寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の「失敗」を分析する。

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

15.急激な規模拡大の弊害

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今年もあと1ヶ月足らずで終わり。1年間どんな年だったでしょうか。
ぼくは新規の収益不動産を合計で66戸(2棟と区分2つ)購入し、1棟(16戸)を売却しました。差し引きで満室時の家賃年収が2,200万円くらい増えた計算になります。

◆徐々にしか増やせない時代もあった。

1年で66戸購入というのは、ぼくが不動産投資を始めてから最も早いペースです。
新規に物件を取得した年は、リフォームや管理会社さんと打合せをしたり、客付け営業で現地を何度も訪問したりと軌道に乗るまではかなり大変です。
今はなんとかこなせていますが、不動産投資を始めたばかりの頃にこれだけの規模が増えても知識やスキルが伴わず、満足のいく活動ができなかったかもしれません。規模もスキルも徐々に増やしていったことが結果的に安定運営につながっています。

ですが、今は金融機関の融資も非常に緩くなっており、その気になれば初心者の方でも年間100戸の収益不動産を購入することができます。
現に、不動産融資に積極的な某銀行は、年収1千万円以上の給与所得者については貸付限度額を5億円と規定しています。融資が付きやすい地方のシングル向け物件(家賃4万円程度)で5億円分購入すると、150戸くらいの規模になるはずです。

不動産投資をスタートして1年程度の大家さんが、いきなり地方の中古物件を150戸も所有したら・・・。これはもう、数々の弊害が出てくるのは容易に予想できます。

◆たくさん買えるだけに、身につかない運営スキル。

まずは空室対策を中心とした「管理・運営」面です。
ぼくが最初に購入したのは線路沿いにある9戸の木造アパートで、18㎡にも満たない3点ユニットのワンルームでした。
当然、入居が付きやすいということは全くなく、当時販売されていた空室対策の書籍を買い、セミナーにも参加しながら試行錯誤で物件の価値を高めていき、必死で90%くらいの入居率を維持しました。その後も高い利回りを狙うためにエリアやスペックを犠牲にし続けたので、楽勝で満室になるような物件を購入したことがありません。

ぼくの場合は小さな規模から徐々に拡大していったので、新しい物件を買う頃にはそれまでに購入した物件は「起動に乗った」状態だったのですが、短期で一気に買い進めたような場合はそうはいきません。
特に、最近の売り物件は融資評価を高めるために一定期間の空室保証がついており、保証期間中は販売会社が家主代行のような形で地元の管理会社とやりとりをすることが多いので、そうなるとさらに運営スキルの上達からは遠ざかります。

空室が続く原因はどうやって調べたら良いのか。
費用対効果の高いアイテムは何か。
家賃を下げる以外に採りうる条件変更には何があるのか。
ネットの掲載状況をどうやってチェックするのか。
内見が少ないとき、内見しても決まらないとき、それぞれの対策は?

こういうことが分からないままで多くの規模を保有するのは、非常に危険です。

家賃保証が終わる頃になっても管理会社との関係構築ができておらず、どうやってこの先入居を決めたらいいのか分からない・・ということにならないよう、管理運営面でも規模に相応しい知識やスキルを身につけていきましょう。

◆普通の会社のように事務をこなす。

規模が急激に増えた時に次に直面するのが、事務処理です。
賃貸業に必要な事務スキル自体は大したものではありませんし、普段のお勤め先で処理されているお仕事の方が高度である場合がほとんどですが、賃貸業の全体像が見えていないために、書類の整理や領収証などの管理、送金明細のチェックポイントなどが分からないままになっていることもよくあります。

購入時に支払った登記費用や仲介手数料と、普段支払う経費は分けておくと便利だということも、最初の確定申告をした後で分かるのですが、最初の確定申告が既に3棟も4棟もということになると収拾が付きません。2月になって慌てることになります。

また、賃貸業というのは意外と「支払い業務」が多いものです。
管理料や修繕費などは家賃と相殺の上で送金されるものの、他社仲介の際の広告料や電気代、水道代、シルバー人材センターを利用している場合はその費用、借上駐車場、固定資産税や分割して支払う住民税などなど。こういった支払いも、物件がゼロから一気に増えると把握仕切れなくなってしまうことが多いようです。
面倒ですが、物件ごとの支払い費目リストに振込完了日を書き込んでいくなどの仕組みを作るのが確実です。請求書が届いたら極力すぐに支払ってしまい、溜め込まないことも大切です。
当然のことながら、取引銀行からネット送金ができるようにしておきましょう。

◆知識不足で致命的な状態にも

そして、最も致命的なリスクが資金的なものです。
今のご時世、貯金が1千万円もない状態で数億円の物件を短期間のうちに購入するのも珍しいことではなくなってきました。
しかし、(フルローンでどんどん貸す銀行以外の)普通の金融機関は「不動産投資は、資産家が余剰資金でやるもの」と考えており、「5千万円のアパートを買うには、2千万円以上の金融資産が必要」というようなことを平気で言います。

実際、大きなトラブルがあっても安定して元利の支払いを続けるためには、それくらいの余裕があることが望ましいのですが、「普通の人」から這い上がるためにはお金が貯まるのを待つ訳にいかないのも事実。
ただ、購入直後のいちばんお金のない時期に、予定外の出費が発生することは避けなければなりません。

この予定外の出費は、
「1.本当に予定外だったもの」
「2.必ず発生するのに準備をしておかなかったもの」
「3.知識と情報で出費を回避できるもの」

に分けられます。

1の場合はやむを得ない部分もありますが、実際に資金ショートで大変な目に遭っている投資家さんの多くは、取得税の金額と支払時期を把握していなかったり(2のケース)、瑕疵担保のついていない物件を買って直後に漏水事故があったり(3のケース)と、事前に対処ができる出来事がきっかけで苦しんでいます。
最初の「管理運営」にも関係しますが、中には「退去の際のリフォーム費用を計算に入れてなかった」「広告料を払うなんて知らなかった」なんて人もいるので驚きです。

◆全ては「特殊なことをしている」という自覚。

ギリギリの資金で勝負することを否定するつもりはありませんが(ぼくもそうでしたし)、1千万やそこらの自己資金で数億円の不動産を購入するのは、極めて特殊な行為です。
特殊なことをするからには相応の心構えが大切で、結局のところ上記の弊害というのは、ご自身のやろうとしていることを安易に考えすぎているところに起因しています。

ドラゴンボールの孫悟空は、地球侵略にやってきたサイヤ人ベジータと戦う際に、自分のパワーを数倍にできる「界王拳」という技を身につけましたが、界王拳のパワーを上げすぎると自分の身体の方が耐えられません。
界王拳のように規模をガンガン拡大するなら、自分の身体(=運営力や変事対応のための資金)が耐えられるかを把握した上で行いましょう。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社ネクスト(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

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