寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の事業化計画

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

7.自分で経験した「事業化遅れ」の失敗。

こんにちは。前回まで2回続けて決算書(自己資本比率)の話をしました。
今回のコラムは決算書における別の指標について説明する予定でしたが、難しめの話が続いているような気がするので、少し話題を変えて「自分の事業化」がどうだったかについてお話をしてみたいと思います。

ぼくが最初の収益物件を購入したのが2004年8月。
勤務先を辞めたのが2007年10月ですから、既に「事業者」として不動産投資・賃貸経営をしている期間の方がずっと長くなっています。

◆サラリーマンの利点はフル活用すべき。

「事業者ってそもそもどういう状態か」というと、簡単に言えば「サラリーマン投資家ではない」ということです。

サラリーマン大家さんの定義は、「サラリーマンの属性を利用して、アパートローンなどの定型融資を中心に投資規模を拡大しているステージ」と説明するのが一番正確でしょう。
サラリーマンであっても、サラリーマン属性を活用せず(または「活用できず」)に、最初から事業者として投資をされている方もいます。
また、いわゆる「サラリーマンとしての枠」を使い切った大規模な大家さんは、勤務先を退職せずとも「事業者」として規模を拡大していきます。
「サラリーマン大家=不動産投資をしているサラリーマン」という訳ではないということですね。

ただ、ぼくの場合はサラリーマン投資家のステージは、勤務先の退職によって終了しました。
退職時の投資規模は、約3億円。利回りの高い物件を狙って購入していたので、賃料収入は、満室時で毎月450万円くらいでした。
金融機関勤務ということもあて、比較的高めの給与収入がありましたので、サラリーマンとしてあと数億円の融資を受けることはできたと思います。

このコラムでも何度か説明していますが、サラリーマン投資家というのは非常に恵まれた立場です。
購入できる物件は似たような数パターンに限られますが、金融機関の基準に沿ってさえいれば非常に簡単に融資を受けることができますし、審査のスピードも早いです。
不動産を買うためだけにサラリーマンを嫌々続けるのはお薦めしませんが、有利な状況を活用しないというのはもったいないですね。

自分の場合は、我慢してサラリーマンをあと1~2年続けるべきだったというよりは、購入基準を多少緩めてでも、退職時までに多くの物件を買っておくべきだったという反省点があります。
当時、購入を見送ったけれども「今思えば買っておけばよかったな」という物件は、2つや3つではありません。

◆辞めてから事業化・・は最悪パターン。

しかし、それ以上にもったいなかったなと思うのは、「事業化の準備が遅れたこと」です。
前述の通り、勤務先を退職したのは2007年10月なのですが、サラリーマン時代に購入した全ての物件は個人名義で、退職日時点では自分の法人さえ保有していませんでした。

当時は、法人設立や事業化についての知識も乏しく、また「しばらく不動産を買うのは控えようかな」なんて思ってもいたので、退職、引っ越し(社宅に住んでいたので)も落ち着いたあとで税理士さんに相談するというスローペース。
12月の下旬にようやく、自分の法人が登記できたという訳です。

不動産投資で主に融資を受けていたのは遠隔地の地方銀行だったので、法人の口座はとりあえず自宅近所の横浜銀行に開設しました。
開設時に、「自分は不動産経営をやっていて、今後も拡大していきたい」というようなお話は窓口でしてみたのですが、まぁこれが非常に・・・何というか、聞き流されている感が満載の状態でした(笑)

そりゃ、開設した口座に入金した金額も10万円とかそんなもんですし、こちらには実績として見せる決算書もありません。というか、売上もまだゼロ円。
個人の確定申告はもちろんしていました。
しかし、それを横浜銀行の行員さんに見ていただいたとしても、読み取れるのは

・自行の営業エリア外に不動産を多数所有している。
・しかも、購入からの期間も短く、残債が全然減っていない。
・借入3億円で所持金500万円くらい?自己資本比率1%台は話にならない。
・立て続けに購入しているため、利益(不動産所得)もわずかしか出ていない。

という数々のネガティブ情報だけですので、見せる気にもなりません。

そのため勤務先退職後しばらくは、金融公庫で区分マンションを購入するくらいしか選択肢がなく、地道に1戸ずつ購入していく程度の投資しかできませんでした。

ラッキーだったのは「黒字の決算書を出すまで一棟ものはムリだな」と理解ができていたことで、退職直後は変な悪あがきをしないで別の事業(不動産教材の製作やメールマガジン広告など)に邁進できたということです。

特に、メールマガジンを使った広告配信やアフィリエイトでは、年に1千万円以上の利益を継続して出すことができました。
サラリーマン時代に購入した物件も、いくつか売却することで手元の現金を爆発的に増やすことができ、その間に規模は小さいながらも黒字の決算書を出せるようにもなりました。

また、その頃仕方なく始めた区分投資は、今や完全に仕組み化できており、自分がほとんど関与しなくても勝手に増えていくようになっています。
このコラムを書いている時点で、購入した区分マンションの合計は約3億円&29戸。現在も20戸以上を保有しています。

自分のやりたいことができなくても、その時にできることを一生懸命することで、道が開けていくのかな・・なんて思いますが、
いずれにしても勤務先退職後に一棟もの物件が買える状況になったのが2010年12月以降(自社決算が11月末なので)、実際に買えたのが2012年でした。

◆法人化の目的は、節税ではない。

思えば回り道をしたものです。退職後4年以上も、一棟ものを買ってないのですからね。

家賃月収が月額100万円を超えたあたりで自分の資産管理法人を立ち上げ、家主代行という形で家賃の1割くらいを毎月法人に移していれば、
退職時には3期目&設立以来ずっと黒字という優良な会社をもって事業者としての不動産投資ができていました。
そうすれば、リーマンショックで不動産価格がぐっと下がった時期にも融資を受けて、優良な物件を何棟も購入できていたことでしょう。

不動産の法人化についての書籍やコラムは、ほとんど税理士さんによって書かれています。税理士さんが書く以上、メインのテーマは税金。
節税ができるかどうかという観点で考えると、資産管理法人を設立すべきタイミングは相当規模の不動産所得を得られた後になります。

しかし「事業者として認められる」ということを目的とするならば、法人化のタイミングは早すぎるということはありません。一棟目を買う時でもいいくらいです。
住民税の均等割りや税理士費用で収益的にはマイナスであっても、規模を増やしたいなら法人化はさっさとすべきであると、自分の経験から断言できます。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社LIFULL(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

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