寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の事業化計画

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

8.債務償還年数を縮めて、優良企業になる。

今年もあと2ヶ月。2016年の不動産投資はいかがでしたか?
ぼくは8年前に6千万円で購入した一棟ものマンションを、3月に売却しました。
購入については、今年は区分マンションがたくさん買えておりまして、今月決済のものを入れると10物件増えました。
ぼくが持っている法人は11月が決算なのですが、税理士さんから頂いた決算予想を見ると、
確かに買った分だけ資産(土地と建物)の数字が増えています。
決算書というのは、企業の活動をほんとうに適確に示してくれてるなぁと感心します

◆決算書をいちばん効率よく学習する方法。

決算書の話は何度も出てきていますが、まだご自身の法人を持っていないサラリーマンの方だと、ちょっとイメージがつきにくいかもしれませんね。
ここでやりがちな失敗は「決算書がみるみる分かる」のような書籍を買ってしまうことです。
ぼくも不動産投資をする前に、自分のビジネススキル向上のために同種の書籍を何冊か買ってみましたが、まったく役に立ちませんでした。

役に立たない・・というのは語弊がありますね。自分には理解ができなかったのです。
ぼくはそんなに数字に弱い方でもないし、人並みの理解力はあるつもりだったのですが、
この手の書籍は全然ダメ。
しかし、いざ自分の法人を作って決算を迎え、税理士さんに作ってもらった自社の決算書を眺めていると、これが驚くほどスムーズに理解できるのです。

物件を購入すると「土地」と「建物」という資産が増え、一定の「現預金」が減ります。
同時に銀行から借り入れた分だけ「長期借入金」の数字が増えて会社の資産規模が大きくなります。
そのまま一定期間が過ぎると、家賃収入によって現預金は増加しますが、建物の価値は減価償却によって減っていきます。
返済が進むと借入金の残高も減っていきますから、「資産-負債」で表される純資産(資本)は増えていき、会社がより屈強になっていくという訳です。何だか、エレガントだなぁと思いませんか。

決算書の知識に今ひとつ自信がないという方も、まずは法人を作って税理士さんと顧問契約をして、出てきた決算書について質問しながらじっくりと読み込んでみてください。
あっという間に、スラスラと読めるようになることでしょう。そして、決算書を「エレガント」だという気持ちも理解できるはずです。

◆「借入完済まで、何年かかる?」が分かる指標。

さて、今回のテーマは「債務償還年数」です。
聞き慣れない言葉かと思いますが、
これは「今年のキャッシュフロー何年分で、現在の借入を完済できるか」という数値のことです。
会社の収益性と負債のバランスを把握するための指標で、
現在の借入残高が「まだまだイケる」のか「借りすぎ」なのかを判断しています。

計算式は「債務の総額-現預金」÷「経常利益×(1-税率)+減価償却費」です。

会社の運転資金として必要な分を控除するとか、
より細かい計算方法もありますが、不動産投資家さんでしたらこのくらいで十分でしょう。
1億円の残債(現金ゼロ)がある法人の場合、税金を払ったあとの利益で500万円。
減価償却費として計上した金額も500万円だとすると、
債務償還年数は「1億円÷(500万円+500万円)」で10年ということになります。

この債務償還年数がどの範囲であれば良いかというと、
一般的な書籍やネット情報では「10年以内が望ましい」と説明されています。

ただし、莫大な借入が伴うものの、ほぼ全ての借入が「資産を購入する」ことが目的である不動産賃貸業は、債務償還年数に比べると資産と負債のバランスが取れていることが多いため、
基準を緩めて適用している金融機関が多いようです。
具体的には、15年までは安全圏。20年を超えると厳しいと思われます。
債務の総額は計算すればすぐに分かりますので、その数値を15で割った金額を「利益+減価償却費」で超えればよいという訳です。

◆目先の納税額を減らすよりも・・?

債務償還年数を短くするためには、「利益」と「減価償却費」を増やせば良いということになります。
利益が簡単に増えるなら苦労はありませんが、事業化した賃貸業も普通の企業ですから、相応の努力はすべきでしょう。

・入居率を高くキープし、家賃収入を1円でも多く稼ぐ。
・定期的な物件売却(コラム第6回参照)を行い、現金を積み上げる。
・過度な役員報酬を取らない。
・経費になるから・・という安易な理由で無駄づかいをしない。

非常に当たり前の話ですが、経営者としてやるべきことはやっておきましょう。
当然、税金を多めに支払うことになりますが、納税こそ将来融資を受けるための必要経費であるとも言えます。

それから、上記の計算式を見ると「減価償却費」であれば、いくら増えても償還年数に悪い影響はないということが分かります。
減価償却は費用(経費)ですが実際に現金が出ていくものではありませんので、法人の利益にプラスして償還年数の計算をします。
となると、勘の良い読者さんならお気付きになると思いますが、不動産賃貸業では「費用にする」か「償却資産にする」のかを選択できる支出が結構たくさんあります。
これを使って償還年数を調整するのです。

例えば一定の基準を満たした修繕費は、金額に関わらず一括で「修繕費」として費用計上することもできますが、建物の価値を上げたとして償却資産にすることも可能です。
不動産を新規で購入した際の取得税。結構な金額を支払うことになりますが、法人の場合は不動産の取得価格に含めて資産計上することもできます。

このように「費用にしても、資産にしても良い」という支出を、極力資産計上していくことで、債務償還年数に大きなインパクトを与えることができます。

1千万円の期中利益を出している大家さんが、200万円の不動産取得税と、500万円の「費用にもできる修繕」を行った場合で計算してみると、以下のような違いが出ますね。

A:全てを費用計上した場合
1000万円-200万円(取得税)-500万円(修繕)=300万円
 
B:どちらも資産計上した場合
(1000万円-その年の償却分)+(その年の償却分)=1,000万円

※償却によって経常利益は減りますが、償還年数の計算で別途プラスされます

Bの場合は資産計上をしなかった場合に比べて多くの法人税を支払うことになりますが、債務償還年数の分母となる数値に、3倍以上の開きが出ることになります。
(償却の計算は、土地と建物の割合や建物の築年数によって変わります)
そしてBの大家さんは、翌年もその翌年も一定額を償却していけるので、最終的に費用計上できる金額の合計はさほど変わりません。
ついつい、単年度の納税額を減らすことに注力してしまいがちですが、こういった工夫が大きな差を生むこともあります。

ということで、自己資本比率のところでも話しましたが、決算書作りは奥が深いものです。やり手の大家さんになると、決算が近くなったら銀行の担当者を交えて、最終的な数値を決めていくそうです(笑)
経営努力と工夫の結晶であるピカピカの決算書を武器にして、どんどん融資額を増やしていきたいですね。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社ネクスト(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

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