寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の「失敗」を分析する。

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

7. あなたの土地勘など、役に立たない。

賃貸の繁忙期も一段落といったところですが、今年度の入居はいかがでしたでしょうか。
地方で不動産投資をしていると、良くも悪くも年によってのバラツキは少なく、2~3月の繁忙期といっても「まあ、いつもよりは入退去が多いかもね」という程度です。おかげさまで、今春はまずまずの入居率で推移できました。

さて、今日は地方・遠隔地投資を躊躇する理由のひとつである「土地勘」について考えてみたいと思います。何となく便利な言葉として定着していますが、この土地勘についての勘違いのせいで、物件のリスクを読み誤ったり、良い物件を逃したりすることも多いようです。

■不動産投資と土地勘の関係。

「土地カン」という言葉は、「地形や地理、道路、家屋の配置、生活習慣などについての知識があること」という意味で、元々は警察用語だそうです。正しくは土地「鑑」と表記するのが正しいのですが、今は誤用である「土地勘」が多く使われています。

この土地勘。不動産投資でもしばしば使われる言葉ですね。


「幼少期に住んでいたので、この地域は土地勘があります」
「ずっと関東地方から出たことがなく、他の地域は土地勘がありません」

のような使われ方をします。
文章を読んでも、特に違和感はありません。

しかし、一般的な「土地勘」と、「不動産投資を行う上で知っておくべき、その地域についての知識」は同じではありません。
そして、投資家さんが「この地域には土地勘がある」と思っていても、不動産投資をする上では役に立たなかったり、その逆であっても全く問題がないということが多いのです。

■自然に知るようなことはない情報。

具体的に説明しましょう。

不動産投資の本やセミナーでは、よく知らない地域で売り物件の検討をする際に、インターネットなどを使って地域や物件周辺についての詳細な調査をすることが奨められています。調査項目も多種多様ですが、以下のようなものが代表的です。


・自治体の人口と世帯数の推移。
・隣接している自治体の人口と世帯数の推移。
・最寄り駅の乗降客数推移。
・最寄り駅を通っている鉄道の路線図。(急行停車駅など)
・バス停の場所とバスの発着時刻、行き先など。
・駅から同じくらいの距離にある類似の間取りの競合物件。
・検討物件より駅に近い、類似の間取りの競合物件。
・「見える賃貸経営」などのサイトで需給関係の調査。
  https://toushi.homes.co.jp/owner/
・近隣の商業施設。(スーパー、コンビニ、飲食店など)
・近隣の生活施設(郵便局、病院、市役所など)
・最寄り駅、または近隣の賃貸仲介会社。
・検討エリアの長期的な開発計画。

このように列挙してみると、ほとんどの調査項目において「地元の人でも、自然に知り得るような情報ではない」ということが分かります。数年前にその地域に住んでいたとか、親戚がいるので年に1度は訪問している・・というくらいでは、不動産投資に必要な情報が備わるようなことはないのです。

その地域に現在住んでいれば、「車社会なので、駅よりもイオンに近い方が賃貸の人気が高い」「地元の工場で、人員削減をしているらしい」という情報が入ってくることもありますし、確かにこういったコアな情報はインターネットでは調べきれないものです。
逆に言えば、不動産投資における土地勘というものは「その場所に住んでいなければ、みんな同じ」と考えて良いでしょう。

一度も足を踏み入れたことのない場所であっても、しっかりした調査をもとに不動産投資はできるのです。

■一般的な土地勘がマイナスになるケース。

逆に、「ちょっと知っている(=土地勘があると思っている)くらいの人」が重大な判断ミスをするケースもあります。

例えばぼくは、2001年から数年間、富山県の高岡市に住んでいました。
富山県の県庁所在地は富山市で、高岡市は人口でいうと2番目の自治体になります。
実際、賃貸経営が成り立つのは、このふたつの自治体が中心になると思いますし、それ以外の地域は地元の人以外は手が出しづらいと思います。

この富山県ですが、2005年を中心に大規模な市町村合併がありました。
特に、県庁所在地である富山市の合併は、周辺の6つの「町」と「村」を一気に合併し、今の富山市は県全体の30%近くを占める大きさになっています。
しかし、県庁所在地と合併したからといって、元々の町村が急激に栄えるということはありません。むしろ富山市の場合は、自治体が「コンパクトシティ構想」を打ち出したりして、市民を中心部に集めるような施策を採っています。
(※参考ホームページ http://www.sbbit.jp/article/cont1/29013 )

そんな状況の中、元々は富山市でなかったエリアの売り物件も、表記上は「富山市」として掲載されます。一時的に高岡のような場所に住んでいて、市町村合併について知らなかったような投資家さんが、「富山は土地勘があるから大丈夫。県庁所在地なら安心」と思う可能性は低くありません。

「おわら風の盆」でおなじみの富山市八尾町は、2004年まで「富山県婦負郡八尾町」でした。「ねいぐんやつおまち」と読みます。

前の地名が残っていれば、「あれ?この地名って、前は富山市じゃなかったな」と気付くこともありますが、同時期に合併した「上新川郡大沢野町」という自治体は、「大沢野」という地名が合併後は完全に消えてしまいました。(「上新川郡大沢野町上大久保」という場所は、「富山市上大久保」になりました。地名だけではほとんど判別不能です)

逆に、エリアについてしっかりネット調査をした「一般的な土地勘のない人」は、すぐにこういった事実に気付くという訳です。

■一歩踏み出せば、世界が変わる。

自分や父親が転勤族のサラリーマンであったり、地方生まれの方が進学や就職を機に上京したりというようなことがない限り、複数の地域で居住経験のある方は多くありません。
特に、東京生まれの東京育ちというような人の場合、一都三県以外の場所はまるで外国のように感じてしまうかもしれませんね。

県庁所在地などある程度栄えている場所であったとしても、物理的な距離への抵抗感もあって、首都圏以外の物件を購入することについて恐怖心を持つのも分かります。
ですが、これまで述べてきたように、まったくゆかりのない地域であっても不動産投資をすることは可能ですし、一般的な土地勘があるという方に比べて不利だということもありません。
一都三県であっても危険なエリアはありますし、その逆もあります。ぜひフラットな視点で投資エリアを検討し、見知らぬ土地であっても一歩踏み出してみることをお奨めします。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社ネクスト(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

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