寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の「失敗」を分析する。

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

2.レントロールの罠

失敗についてのコラム。今回から具体的な事例や防止策の説明に入っていきます。

前回のコラムにも書いたように、不動産投資には様々な形の失敗があります。失敗の定義が「自分の想定より悪い結果しか得られなかった」ということであれば、最もありがちなパターンが「レントロール」についての失敗でしょう。レントロールとは、その物件から得られる家賃の明細表のことで、不動産を購入する際には必ず確認しなければならない資料です。
購入についての資料で最初に確認するのは「物件概要書」といって、物件価格や所在地、面積や権利関係などが書かれたものですが、レントロールも物件概要書と同じくらい重要な資料です。

ただし、物件概要書が基本的に「客観的な事実のみ」が書かれている資料であることと違い、レントロールはそうではありません。この違いが分からず、物件概要書や登記簿と同じような「客観的な事実」が書かれた資料だと思い込んでしまうことが、失敗の始まりではないかと思います。

 ~ 昨年購入した区分マンション1戸が順調に運営できていることに気をよくして、一棟ものマンションを購入した投資家さん。20戸中5戸が空室だということで融資審査は難航するかと思われましたが、販売業者さんが半年間の家賃保証を付けてくれたことで金融機関の評価も上がり、見事フルローンが付きました。

  しかし、5戸の空室は頑張っても1戸しか埋まらず、逆に古くから住んでいた入居者が退去したので保証期間が終わっても入居率は横ばい。出ていった部屋は10年以上の居住期間中に家賃を下げることがなかったので、購入前に検討したレントロールに記載された「想定家賃」より1万円も高いままでした。
  入居率は変わらなくても、収入はダウンです。

  このままでは危ないかもしれない・・と、自分で地元の賃貸仲介会社を訪問してみた投資家さんは、驚愕の事実を目の当たりにするのでした。

  「この家賃って誰が決めたの?こんなんじゃ絶対決まらないよ・・」

  誰か決めたの・・って、レントロールに「想定家賃」って書いてあったし、これで実際1部屋決まっているし・・・まあ、フリーレントを2ヶ月付けたって業者さん言ってたけど・・・。

  その地元仲介会社さんの査定によると、敷金1礼金ゼロ・相場の広告料を払ったとしても、レントロール記載の想定家賃より5千円低い家賃が相場とのこと。今埋まっている部屋の平均家賃に比べると、1部屋1万円以上も下げることになりそうです。
これで利回りを計算しなおすと、当初の予想より2%近くも低くなり、仮に全部屋が査定通りの家賃で入居されたとすると、入居率90%でもキャッシュフローがマイナスになってしまうことが分かったのでした。

レントロールを盲信することでの失敗事例を創作してみました。
上記のお話自体はフィクションですが、似たような失敗をされている方は少なくありません。レントロールには様々な罠があるからです。

まず、レントロールに記載されている金額は、「現時点の入居者が払っている家賃」と、「根拠があるかどうかは分からない想定家賃」のみです。その想定家賃をもとに、販売業者さんが一定期間家賃を保証してくれることはあるかもしれませんが、実際にこれからお部屋を決める入居者さんが支払ってくれそうな相場家賃とは関係がありません。
業者さんは保証をしなければいけないのだから、想定家賃は手堅く低めの金額が設定されていると思いたいところですが、想定家賃(=保証家賃)が高いほど、金融機関からの評価が高くなりますので、物件を販売するために高めの保証家賃を設定する可能性もあるでしょう。

以前は、不動産投資に必要な資料をキレイに揃えてくれる業者さんや、販売物件に一定期間の家賃保証をしてくれるような業者さんがほとんどなかったので、空室部分に「想定家賃」が記載されるようなことは稀であったのですが、最近はよく見かけるケースです。
何となく信用してしまいそうな想定家賃には十分注意して下さい。

また、レントロールには家賃のほかに「契約期間」が掲載されているものが多いです。
この契約期間をチェックしたところ、一番長くから住んでいる入居者でも一昨年からであることが分かったので、「じゃあ、この近辺の金額で今後も決まるだろうな」と勘違いしてしまうような失敗も多いです。
賃貸借契約は通常2年ごとに更新しますので、「契約期間」が去年とか一昨年からと記載されていても、直近の契約がその期間であるということしか分かりません。
最初に入居してから既に10年以上経過しているということもあり得ますし、レントロールに記載されている契約期間が先月から始まっている入居者がいたとしても、実際にはここ1年以上新しい入居者が入っていないという状況かもしれないのです。
「契約期間=入居期間」ではありません。十分注意して下さい。

さらに、ここ数ヶ月で何部屋も決まっているような場合であっても用心して下さい。
現状の空室がかなり少なく、かつ数ヶ月のうちに何部屋も決まっているような場合は、何となく物件が上昇トレンドにあるようなイメージで安心してしまいがちですが、このようなケースは「スゴ腕大家さんによる、売却準備」かもしれません。

同じ物件であっても入居率が高ければ買い手が安心しますし、金融期間からの評価も高く出ることが多いので、結果的に高く売却できる可能性が高くなります。逆に入居率が低迷していると売値が下がることが多いですね。しかも、買い手であっても金融機関であっても、「現況の入居率」のみに注目してしまう傾向があります。
それを逆手に取って、「レントロール上の家賃が相場以上であっても値下げすることなく、短期間のうちに入居率を改善させる」という荒技に出る投資家さんもいます。過剰な広告料の支払いや異常に長いフリーレントを設定して入居を決めるテクニックですが、当然のことながら、こんな手法で高い入居率を維持し続けることはできません。

ですから、売却を見据えて短期間だけこういった無理をして入居率を上げ、あとはレントロールの罠に気づかない買い主に笑顔で引き取ってもらうという作戦です。
罠を見抜けなかった投資家さんは、引き渡し後に初めて賃貸借契約書で無茶なフリーレントの期間を知り、「今回も広告料4ヶ月頂けるのですか?」という仲介会社さんからの電話に愕然とするのです。

売主も仲介会社もウソは言っていません。
レントロールには、「自分で気づかなければ誰も教えてくれない」という罠がたくさん仕掛けられていますから、あらゆる資料の中でも特にしっかり精査するようにして下さい。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社ネクスト(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

他のコラム著者も見てみる

不動産投資家によっても違いは様々。
LIFULL HOME'Sが厳選した不動産投資家や専門家のコラムから色々な不動産投資スタイルを吸収してライバルに差をつけよう!

石川 和寿

シリーズ連載: 不動産会社のプロの意見

最新コラム: 賃貸のプロが教える入居者募集の6つのコツ

藤田 博司

シリーズ連載: 不動産投資家が次に着目している民泊投資とは

最新コラム: 民泊の準備で困ったこと

樗木 裕伸

シリーズ連載: 不動産投資を始める人のノウハウ

最新コラム: 不動産投資ローンと住宅ローンの違いと5つの金融機関の特徴

逆瀬川 勇造

シリーズ連載: 不動産投資を始める人のノウハウ

最新コラム: 不動産投資は常に融資との戦い?ローンの基礎知識や流れを解説

LIFULL HOME'S 不動産投資編集部

シリーズ連載: 不動産投資を始める人のノウハウ

最新コラム: 不動産投資で銀行融資を受けるには? 申込手順と審査ポイントを紹介

風戸 裕樹

シリーズ連載: 初心者のための東南アジア投資ガイド

最新コラム: 第2章 日本の不動産市場と海外投資(3)

金井 規雄

シリーズ連載: アメリカ・ロサンゼルスで不動産投資 7年で1億円

最新コラム: あとがき

橋本 秋人

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

最新コラム: 住宅メーカーのアパート戦略と不動産投資家のとるべきスタンス ~大和ハウス、積水ハウス、大東建託の考察~

LIFULL HOME'S PRESS

シリーズ連載: HOME'S PRESS編集部

最新コラム: 新たに始まる「住宅ストック循環支援事業」は特色のある制度に

田中 圭介

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

最新コラム: No.42 ASEAN各国の災害リスクとは?

佐藤 益弘

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

最新コラム: 高齢化と不動産投資(2)~「簡易生命表」を見て、人生100年時代を理解する

菅井 敏之

シリーズ連載: 誰も教えてくれなかった「銀行」~その傾向と対策~

最新コラム: 【第四回】必ず行っておきたい、銀行との「コミュニケーション」

LIFULL HOME'S不動産投資フェア

シリーズ連載: 2018/9/15+16 投資EXPO出展企業インタビュー

各出展企業インタビュー記事はこちら

LIFULL HOME'S マーケティング部 データ編集担当

シリーズ連載: ユーザーの本音から探る不動産投資

最新コラム: 将来性を秘めた街 『都心』エリア

鈴木 学

シリーズ連載: ヨーロッパの不動産事情

最新コラム: 欧州の経済大国ドイツの不動産事情

石渡 浩

シリーズ連載: 不動産投資に有益な融資を受けるための知識

最新コラム: 第4回 税引後キャッシュフロー偏重の盲点 銀行は決算書のここを見る(後編)

北野 琴奈

シリーズ連載: 今後はどうする?不動産投資と資産形成・運用の考え方

最新コラム: 物件購入後に出て行くお金、「想定外」を「想定内」に

猪俣 淳

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

最新コラム: 物件オーナーが火災リスクから身を守る4つのポイント

右手 康登

シリーズ連載: CPM®流「相続・不動産経営 実践術」 右手 康登のコンサル「みぎからひだりへ」

最新コラム: 島国の中での常識 VS グローバルスタンダードを知ることの重要性

末永 照雄

シリーズ連載: 失敗しない不動産投資の法則

最新コラム: 米国不動産投資(2) ― サンディエゴ編

伊藤 英昭

シリーズ連載: 伊東英昭氏の不動産投資コラム

最新コラム: vol.13 マンションと高級車

不動産投資・収益物件を検索するなら【LIFULL HOME'S 不動産投資】賃貸経営[マンション経営・アパート経営]をお考えなら、まずは掲載中の投資物件[投資用マンション・売りアパート・一棟売りマンション]を地域や価格帯、会社で検索して、価格や想定利回りで絞り込み!気になる投資物件を見つけたら物件の周辺情報を調べたり、収益シミュレーションを使って実際の運用をイメージ出来ます。不動産会社へはメールか電話でお問い合わせ・相談が可能です(無料)。不動産投資による資産運用をお考えなら【LIFULL HOME'S 不動産投資】

ページトップへ

情報セキュリティマネジメントシステム国際規格

株式会社LIFULLは、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格「ISO/IEC 27001」および国内規格「JIS Q 27001」の認証を取得しています。