寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の「失敗」を分析する。

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

5. 一棟もの物件では「負の修繕積立金」に気をつけろ。

2015年も1ヶ月あまりが経過しましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
ぼくは1月中に、2物件の購入契約と2物件の売却決済をしました。買う方も売る方も、区分と一棟ものがひとつずつです。

■前オーナーから無税で譲渡されるお金。

区分投資は数年前から力を入れて取り組んでいまして、過去に20戸近くの物件を購入しています。いくつかは売却しているので、現在の保有は10数戸というところです。
コラムをお読みの方は、一棟もの物件を購入対象としている方が多いと思いますが、区分マンションにも利点はたくさんあります。


・作業を標準化できるので、自分が携わらなくても規模を拡大できる。
・1戸あたりの金額が小さいので、万一の際も大きな損失にならない。
・管理がしっかりしているマンションを選べば、手間がほとんど掛からない。
・修繕積立金がキープされているので、突発的な支出がほとんどない。

といったところでしょうか。

特に、最後に挙げた「修繕積立金」はバカにできません。

管理組合がしっかりしていて、計画的にお金を集めてきたマンションでは、1戸あたり100万円以上の修繕積立金が貯まっていることも珍しくありません。
このような区分マンションを購入した場合でも、追加の一時負担を求められるようなことはありません。売主さんが貯めたお金を無税で譲渡されるようなものですから、かなりお得です。

また、しっかり管理されているマンションであれば、長期的な大規模修繕計画が策定されています。
健康の分野では「治療は予防の何倍もお金が掛かる」と言われておりまして、これはマンションでも同じです。水漏れ被害が発生する前に、給水管のメンテナンスをする。雨漏りで慌てる前に屋上の防水をやり直す・・・など、計画的にお金を使っていくことで、結果的に修繕に掛かる費用を削減し、豊富な修繕ファンドを維持できるという「正のサイクル」が生まれます。

これが、一棟ものマンションでは完全に逆になっていることが多く、気付かずに購入してしまったオーナーが莫大な支出を強いられるケースが増えています。
これが「負の修繕積立金」と呼ばれる現象です。

■売主の気持ちになって考える。

物件を売却した経験のある読者さんも多いと思います。
売却を決めた理由としては、「相場が上がって高く売れるかもしれない」というのはもちろんあるかと思いますが、「これから空室が増えるかもしれない」「入居が決まりづらくなってきて、今後は家賃を下げないと厳しそう」というような、マイナスな要素が顕在化してきたという理由も含まれているのではないでしょうか。

中古物件が売られているということは、売却理由が資産整理や現金化であったとしても、売主はその物件を「下り坂」だと判断しているからに他なりません。
購入する側も、それを受け容れて購入の判断をするべきです。

そして築20年であっても、過去にまともな大規模補修がなされていないというアパートやマンションはたくさんあります。
こういう物件は本来20年分の修繕積立金が貯まっているべきなのですが、買主に引き継がれる修繕用の資金はゼロ。これが「負の修繕積立金」です。


「あと1年以内には外壁塗装をしなければいけないので売ってしまおう」
「給湯器が壊れるタイミングは重なるから、1つ壊れた今のタイミングで売り逃げしよう」
「やべ!雨漏りだ・・・ここは応急処置だけにしておいて、すぐに売らなきゃ!」

というような売却理由が隠れている売り物件は、思った以上に多いものです。

市場で売られているのは、木造であれば築15~20年程度、RCであれば築25~30年程度が一番のボリュームゾーンですが、大規模修繕でお金が掛かるタイミングと一致していることからも、「修繕の負担」が売却を後押ししていることが分かります。
程度の差はあれ、どの売り物件も「負の修繕積立金」を抱えていると思った方がよいでしょう。

■それでも買わなきゃいけないとしたら?

とはいえ、積算評価や収益還元に比べると建物の劣化具合は融資評価にはつながりにくく、投資的にはメンテナンスにお金を掛ける重要性が薄まっています。
「大規模修繕が必要なので、その分を差し引いて購入します」という主張をしても、「融資が付くから指値なしで購入しまーす♪」というような人がいる限り、適正価格で購入することは難しいでしょう。(そういう買主がどうなるかは知りませんが)

歪んだ相場が形成されている不動産投資に見切りを付けて撤退する・・というのもひとつの選択肢ですが、今が「買いやすい環境」であるのは事実ですし、人の寿命も有限ですからいつまでも待ち続ける訳にもきません。
「それでも買っていく」という決断をしたならば、負の修繕積立金というリスクについてどう対処していくかがポイントになります。

まず大切なのは、建物と修繕についての知識を深めるということです。
建物のダメージを見極める方法を調べたり、各部位の修繕や交換にいくらくらいの費用が掛かるかの知識を持っておくことは、中古物件の購入判断をする際の大きな武器になります。
また、使われている建材によっても建物の耐久性やメンテナンス費用は大きく違ってきますので、中古物件を買う場合でも建築についての知識があると有利です。

それから、ぼくが気をつけているのは「売主がどういう人であるか」と「売却理由」です。
売主が投資家として大家としてスゴ腕であるほど、「売主にとってベストなタイミング」で物件を売りに出しているはずです。
売主にとってベストということは、買主にとってはベストではないということですよね。

売却の理由が任意売却や相続、売主の本業で資金が必要になったというように「売却のタイミングを自分で選べない」という場合は、大規模修繕が必要になるまでに時間的な余裕があることが多いです。
中には修繕の直後に相続が発生し、ピカピカな状態で売りに出されているというラッキーな売り物件もあります。
また、不動産業者が売主の物件は瑕疵担保責任がついているので、少なくとも2年間は突発的な大規模支出は避けられるでしょう。

そして、「ギリギリの資金計画で古い物件を買わない」というのも大切です。

大規模修繕が必要な物件を放置しておくと、水漏れや雨漏りなどが発生したり、給排水設備に不具合が生じたりすることで、「今の入居者も住めない」状態が発生します。入居者が減るということは、物件価値の大幅な下落を招きます。
200万円の補修費用が捻出できなかったことで、「大量退去→売値の大幅ダウン」となり、数千万円レベルの損失につながることもあるので、十分注意して下さい。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社LIFULL(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

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