寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の「失敗」を分析する。

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

6. 与信の誤解いろいろ。

HOME’Sで連絡している「失敗コラム」も、半年続きました。いつもご覧いただき、ありがとうございます。
今日は、融資の場面においてよく使われる「与信」という言葉について考えてみたいと思います。
投資家さんの集まりなどでよく「与信を毀損する」というような会話が出てきます。何となく「融資についてマイナスである」ということは分かるのですが、詳しく説明できるかというと自信がない方が多いかもしれませんね。

■元々、無限にあるものではない。

まず、与信とはどういう意味の言葉であるかというと、国語辞典では「信用を供与すること」と書かれており、ビジネスの場面では「商品やサービスを提供するため、一定の信用を与える」というような意味合いで使います。
不動産投資に限らず、融資の場面においては「お金を貸し出せる金額や条件を決めて供与する」ことになります。与信の条件や範囲を「与信枠」と言ったりしますね。

ここで大切なのは、与信というものは最初から「有限である」ということです。元の意味が「範囲を決めて供与する」というものですから当然のことです。

よく担保評価(=積算評価)が低かったり古かったりする物件を「与信を毀損するから」といって極端に毛嫌いする方もいらっしゃいますが、購入金額以上の積算評価が出ている物件を買ったとしても、与えられた与信枠を使ってお金を借りていることに変わりはありません。
積算金額以下で借入をしていても、無限に融資を受け続けられるという訳ではないのです。

■どの金融機関でも同じ尺度という訳ではない。

どういった人にどのくらいの融資をするのかという基準は、金融機関によってかなり異なります。「年収●百万円以上でないと審査すらしない」というところもあれば、「主婦でもOK」という金融機関もあります。限度額や貸出年数もさまざまですよね。
ということは、「どういった場合に融資条件が悪化するのか」という条件も、各金融機関によって違うはずです。

よく話題になるのは「法定耐用年数を超えた融資を受けるのは、与信を悪化させる」というものですが、全ての金融機関でそのような運用をしているという訳ではありません。
ぼくの知る限りでは、既に所有している物件で法定耐用年数を超えた融資を受けていた場合に、これからの貸出にマイナス評価をする金融機関はむしろ少数派です。

「積算評価以上の融資を受けると、次の借入ができなくなる」という原則も、実はケースバイケースです。今では金融機関も、積算評価が出る物件の特徴やデメリット(割と田舎にあり、収益率の低いファミリータイプの物件で積算評価が出やすくなってしまう)を分かっており、単純な積算だけで融資の可否や金額を決めているところは減っています。

自分が取引する(すべき)金融機関が、どういう基準で審査をしているかを把握して、その基準になった物件を持ち込む努力を続けることが大切であり、聞きかじっただけの「毀損条件」を盲信して、判断を狂わすようなことがないようにしなければなりません。

■金融機関の序列はあるのか?

金融機関の序列というのがあって、信金や信組のような小さな金融機関で融資を受けているとメガバンクは審査をしてくれないとか、ノンバンクで借りてしまうと一般の銀行はアウトだとか言う方もいらっしゃいますが、これらは都市伝説です。

メガバンク行員「持ち込まれた物件は素晴らしいのですが、金利の高い●●●銀行で融資を受けているような方は、格の高い当行にはふさわしくありません」

みたいな発言をすれば、それこそ金融庁から指導が入ることでしょう。

一般的に低い金利で融資をしてくれるメガバンクなどの金融機関は、審査や物件の評価基準が厳しいです。ですから、メガバンクなどの敷居が高い銀行の基準では、以前に他行で融資を受けた物件が「融資対象外」であったり「融資金額が高すぎる」という評価になることも頻繁に起こります。

「当行では融資対象外の物件で5千万円の融資を受けておられますので、当行的にはお客様は債務超過状態だと判断されます。従って、本件の融資は・・・」というのが事実であって、格下の金融機関そのものをマイナス評価している訳ではないのです。

金利の高い金融機関でしか融資を受けられないという方もいらっしゃいます。そういう方が「いや、ここで借りると与信を毀損するから」なんて言って、良い物件をスルーしているような事例も多いです。「借りられるところで借りる」というスタンスが大切です。

■意外な毀損理由。

余談ですが、Googleなどの検索エンジンで「与信 毀損」という言葉を検索すると、上位の20件くらいまでは全て不動産投資に関係するサイトが表示されます。
不動産投資に携わっている人が、いかに与信の毀損を気にしているかという表れだと思いますが、上述したように与信判断は金融機関によって大きく異なりますし、「こんなことでも?」という理由で取引を断られてしまったり、条件が悪化することがあります。

例えば不動産賃貸業に融資をする場合、金融機関にはそれぞれ「対象エリア」というのがあり、基本的には自行の支店網がある地域でなければ融資をしません。ここまでは、割と普通の融資基準です。
ところが、その基準が極めて厳しく「融資エリア外に、収益物件を所有しているだけでもアウト」という金融機関もあります。現在どれだけ順調に経営できていても、今回の申込は対象エリアのど真ん中であっても、エリア外に保有していること自体が致命的な与信毀損なのです。

キャッシュフロー月額100万円を目指すサラリーマン投資家の方だと、遠隔地の物件を購入することが多いと思いますが、こういった方は持ち物件を売却しないと、審査すらしてもらえないということになります。

また、割と多くの金融機関で「子供がいるとマイナス評価になる」という基準がありますし、勤務している業種でマイナス評価されることもあります。業種によるマイナス評価は、勤務先の業績が絶好調で高い年収を取っていても関係ない・・という場合が多く、該当する方にとってはかなり理不尽に感じるはずです。

■「良い」物件を買い、純資産を増やす。

ということで、各金融機関によって与信というのは異なる基準で運用されており、常識的に考えて納得できないと感じる基準も多いのが事実です。

区分を買ったらダメ、木造はダメ、新築もダメ、田舎や遠隔地もダメ、RCでも昭和築はダメ、子供もダメ・・・と、与信の毀損を気にし出すとキリがないです。そして、仮に完璧に与信毀損を免れたとしても、冒頭で説明したように無限の融資枠が得られる訳ではありません。

自分が10年ちょっと不動産投資に携わって思うのは、やはり「良い物件」を買うということ。そして、しっかりと純資産を増やしていくということ。金融機関からの評価が高い確定申告や決算を作ること。王道を歩んでいくことで与信枠というのは拡大していくものです。

数年前にどこかで読んだかも・・という細かいテクニックは少し忘れて、「本当に良い物件とは、どういうものだろうか」と再考してみると、道が開けていくかもしれません。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社ネクスト(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

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