寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の事業化計画

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

9.ほかのビジネスも考えてみよう。

2016年最後のコラムになりました。
年末は普通の会社よりは「仕事納め」を早めにしていまして、空いた時間を翌年の計画や目標作りに充てるようにしています。「1年の計は元旦にあり」なんていいますが、年初からスタートダッシュするためには、前年のうちにちゃんと考えておくほうがいいと思っています。
不動産だけでなく、ご自身のお仕事や家族、健康面なども含めて総合的に考えてみることをお薦めします。

◆買えば買うほど悪くなる決算書

これまでのコラムで、何回かに渡って決算書について学んできました。
サラリーマン大家さんに比べて「手持ちの現金」「自己資本比率」「債務償還年数」がポイントになるということをご理解いただいたかと思います。
常に借入額の何割かにあたる現金を持っていることで高い自己資本比率をキープし、ガンガン利益を出して償還年数を縮めていくのが、融資を受け続ける=物件を買い続ける秘訣ということです。

しかし、不動産投資というものは多額の借入を伴う「ローリスク・ミドルリターン」の事業です。
さらに、規模を増やす場合には特殊な場合を除いて現金を減らすことになりますので、規模を増やせば増やすほど上記の3指標は悪くなるというジレンマが発生します。
フルローンで不動産を購入できたとしても、諸費用の支出で現金と利益が減り、借入が増えることで償還年数が延び続けるという訳です。

その改善方法として、「計画的な物件売却」についてのお話もしましたが(コラム第6回)、
今回はもうひとつの改善手段である「他のビジネスに取り組む」ことについてお話をしたいと思います。

◆弱点を補完しあうビジネスを選ぶ

不動産投資のメリットはいろいろありますが、収益面について言えば「安定して売上(=家賃収入)が得られる」ということに尽きるでしょう。
業務のほとんどをアウトソースできるので、保有することだけで言えばさほど労力や時間が掛からないのも特長です。
一方、先述したように「規模の拡大が決算書を悪化させる」というのは、弱点のひとつとも言えそうです。

ここで視点を変えて他のビジネスを考えてみましょう。

例えば、ぼくはこのコラムを執筆することによって原稿料を頂いています。金額は家賃に比べると非常に小さいですが、売上を作るにあたって借入が発生していないどころか、何の原価も掛かっていません。利益率はほぼ100%です。
原稿料というのは比較的レアな収入かもしれませんが、借入がなく利益率が高いという業態は意外とたくさんあるものです。
規模は小さくても構わないので、そのようなビジネスを併行して取り組むことで、決算書の中身が良くなり、物件購入のペースが上がるという訳です。

ちなみに自分の場合は、原稿料や講演の収入のほか、メールマガジン広告や火災保険のコンサルティングなどが「借入を伴わず利益率の高い売上」です。
ここで「金融公庫の創業融資制度を使って、飲食店のフランチャイズでもやろう」なんて考えてはいけません。お金を借りては意味がありませんし、そういった業種の利益率はさほど高いものではありません。食べるのが好きでも、そこは我慢です。

◆小さな売上でも、決算書へのインパクトは大きい。

実際に事例を出して見てみましょう。
不動産賃貸業を行っている法人が1億円の物件を購入したとして(借入1億円、諸費用は手持ちの現金で支払い、現状法人の現預金はゼロ)、家賃収入を1千万円得たとします。
そこから経費となる利息や管理費・修繕費などが600万円掛かったとすると、利益は400万ですね。しかもここから元金返済をしなければなりません。
この法人の自己資本比率は、現状ほぼ0%です。得られたキャッシュフローが現預金に貯まる程度ですね。減価償却が200万円ほどあったとしても、債務償還年数は15年を超えてしまいました。

ここでこの法人がちょっとしたビジネスに取り組んで、300万円の利益を出したとします。これくらいなら、何とかなりそうですね。
しかし、決算書に与えるインパクトは小さくありません。利益の合計は700万円になり、債務償還年数は一気に改善し、借入もないので利益はそのまま現預金として残ります。売上規模は賃貸業の何分の1であっても、やらない手はないのです。

◆不動産投資と併行して取り組みやすいビジネスとは?

ただし、設立した法人の業歴がまだ浅く、金融機関から「資産管理法人」として扱われている場合は他業への進出は慎重になった方がよいでしょう。
資産管理法人は法人格であっても、審査は個人の属性・与信をもとにします。
不動産賃貸業などの資産管理と関係の無い業種が登記簿に載っていたりすると、資産管理法人として扱われず、「業歴が浅くて融資対象ではない事業法人」と見なされてしまいます。

そこで注目したいのが、「転貸によるビジネス」です。
民泊やレンタル収納などの転貸ビジネスは、家具や造作などの初期投資が要るものの借入なしでも取り組める程度ですし、通常の賃貸業に比べて利回りも高いため、キャッシュを得て利益を計上するという目的に適しています。
不動産購入で常につきまとう「自己資金不足」の解消にも貢献しますし、いきなり畑違いの業種に参入するよりも成功の確率も高いはずです。
コインパーキング、会議室運営など、転貸系の事業は意外とたくさんあります。「デカいマンションをどーんと買って稼ごう」という方にとっては面倒くさいなぁと感じるかもしれませんが、決算書の改善という視点で取り組んでみるのもお薦めです。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社ネクスト(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

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