を被っているのは確かですが、一方では不動産マーケットをクラッシュさせるほどの行き過ぎたやり方まで至ってなかった、という結果論かなと思っています。

3. ある意味マーケットが止まっている
そして最後の「マーケットが止まっている」ということですが、これは上記の1と2を考えると当たり前な帰結かもしれませんが、買った後に売るという行為がほとんど起きていません。現地では当然ですが新しい物件が供給されていますが、高級コンドミニアムの販売は正直減っていて、郊外物件や地方での開発、ローカル向けの実需物件がほとんどです。

そのため高級物件に動きがなく、みんな大人しくしている、というのが本音だと思います。そのため、「値上がりしているわけでもなく、値下がりしているわけでもなく、何もしていないから価格は横ばいです」というのが案外本音なのかもしれません。

■ASEAN不動産マーケットはこれからが勝負
さて、2022年のASEAN不動産市場はどうなっていくでしょうか?
コロナの状況次第ですが、さすがに2022年はゆっくりと海外からの投資が増えてくると思います。そうなってくるとまた動きが出てくると感じます。

特段不動産価格が安くなっているわけではないので、急激な成長というのは出てこないと思いますが、微増していくというのが私の推察です。ただ高級コンドミニアムに関しては既存物件との戦いになってくると思います。またこの状況に我慢ができないオーナーが割安で売り出しているという話もあるので、ここに関しては現地で足繁く情報を集めていくしかないのかなと思います。

2005年前後からASEAN不動産が世界的に注目され出してきて、2009年のリーマンショックで落ち込みはしたものの回復は早く、2010年以降着実に成長してきました。しかし2018年頃を境に踊り場を迎えたなと思います。

そして2020年、世界的なパンデミックが発生し一気に市場が止まりました。強制的にストップが入ったこのマーケットはコロナが終わった後が勝負になってくるでしょう。世界の投資マネーがどこに向かうか?リアルな不動産市場、そしてASEANに流れてくるのか?そこがポイントになってくるかと思います。

もちろん世界を見渡せば、不動産で言うと先進国とインドやアフリカなどの新興国にお金が入ると想定されており、ASEANが少し中途半端な位置にいるとう文脈もありますが、ただこの10年ほどである程度安定してきた部分があるので、中程度のリスクマネーとしてのASEANという選択肢は十分あると思っています。

以前のような大幅な上昇やキャピタルゲイン、高利回りというのは求めにくくなってきていますが、より安定してより安全な不動産マーケットにシフトしていくという立ち位置になってくると考えています。

2022年、ASEANに行けるようになって、少しでも活性化したマーケットを見せてくれることを期待しています。

少し早いですが、皆様良いお年をお迎えください。
2022年は海外で楽しく過ごせることを期待して。

【このコラムの著者】

田中 圭介

1979年兵庫県生まれ、関西学院大学経済学部卒。 新卒で外資系製薬メーカー入社後、出版社を立ち上げる。 2005年より大手不動産ポータルサイトにて営業責任者を5年以上歴任した後、2011年タイにて現地法人の立ち上げ、現地不動産ポータルサイトを立ち上げた経験を持つ。 在タイ時代から数多くの人脈を持ち、ASEAN各国を駆けずり回る。 現場主義を信条とし、自身の経験や知識を元に投資家や企業のサポートを行う。 主な著書に「ASEAN不動産投資の教科書」など3冊。

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