寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の事業化計画

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

3.事業化のデメリット

5月は不動産活動もそれなりに忙しく、出張も北陸(富山・石川)と高知の2ヶ所に行きました。富山県の競売物件に入札してみたのですが、入札価格の2倍近くの金額で落札されてしまい、不動産相場の過熱を感じます。

不動産価格が上昇している要因はマイナス金利や量的緩和などいろいろですが、サラリーマン投資家向けに融資する銀行が、非常に緩い査定をしているからでもあります。
今は売る側も「●●銀行でいくらの評価が出るか」を確認して売却価格を決めています。エリアや入居率がそれなりに整った物件であれば、このルートで売却するのが一番高く売れるからそうしているのですが、経験も資金も乏しいサラリーマン大家さんが購入できる物件というのは限られていますので、お値打ち感がなくても購入せざるを得ないという側面もあります。
事業者として実績が付いてくると、いろんなタイプの物件に融資が付くようになるので、過熱感のある相場であっても高利回りの物件を購入できる可能性が高いですね。

とはいえ、事業者も万能ではありません。当然デメリットもありますし、サラリーマン大家さんの遅れを取ってしまう弱点も少なくありません。今日はその点について説明していきましょう。

◆実績と利益がない事業者に価値はない。

有名なメガ大家さんが、毎月のように物件を買い増していく様子をブログやSNSで公開していたりしますよね。このような芸当ができるのは、まさに事業化大家として実績と利益を上げ続けているからということで、事業化できさえすればポンポンと好きなだけ購入できるという訳ではもちろんありません。

実際、銀行が諸手を挙げて融資をしてくれるのは、しっかりと利益を出し、銀行が重視する決算書上の様々な指標をキープし続けている法人に対してだけであり、そうでない場合は冷たいものです。
具体的には、3期連続の黒字の決算書を提出できることが「積極的融資先」となる最低基準です。赤字の法人や設立して間がない法人に対しては、融資はされないものと思って下さい。

ここで「節税(所得分散)のために、法人を設立して物件を購入した」という話を事業化と勘違いされる方がいるかもしれませんが、これは「資産管理法人」であって、通常の事業法人とは違います。
資産管理法人は、属性上は個人と同じです。だから個人で融資枠を使い切っているような人は、法人を設立しても追加の融資を受けることはできません。事業法人は、基本的に個人とは別ものとして審査されますし、それが最大のメリットであることは前回のコラムで説明した通りです。

個人の枠を使い切ったあとや、サラリーマンをリタイアしてから法人を設立すると、上記の理由で物件を購入しづらい期間が生じてしまいますので、できるだけスムーズに「個人→事業法人」への移行ができるよう工夫する必要がありますね。こちらについては、今後のコラムで採り上げたいと思います。

◆どんなに良い物件を持ち込んでも・・・。

サラリーマン大家のうちは、「物件7割、属性3割」くらいの審査ウエイトです。
属性も大事なのですが、「この物件は販売価格1億円に対して9500万円の評価が出ています。500万円+諸費用分の金融資産をお持ちで、年収700万円以上の方に融資可能です」というように、足切り基準のような意味合いで属性をチェックされているイメージですね。

これが事業化したあとは逆に「物件3割、属性7割」くらいになります。
凄まじく決算書指標が良いと、一定金額以内の物件であればほとんど融資が通ってしまいますし、決算書が良くない法人はどんな良い物件を持ち込んでも審査のテーブルにさえ乗りません。ひとたび経営が悪化した法人がリカバリーする難しさはサラリーマン大家さんの比ではなく、事業化のひとつのデメリットとも言えるでしょう。

◆限度額以外は、大して有利ではない。

規模の拡大が理論上無限であることは、前回のコラムでお話しました。森ビルの年間賃料収入は1400億円ということで、とても夢があるお話でしたね。

しかし、金額について凄まじいメリットがあるほかは、サラリーマン大家さんに比べて有利な点は少ないと言ってよいでしょう。一番顕著なのが、審査のスピードです。

同じ売り物件を、サラリーマン大家さんと事業者がそれぞれ新規取引となる金融機関に持ち込んだとしましょう。どちらも最終的には融資に通るものとします。
この場合、先に融資承認が下りるのは間違いなくサラリーマン大家さんです。銀行員が優秀かどうかによって多少の誤差はあるかもしれませんが、そもそも「審査をされる項目」が事業者に比べて桁違いに少ないからです。

サラリーマン大家さんの場合、物件そのもの以外で審査に必要なものは、基本的に「源泉徴収票」のみです。既に不動産投資をしている場合は、保有物件の資料や確定申告書も必要ですが、せいぜい数十枚程度の資料提出で済みます。
これが事業者だとそうはいきません。決算書3期分は当然ですし、事業内容を説明するような資料に加えて、既に保有している物件数も多いので、資料の枚数はどんどん膨れあがります。複数の会社に関与していたりすると、決算書もそれぞれ3期分を求められます。
資料を読み込んで稟議書を作成しているうちに、サラリーマン大家さんはすんなりと審査の階段を駆け上がって融資承認にこぎ着けていることでしょう。

ちなみに、ぼくが昨年購入しようとしていた物件の審査をあるメガバンクに依頼した時には、指示された資料を積み上げると20㎝を超えました。キンコーズのコピー代で8千円以上掛かるので、費用もバカにならないですね。
しかもこれだけやって、審査は全然ダメだったんですよ。本当に腹が立ちます。

そのほか、融資期間や金利についても、取引の初期段階ではサラリーマン大家さんの水準に負けてしまうことが多いです。去年ぼくは、個人でも法人でも一棟ものを購入して融資を受けましたが、圧倒的に個人の方が良い条件でした。

このように、融資の限度額以外の要素は総じてサラリーマン投資家に比べて不利な事業者ですが、利益を出し続けてピカピカの決算書を作り込み、金融機関との信頼関係をガッチリ強化できた法人はまさに無敵です。
その領域を目指して、日々の賃貸経営を頑張っていきましょう。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社ネクスト(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

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