寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の「失敗」を分析する。

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

14.オーバーローンという「超神水」を飲めるか?

アベノミクスでの金融緩和も相変わらず継続されており、融資状況も良いことから引き続き不動産投資ブームが続いている状況ですね。
不動産投資は結局のところ、融資がどうなのかで全てが決まります。融資が緩い時期であれば、参入者が増えて価格が上がり取引も活発になります。ひとたび融資が引き締まると、価格が下がって利回りが上がるにも関わらず不動産を買おうとする人は減少します。

融資の状況に比べれば、日本の人口が増えたり減ったりとか、家賃や入居率の平均が減っていることなどは(本来はとても大事なことなのに)不動産市況的には無視していいくらいの影響しか与えていません。

思えばぼくが不動産投資を始めた2004年から、融資を取り巻く状況は激変しました。その結果、10年前にはなかった成功例・失敗例が出てくるようになりました。
今回は、そのあたりをコラムで採り上げたいと思います。

◆融資情勢はこんなに変わった。

まずは、10年前と比べて現在の融資状況を比較してみましょう。

【融資額】
 ・サラリーマン投資家の場合、今の方が高額な融資を受けやすい。
 ・ある程度の年収があれば、総額3~4億円くらいまでは物件の担保評価を超えた「融資枠」のようなものが確保されている。以前はかなり属性が良くても、物件の銀行評価額を超えた融資を受けるのはレアケースだった。
 ・フルローン、オーバーローンを受けられることが増えた。

【金利】
 ・以前は日本政策金融公庫や、当時積極的に融資をしていたSMBCなどが主流だったので、金利は1~2%台前半が中心だった。
・今はスルガ銀行、静岡銀行、オリックス、SBJ銀行など、サラリーマン投資家向けに積極的な貸出を行っている銀行は総じて金利が高め。2%台後半~4.5%。

【返済期間】
 ・今は、物件の築年数に関わらず30~35年返済で融資を組める事例が増え、キャッシュフローが出やすくなった。そのためより低い利回りでも物件が購入可能に。
 ・10年前は、物件の法定耐用年数を超えた返済期間を取ることは本人の信用毀損につながっていたので、小ぶりの木造アパートを公庫で購入した場合などに限られていた。

【その他】
 ・以前は購入物件を決めてから(場合によっては契約後)複数の銀行に対して融資申込をするのが一般的でしたが、今は「融資評価済み」という売り物件が増え、一定の属性と自己資金があれば確実に購入できるのが普通になった。

最近になって不動産投資を始めたり興味を持ったという方は、「10年前の融資基準じゃ、今の物件で買えるものなど何もない」と思われたかもしれません。そうではなくて、10年前は融資の基準が厳しかったので、その条件で買えるような相場に落ち着いていたというのが正しいです。融資が先、相場が後ですね。

◆それぞれの時代に、メリットはある。

まとめると、10年前は今と比べて格段に融資が厳しかった反面、物件価格は落ち着いていて一定の利回りが確保できていました。また、フルローン自体がレアケースでオーバーローンは基本的にありませんでしたので、億単位の物件を買うには相応の自己資金が求められました。
「今と比べると高めの利回り&低めの金利」「一定の自己資金投入」の結果、家賃収入に占める返済の比率は今のスタンダードと比べるとぐっと低いものでした。都市部の物件をフルローンで購入しても、満室時家賃の50%未満で返済ができることが当たり前だったように思います。

ところが今は、「低くなった利回り&高めの金利」「オーバーローンも割と一般的」ということで、返済の比率はぐんぐん上がっています。それなりに良い利回りの物件を買って、しかも法定耐用年数以上の融資を受けていても、満室時家賃の60%近くが返済に回ることが普通です。

ここで例えば、リーマンショック前に書かれた不動産投資の本や教材に「返済比率は●%以下にしよう」ということが書かれていたのを鵜呑みにしてしまうと、現実離れした条件を探してしまうかもしれませんね。

総じて今の方が「良い物件を買いづらくなった」ことは間違いありません。ただ、今の方が「物件を買うこと自体は格段に簡単になった」という事実も見逃せません。
10年前なら、それこそ10年掛かってようやく実現できるような投資規模を、2~3年で達成してしまうことも可能になりました。
キャッシュフローも減り、高めの金利のために残債が減っていくペースも遅いのですが、物件を購入してから努力と工夫で物件価値を上げることで、5~10年後あたりにある程度の利益を乗せて売却することは可能ですし、実際にそうした事例も見ています。

◆実はすごく特別なことをやっている。

10年前なら到底購入できない規模の物件を自己資金の拠出なしで購入し、普通に貯蓄をしていたのでは絶対に貯められないキャッシュを、数年後の売却で手にすることができる訳です。
賃貸経営の実績を金融機関に認められ、ひとつ上のレベルの不動産投資ができるようになります。融資が受けづらかったり、購入後のリフォームにお金が掛かるような物件は、今でも高い利回りで購入することができます。

物件保有中は、薄いキャッシュフローに耐えながら高い入居率を維持し続ける必要があり、ストレスもあるでしょうし、安全な投資とは言えないかもしれません。「買えるから買った」といった安易な気持ちでは、保有期間を持ちこたえることはできないでしょう。

300万円の自己資金しか持たない人が、年100万円ずつ貯金して7年後に頭金1千万円で3千万円のアパートを買って・・・という10年前のような買い方をするか、覚悟を決めて一気にレベルアップする方法を選ぶかは自分で決められますし、どちらが間違っているということもありません。

オーバーローンで一気に資産を増やす方法は、あの「ドラゴンボール」で、当時は悪者だったピッコロ大魔王に勝つために、主人公の孫悟空が「超神水」という猛毒を飲んだ状況に似ているかもしれません。
「安全な超神水」なんていう存在しない方法を探すのではなく、覚悟がないならしっかりお金を貯めてから不動産を買うべきですね。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社ネクスト(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

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