先月は4年ぶりに事務所の引っ越しをしました。
自分の不動産投資のための法人を作ってから、今回の移動で4カ所目。引っ越しの作業自体は業者さんがほとんどやってくれるのでいいのですが、大変なのが「移転の連絡作業」でした。
以前のときと比べて取引のある業者さんも増えていますし、金融機関や区分の管理会社さん、家賃保証の会社などなど。移転後に思い出して慌ててFAXを送るような会社もあって、本当に大変でした。
さらに、太陽光パネルの発電事業は経済産業省への届け出をしているので、それも変更の
申請をしなければなりません。社員さんにはかなりの負担を掛けてしまいました。
■木造アパートは定期的にブームになる
さて、融資が厳しくなっている話を先月も書いた訳ですが、「不動産会社を訪問しても、まったくお客様扱いされなかった」「金融機関で門前払いされた」というような話を実際に聞くようになっています。
お金を借りるということは本来とても難しいものなのです・・という話を、孫正義さんの事例を出したりして何度も強調していた訳ですが、そういったことを理解された方からこんな質問メールが届きました。
※参照コラム https://toushi.homes.co.jp/column/keisuke-terao/terao03_01/
フルローンの物件を何度か見に行ったりしているうちに融資が厳しくなってしまい、今では「小ぶりのアパートから始めた方が良い」と大家さんの先輩から言われたりしています。
ですが、郊外にある古いアパートを見ると、これまで見ていた物件に比べて住みづらそうです。また、耐用年数を超えて融資を受けることで、今後の買い増しに支障がでないか心配です。
寺尾さんは、木造や軽量鉄骨のアパートについてどう思いますか?お勧めされますでしょうか。
ということで、何度目かの木造アパート回帰現象が起こりつつあると思います。
ぼくが不動産投資を始めたのは2004年ですが、その頃サラリーマンが買える収益物件といえば、区分マンションか木造アパートでした。RCマンションをガンガン買えるようになったのは、2005年の終わりくらいに「光速投資法」や「通販大家さん」が流行ってからのことです。その頃にはアパート系の物件は非常に不人気でした。
その後、リーマンショックの影響で融資が厳しくなり、有名な投資家である石原博光さんが出された「まずはアパート一棟買いなさい」という書籍がベストセラーになったことで再び中古アパートのブームが来ました。
しかし、昨今のフルローン・オーバーローンが当たり前という状況の中で、またしても人気は低下しました。フルローンの出る物件の利回りがどんどん下がる中、高利回りの中古アパートは普通のポータルサイトにも掲載されている状況です。
■「成長できる」投資スタンス
ぼくの考えとしては、木造・軽量鉄骨の高利回り中古アパートは、選択肢として「かなりお勧め」です。理由はたくさんありますが、主なものは以下の通りです。
1.お買い得物件を見つけやすく、規模も小ぶりのものが多いのでリスクが低い。
2.リフォームや入居付けの努力が必要な分、大家としての実力が上がる。
3.融資付けを自分でしなければならないことが多く、投資家としての実力も上がる。
4.既に自己資金なしで何億円も買える時代ではなくなっているので、「与信毀損を避ける」ことは、もはや最優先の条件ではなくなっている。
中古アパート購入時の融資を受けやすい金融機関としては、日本政策金融公庫が挙げられます。ぼくも最初の物件を購入した際にお世話になりました。
公庫は低利固定、繰り上げ返済の違約金もない大変ありがたい金融機関ですが、返済期間が短い(通常10~15年)ので、利回りの高い物件を買わないといけません。
高利回りの物件を買って早いペースで元金返済を進めていくと、早い段階で「残債を大きく上回る金額で確実に売れる状態」を実現することができます。
そうなると投資のリスクはほとんどなくなり、金融機関から見た場合の与信の毀損も問題にならないようになってきます。
仮に一部の金融機関からマイナス評価をされたとしても、実際に物件を売却して「売値-残債」の金額がドカンと入ってくれば、以前は買えなかった種別・金額の物件も購入視野に入れることができます。
運営面ではちょっと大変ですが、頑張って買って一生懸命運営して、何年か後に売却したら資金の面でも実力の面でも大きくレベルアップしていた・・というようなストーリーが、かなりの再現性をもって自分のものになるという訳です。
■中古アパート投資の注意点
購入運営するにあたっての注意点として思いつくものを挙げてみました。
RC系からのシフトチェンジを考えている方の、参考になれば幸いです。
1.入居付けの努力は必要
RC系の物件に比べて、木造・軽鉄のアパートの人気は高くありません。
ただ、設備やデザイン・管理状態もイマイチな物件が多く、そこを改善していくだけでライバルを圧倒する人気物件に仕上げることも可能です。
物件の価値を安く効果的に上げる方法は、いろんな大家さんの事例を「真似る」ことでどんどん自分の中のストックを増やしていけますから、さほど難しいものではありません。
また、規模が大きな物件に比べると、管理会社さんの力の入れ具合が若干物足りないかもしれません。そこはコミュニケーション力と自分の頑張りでカバーしましょう。
2.限界まで高い家賃を狙わない
デザインリフォームに加えて考えつく限りの設備を導入し、RCマンションに劣らない賃料で募集している物件も見かけますが、ぼくはあまりお勧めしません。
いくらリフォームでキレイになり、築浅RCと変わらない設備があったとしても、躯体の差が埋まりません。高い家賃で入居されている方は物件に求める水準も高くなりますので、上階や隣の入居者が出す音の問題などでクレームが発生したり、短期の退去につながったりするリスクが高まることが予想されます。
こぎれいなお部屋を作って、築古アパートらしい「おおらか」な入居者さんに入ってもらうのが一番ですね。
3.土地値は意識する。
地方の築古高利回りアパートの場合、利回りが20%近くのものであっても、売出価格に占める土地値の割合が50%未満ということがあります。
これが東京だと、土地値未満であっても利回り7%だったりするエリアもあるのですが、いずれにしても利回りだけにとらわれるのは危険です。
土地値割合が低くても保有期間中の収益やキャッシュフローに変わりはないのですが、将来的に高く売却しようとする際に、次の買主への融資の付き方が変わってきます。
売却しようとする時期の残債が土地値を下回っていれば、最悪でも更地価格で売ることができますので、古い物件についての最大のリスクである「出口の不確実性」からも解放されます。
RCマンションでは実現しにくい、中古アパートの利点のひとつになるでしょう。
4.「3点ユニット」物件に注意
古いアパートではバス・トイレが別になっていない「3点ユニットバス」物件の割合が多いのですが、3点ユニットでも入居がつくかどうかはエリアによってかなり違います。
基本的に、3点ユニットを選ぶ理由は「セパレートの物件よりも家賃が安いから」です。ですから、セパレートの物件に比べて十分に安い賃料で募集をしても収支が合うかどうかを確かめてから購入を判断してください。
経験上、セパレートの物件より5千円以上低い家賃で募集ができれば、割安さに魅力を感じて3点ユニットを選ぶ入居者が増えてきます。逆にいうと、セパレートの部屋でも家賃3万円台前半で募集されているようなエリアであれば、3点ユニット物件の購入はかなり危険だということです。