寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の「失敗」を分析する。

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

11. 築古ドリーマーのジレンマ

前回のコラム「ハイクラスサラリーマンの選民思想」は、おかげさまで多くの反響がありました。辛辣な反論も頂きましたが概ね好評だったようで、何より「銀行で実際に不動産融資を担当している」という方から「その通りです」と賛同のご意見を頂きました。
自分がサラリーマンの時には分かりませんでしたが、金融機関が「収益物件を購入する個人や法人」に求める自己資金・金融資産は、当初想像していたより遙かに高額であるようです。

さて、自己資金の面で「中古RCで爆発的に規模を増やす不動産投資」が難しかったり、競争に巻き込まれるのを嫌う投資家さんを中心に、再び見直されているのが築古物件です。
最近刊行されている不動産投資関連の書籍も、築古の戸建てやアパートを投資対象としているものが増えてきましたね。
今回のコラムは、この築古物件について採り上げてみましょう。

■目的も失敗もワンパターン

賃貸競争力も高くて修繕費も掛からない新築・築浅物件でなく、あえて古い物件を狙っていく投資家さんは、全員が「低い利回りでは満足できない」と考えています。古い物件に愛着を感じるとか、環境保護のために・・という理由ではありません。
新築好きな投資家さんが、「入居付けが苦手」「自分でプランニングするのが好き」「出口に強い」など、様々な理由でその投資法を選んでいることと比べると、築古愛好家はワンパターンだとも言えます(笑)

そして、失敗する理由も比較的ワンパターンで、一言でいうと「築古物件の『再生』に、過大な期待をしてしまう」ことです。
この「築古物件に過大な期待をしている人」という名称がちょっと長いので、ここでは「築古ドリーマー」と呼ぶことにしましょう。

では、具体的に見ていくことにします。

■物件が生まれ変わる訳ではない。

まず、多いのが「消せない古さもある」ということを理解していないパターン。

築古ドリーマーは、書籍やネット、なかには「ビフォア・アフター」のようなテレビ番組で、古い建物が見違えるような変身を遂げるリノベーション事例に刺激を受け、これならどんな古いものを買っても新築同様に変身させられる!!・・と信じてしまう訳ですが、仮に莫大な費用を掛けて表面上はそのような状態になったとしても、新しくなっていない部分は意外と多いものです。

建物の躯体はもちろんのこと、配管や構造壁などはリノベーション前後でも変わりませんので、見栄えが良くなったとしても建物の耐久性が向上しません。リノベの直後に老朽化した水道管から激しく水漏れがあり、キレイな内装が台無しになってしまったという事例も見ました。

そして、登記簿に載っている建物の建築年月も、当然ながら変わりません。
古いのを買ってキレイにしたら高く売れるだろうと見込んでお金を掛けても、融資の評価は低いままなので、掛けたリノベ費用くらいしか売値が上がらなかった(=してもしなくても同じだった)という失敗例もあります。

■スペックが勝てないもの。

不動産投資である以上、リフォームやリノベーション費用に使える予算は限られています。
その予算は、価値向上によって見込める家賃の上昇額から逆算するようなことが多いかと思いますが、この「家賃上昇額」を実際より高く想定してしまいがちです。

確かに、見違えるほどキレイになった内装に加えて設備的にもある程度バリューアップさせている訳ですから、家賃を大幅に上げたくなる気持ちも分かります。しかし、都心部のごく一部を除いて、「この間取りだったら、このくらいが上限」という相場家賃が決まっており、いかに付加価値を付けようともそれ以上の価格で決めることはできません。

特に、都内の賃貸物件に住みながら地方物件を購入しているような場合、「これだけピカピカの内装にしたら、都区内の標準くらいの家賃は取れるだろう」などと思いがちです。しかし地方は地方の相場があって、その基準を逸脱していると仲介会社が敬遠してしまって案内すらされないようになりますので、注意が必要です。

自分の事例で恐縮ですが、このパターンで一度失敗をしています。
富山市で購入したRCマンションの、元オーナールーム。100㎡という広さに吹き抜けの高い天井という十分なスペックがありましたので、高いお金を掛けて高所得の人に貸そうともくろみました。
想定家賃は12万円、都区内であれば30㎡台の1LDKでもそのくらいの家賃は取れますので、十分に勝算があったつもりでした。

しかし、200万円以上も掛けて大改造した部屋も、先述の「間取り別の上限家賃」を超えることはできず、問い合わせがまったくない状況が続きました。結局、想定を3万円以上も下回る賃料で数ヶ月後にようやく決まる・・という散々な結果になった訳です。
信頼できる仲介会社さんの話によると「10万円の家賃が払える人は、そもそもこのエリアには住まない」ということで、スペックはエリアには勝てないという事実を強烈に理解させられた出来事でした。ぼく自身が、築古ドリーマーだった訳です。

■成功している築古投資家の特徴

何かと難しく、大変な割にリターンが少ないように見える築古投資ですが、成功している人も少なくありません。ただ、その成功パターンは当初の予想とはだいぶ違うようです。

【パターン①】極めて競争力の高いエリアで、コンセプトのある部屋を提供。

競争力があり所得が高い人たちが住みたがるような場所であれば、強烈なインパクトのある「尖ったヘヤ」を創ることで、相場を上回る賃料で貸すことも可能です。
個性的な部屋であれば高いお金を払っても良い・・・と考える人が多く住んでいる必要があり、全国的にもかなり限られたエリアだけで許された投資法です。

【パターン②】最低限の追加投資で、とにかく安く貸している。

古い物件は、いくら手を掛けたところで古いまま・・という考え方で、最低限のリフォームのみを施し、生活保護またはそれ以下の所得水準の方に貸すという手法で、築古投資で成功している方の多くがこのパターンです。
こういった属性の方を入居させると運営面で大変な思いをしそうですが、彼らは追い出されたら次に住むところを見つけられないという状況を自覚しているため、夜逃げなどの最悪の事態になることは滅多にないようです。
リフォームの程度も「インフラが使えていれば良い」「壁やドアの穴程度は補修しない」といった、かなり思い切ったものです。

ということで、せっかく物件を安く購入できた訳ですから、大変身を夢見て余計な追加投資をするよりも、ビジネスだと割り切って築古らしい価値(=低廉な家賃)を提供するように努めるのが良さそうですね。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社ネクスト(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

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