2015年も残り3ヶ月。月日の経つのは本当に早いですね。
皆さんが感じている「年々、時間が経つのが早く感じる」という現象は実は科学的に解決しているってことをご存じでしたか?「ジャネーの法則」という心理学での名称まであります。
5歳の子供にとっての1年間は人生の5分の1。見ることすること全てが新鮮で強烈な思い出となって心に刻まれますが、50歳にとっての1年は、50分の1。わずか人生の2%に過ぎません。同じことを繰り返す単調な毎日であれば、なおさら時間の流れを早く感じることでしょう。
不動産投資だけでなく、日々チャレンジのある人生を送りたいものです。
◆必須のツールも諸刃の剣
しかし、いくらチャレンジといっても不動産投資はその性質上、大きな失敗をすると取り返しがつきません。
念入りなリサーチとシミュレーションによって、エリアと検討している物件が将来どのようになるのかを予測した上で購入判断をしなければ危険ですよね。
また、順調にいった場合だけでなく、市況や運営状況が予想よりも悪い方向に進んだ場合にどうなるのかも、あらかじめ認識しておく必要があります。
このあたりは感覚に頼るだけでなく、しっかりと「数値」でつかむことが大切です。
借入の残高は年月の経過とともにどう減っていくのか、空室率がどの程度であれば安定した経営ができるのかなどという計算は、電卓だけでは膨大な時間と労力が掛かるため、多くの人がExcelなどをベースにしたシミュレーションソフトを活用されるようです。
こういったソフトは、関数を使った複雑な計算も一瞬で間違いなくこなしてくれますし、各パラメータが変動した場合に、他の要素にどういう影響がでるのかというような試算も大得意です。
しかし、その便利すぎる機能を必要以上に活用した結果、買うべき物件をスルーしたり、買ってはいけない物件を買ってしまったりする失敗例が多いようです。
そこで今日は、必須のアイテムでありながら使い方を間違うと非常に危ないという、このシミュレーションソフトにおける失敗についてお話します。
◆同時多発のアクシデントに備えた結果
ぼくは北陸地方に一棟もの物件を複数所有しているので年に何度か現地に行きますが、北陸新幹線が開通するまでは、飛行機を使うことがよくありました。
飛行機を使った場合の所要時間としては、まず自宅から横浜駅のバスターミナルまで地下鉄と徒歩で20分。バスで羽田空港まで30分弱、羽田から小松空港までが約1時間。金沢の管理会社さんまで、レンタカーで30分。
羽田空港に搭乗30分前に到着すると仮定すると、レンタカーの手続きなどを入れても、3時間で行ける計算です。東京駅からの上越新幹線経由で現地に行くと、5時間以上掛かりましたので、相当な時間の節約になる計算です。
でも、例えば管理会社さんのアポイントが13時だとすると、
・地下鉄が遅れるかも。早朝は本数も少ないから1本早めに出よう。
・バスは渋滞するかも。空港に1時間以上は早く着くバスに乗らなければ。
・飛行機なんて遅れるものだ。ひとつ前の飛行機に乗ることにしよう。
・石川だって渋滞しないとは限らない・・・。
みたいな「遅れるかもしれない要因」をフルに想定してしまい、その結果とてつもなく早く出かけてしまうクセが抜けませんでした。(遅刻は、他人にも自分にも厳しいです)
結果、9時の飛行機に乗るために7時前に自宅を出て、空港で何もしない時間をたっぷり過ごし、天候にも恵まれ、定刻通りのスムーズなフライトを楽しんだ結果・・・目的地に到着するまでに、空港やレンタカーの車内で合計3時間以上の暇つぶしを強いられてしまうのです。
実際に飛行機やバスが遅れることもあったのですが、同時に遅れるようなことはなかったので、ムダな暇つぶし時間がゼロになることはありませんでした。
今では北陸新幹線が開通して、ほぼオンタイムでの移動ができるようになりました。バスや飛行機に比べると新幹線の時刻は正確で信頼できます。
◆「買うか買わないか」を判断するものではない。
さて。実はシミュレーションソフトでも、同じようなことが起こります。
・家賃って、毎年下がっていくものだよな。
・それでもやっぱり、入居率ってどんどん落ちるに違いない。
・金利だって上がるに決まっている。
・今後、やはり不動産価格(売値)は低下傾向になるだろう。
・古くなるってことは、修繕費も上がっていくということだ。
・これから増税は避けられない。所得税はもちろん、固都税も。
このような変動要因は、それぞれが全て起こりうることであり、ある程度のレベルまでは想定した上で物件の購入を検討するべきであることは言うまでもありません。
例えば、家賃が2割下がった場合でもキャッシュフローがプラスであるというのを購入条件にしたり、金利が5%になると危ない水準になるのでそれまでに繰上返済や売却によって対処したりという対策を立てておくのは大切なことです。
とはいえ、それらが同時に発生する確率は極めて低いものであり、そこまでを想定していたら、不動産投資に限らず全ての事業が成り立ちません。
ところが、このようなシミュレーションソフトは、各パラメータの数値を制限なく変更できる機能が備わっているために、どんな物件であっても必ず経営破綻するような条件を作り出すことが可能です。
膨大な時間をかけた挙げ句に「家賃を2割も下げたのに入居率が7割に減り、さらに金利が当初の2倍に上がってしまった上に原状回復の単価が当初の2倍に高騰した場合、キャッシュフローがマイナスになるのでこの物件は買うべきではない」というような結論を出しても意味はありませんね。
シミュレーションソフトは、一切のリスクを引き受けない人(もはや投資家ではありません)が現実には起こりえない条件を設定して自虐行為に勤しむものではなく、リスクを定量化してそれぞれの場面での対策を想定しておくためのツールですので、くれぐれも間違った使い方をしないようご注意ください。