寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の「失敗」を分析する。

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

3.森を見て、木を見ず。

今回のコラムは、頭が良いのか悪いのかよく分からないような方が陥る失敗について、お話しようと思います。

ぼくは、まだ物件をお持ちでない方を対象に「投資家チャレンジ面談」という無料相談を受けています。( http://toushika-keichan.com/charenge/ )、相談に来られる方は千差万別で、不動産投資についてしっかり勉強されている方もいれば、「家賃収入がたくさん欲しい」というような思い入れだけでお越しになる方もいます。
どちらであっても正しいスタンスを決めることができれば上手く行くというのは、前シリーズのコラムで書いた通りですが、時々「この人は勉強して知識もあるのだろうけど、不動産投資について根本的なことが分かっていないな」という人がいます。

それが、今回のタイトルにもなっている「森を見て木を見ず」タイプの方です。

■頭が良さそうに見える会話でも・・

「木を見て森を見ず」という諺は、「細事にばかりに気を取られて、物事の大局的な視野に欠ける」というような意味ですから、その逆だと考えていただくと分かりやすいと思います。
こういったタイプの方は、経済の動向や株価の推移、為替相場の見通しなどの大局的な知識や情報についてとても良く知っています。「日銀が介入する金融緩和」「都市部の容積率緩和による東京一極集中」「新線が開通する」というような、会話に出すと賢そうに見える言葉をよく使用されるのが特徴です。

そして、難しいお話をされた後で出てくるのは、

「不動産投資は●●●が一段落する数年後にスタートするべきではないかと思います」
「やはり東京23区内。できれば城南地区で購入したいです」
「●●県には将来性がありません」

のような結論です。日経新聞なんかのコラムみたいですね。

「じゃあ、城南地区でネット利回り5%弱の物件だと、メガバンクで金利1%の融資を受けられたとしても、キャッシュフローを出すには最低頭金3割+諸費用くらいの自己資金。1億の物件で3700万円くらい必要ですけど」という話をすると黙ってしまうのですが(笑)、いずれにしても大局的なことばかりにとらわれてしまい、不動産投資の本質を理解していまいまま間違った判断を下しているというケースは意外と多いのではないかと思うのです。

■不動産投資は「とっても小さな事業」

不動産投資と呼んではいますが、ぼくたちがやっていることは「賃貸経営」という事業です。しかも、家賃収入という名の月の売上高はせいぜい数十万~数百万円程度ですから、事業の中でもかなり規模が小さい部類に入るものです。
そういった小さな事業を営んでいながら、データ分析やトレンドの把握のような大きな視点だけで経営判断をしようとするのは極めて危険な行為ではないでしょうか。
大きな数字について考えたり話をしたりするのは格好良く感じるのかもしれませんが、賃貸経営においてはもっと小さいところに目を向けていく必要があります。

株価が上がったり下がったりすることよりも、周辺の賃貸相場に注目すべきです。
日銀の総裁に誰が就任したかというのはどうでもいい反面、懇意にしている仲介会社の営業マンの転勤や退職にはしっかり対応しないといけません。
「●●駅は大規模な開発計画があるから、投資をするなら今だ」と意気込んでいながら、実は開発は駅の北側に集中しており、物件を購入した南側の賃貸需要が吸い取られてしまった」というような失敗事例もあります。開発計画があるからといって、他の自治体から人口が流入してくるとは限らないのです。

特に地方の場合は母体となる人口や経済規模が小さいので、少しの変化であっても賃貸需要に大きな変化が起こります。国土交通省が発表している「住宅着工数」に注目する時間があったら、持ち物件の近所で新築の計画がないかどうかを気にするべきです。
大規模な賃貸マンションが1棟建築されるだけで、地域の家賃相場が数千円ダウンしてしまうようなことも珍しくはありません。近所のスーパーが閉店したり営業時間が短縮されたりというような変化も、株価の下落よりよほど大きな影響があるのです。

■不動産投資は「長期に渡る事業」

景気にしても各種の経済政策にしても、上がり続けたり下がり続けたりすることはなく、必ずサイクルがあります。ここ数年、収益不動産の価格がなかなか下がらないのは金融機関の融資姿勢が緩いというのが大きな理由のひとつですが、融資も厳しくなったり緩くなったりの繰り返しです。
不動産投資は、一度参入したら失敗しない限りは永続的に事業を続けていくのが普通ですし、ひとつの物件単体で考えても、最低数年間は保有するものです。
ですから大局的に「景気が上り調子だ」とか「物件価格が上げ止まっている」などということが分かっているとしても、賃貸業を続けていく中で景気が後退する時期も物件価格が下がる時期も必ず経験します。点でとらえても意味がないのです。

ぼくが賃貸業を始めて10年の間にも、景気が良く融資が緩い時期もありましたし、そうでない時期もありました。しかし、いわゆる「買い時ではない」と言われるような時代であっても長期に渡って規模を増やし続けている人はたくさんいます。
中古の価格が上がっているのなら利回りの高い新築について研究し、融資が厳しくなったのなら自己資金を多めに入れて財務体質の改善を進めるなど、その時代ごとに最適だと思われる手法を考えて実践することで、永続的に成功しています。

長期間にわたって、いくつもの物件を売り買いし続けるのが不動産投資です。
「森」を何年見続けても、「全ての条件が整った、不動産投資に最適なタイミング」にはなりませんし、仮に一瞬そういう状態があったとしても、その一瞬だけで目標とする資産形成を完了させるようなことはできない訳です。
ですから、森全体の平均値を把握するのではなく、森の木を1本ずつチェックしておいしい果実がついている枝を探すような活動が、個人レベルの不動産投資で成功する方法ではないかと思います。

森の平均値がどういう状態であっても、必ずどこかの木に果実はついているものです。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社ネクスト(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

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