寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 悩める投資家への「目からウロコが落ちる」アドバイス 誌上チャレンジ面談

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

27.「決算書思考」で不動産投資が変わる(前編)

このコラムは「誌上チャレンジ面談」というタイトルで連載をしていますが、実際にぼくに相談に来られる本当のチャレンジ面談では、日々いろいろな相談を受けており、それがコラムや講演の題材になることも多いです。

これまでに何百人かの方から相談を受け、ぼく自身の「相談スキル」もかなり上達したとは思いますが、時には相談に来られた方の偏った(または間違った)考えを正すが難しいようなこともあります。
特に物件や投資指標の分析については、前提としてある程度の会計についての知識が必要であることも多く、そういった知識がない方にとっては説明が理解しづらいのです。

かくいう自分も最初は決算書をきちんと読むこともできず、投資について間違った考え方をしていました。そこで今回は「決算書を理解することで変わる不動産投資の考え方」についてお話をしてみたいと思います。

決算書とは?

ちなみに、決算書についての知識がないからといって、書店で売っているような「決算書の読み方」などの本を買って勉強する必要はありません。まったく経験のないスポーツの解説本を読んでも意味が分からないのと同様に、会計は経験を伴わない知識の習得が難しい分野です。
それよりも、自分で不動産の収支を会計ソフトに入力して(個人で購入している場合でも法人に見立てて)決算書を出力してみましょう。その数字の流れをしっかり読み取ることで、一通りのことは理解できるようになります。

未経験の方向けに簡単な説明をさせていただくと、決算書は主に「貸借対照表(バランスシート B/S)」と「損益計算書 (プロフィット&ロス P/L)」で構成されています。
損益計算書は、一定期間におけるお金の「流れ」を示したもので、家計簿を月次や年次でまとめたようなものに近いです。一方、貸借対照表は現時点での資産と負債をまとめたものです。

キャッシュフローは決算書と関係ない

決算書を知ることで起こる変化のひとつは「キャッシュフロー」についてです。
不動産から生まれている余剰金は、まさに「収入が増えた」と実感させてくれるものであり、不動産を持っている満足感にもつながります。
また、修繕やトラブルなど不測の事態に備えるためにも一定規模のキャッシュフローは必須であり、基本的にキャッシュフローが生まれない投資はすべきではありません。

しかし、キャッシュフローは決算書上、ほとんど意味がありません。
あってもなくても、決算書は大して変わらないのです。

例えば月に10万円の収入がある不動産を1千万円の借入で購入したとしましょう。
金利は元利均等の2%とします。

返済が長めの30年だった場合、毎月の返済額は36,961円ですからキャッシュフローの月額は63,039円です。これが短めの10年返済になると月の返済額はぐっと増えて92,013円。キャッシュフローは7,987円しか残りません。

この2つの事例が決算書上でどう反映されるかを見てみます。まずは損益計算書から。

【30年返済の場合】
 収入   100,000円 
 支払利息  16,666円
 利益    83,334円

【10年返済の場合】
 収入   100,000円
 支払利息  16,541円
 利益    83,459円

支払い利息のみを経費算入するので、利益の額はほとんど変わりません。返済が進んでくると短期返済の利息割合がどんどん減っていくので、損益計算書上の利益は短期返済のケースの方が多くなります。
そしてキャッシュフローという指標は・・・どこにも出てこないのです。

次に1年経過時の貸借対照表を見てみましょう。分かりやすくするために、建物の減価償却は計算しないことにします。

【30年返済の場合】
資産:現預金 756,468円(※キャッシュフローの12ヶ月分)
   土地と建物 10,000,000円
負債:長期借入金9,754,212円
純資産(資本)1,002,256円

【10年返済の場合】
資産:現預金  95,844円(※キャッシュフローの12ヶ月分)
   土地と建物 10,000,000円
負債:長期借入金 9,087,504円
純資産(資本) 1,008,340円

短期返済の場合はキャッシュフローが少ない分そのまま元金の返済が多くなるので、利息が少ない分だけ純資産の増え方は大きくなります。
1年だと分かりづらいので、10年後でも見てみましょう。片方は返済が終わっています。

【30年返済の場合】
資産:現預金 7,564,680円(キャッシュフローの120ヶ月分)
   土地と建物 10,000,000円
負債:長期借入金 7,306,417円
純資産(資本) 10,258,263円

【10年返済の場合】
資産:現預金 958,440円(キャッシュフローの120ヶ月分)
   土地と建物 10,000,000円
負債 なし
純資産(資本) 10,958,440円

このように、貸借対照表上でもキャッシュフローはほとんど影響がないことが分かります。

むしろ、銀行が重視している「自己資本比率」でいうと残債のない後者が圧倒的に優れており、
次の融資が受けやすくなると思われます。

本能を決算書が修正してくれる

上述したようにキャッシュフローが生まれない投資は危険ですが、返済年数を必要以上に延ばしてキャッシュフローを増加させても意味がないだけでなく、利息負担を増やし無駄づかいを助長する(手元にお金があるので)ことにもつながります。

手元の現預金が増えることは、誰もが「資産が増えた」と思えますが、元金を返済することを「純資産が増えた」と満足できる人は多くありません。逆に「支出した。お金が減った」と感じることがほとんどでしょう。
そういった本能的な思考を、決算書の知識が修正してくれるのです。

物件や融資条件を選択する際には、現預金にだけとらわれた偏った判断ではなく、決算書上の利益や資産増減がどうなるのかで決めていくべきかと思います。
想定していたより融資期間が延びずキャッシュフローが少ない場合でも、物件自体が良いものであれば積極的に購入しましょう。

次回は後編として、自己資金の拠出や売却時について説明する予定です。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社ネクスト(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

他のコラム著者も見てみる

不動産投資家によっても違いは様々。
LIFULL HOME'Sが厳選した不動産投資家や専門家のコラムから色々な不動産投資スタイルを吸収してライバルに差をつけよう!

石川 和寿

シリーズ連載: 不動産会社のプロの意見

最新コラム: 賃貸のプロが教える入居者募集の6つのコツ

藤田 博司

シリーズ連載: 不動産投資家が次に着目している民泊投資とは

最新コラム: 民泊の準備で困ったこと

樗木 裕伸

シリーズ連載: 不動産投資を始める人のノウハウ

最新コラム: 不動産投資ローンと住宅ローンの違いと5つの金融機関の特徴

逆瀬川 勇造

シリーズ連載: 不動産投資を始める人のノウハウ

最新コラム: 不動産投資は常に融資との戦い?ローンの基礎知識や流れを解説

LIFULL HOME'S 不動産投資編集部

シリーズ連載: 不動産投資を始める人のノウハウ

最新コラム: 不動産投資の鍵「経費」を理解しよう!経費の種類・範囲は?

風戸 裕樹

シリーズ連載: 初心者のための東南アジア投資ガイド

最新コラム: 第2章 日本の不動産市場と海外投資(3)

金井 規雄

シリーズ連載: アメリカ・ロサンゼルスで不動産投資 7年で1億円

最新コラム: あとがき

橋本 秋人

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

最新コラム: 不動産投資で押さえておきたい土地の公的価格

LIFULL HOME'S PRESS

シリーズ連載: HOME'S PRESS編集部

最新コラム: 新たに始まる「住宅ストック循環支援事業」は特色のある制度に

田中 圭介

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

最新コラム: No.41インドネシア不動産投資のチャンス その2

佐藤 益弘

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

最新コラム: 高齢化と不動産投資(2)~「簡易生命表」を見て、人生100年時代を理解する

菅井 敏之

シリーズ連載: 誰も教えてくれなかった「銀行」~その傾向と対策~

最新コラム: 【第四回】必ず行っておきたい、銀行との「コミュニケーション」

LIFULL HOME'S不動産投資フェア

シリーズ連載: 2018/9/15+16 投資EXPO出展企業インタビュー

各出展企業インタビュー記事はこちら

LIFULL HOME'S マーケティング部 データ編集担当

シリーズ連載: ユーザーの本音から探る不動産投資

最新コラム: 将来性を秘めた街 『都心』エリア

鈴木 学

シリーズ連載: ヨーロッパの不動産事情

最新コラム: 経済苦境続くギリシャ不動産のいま

石渡 浩

シリーズ連載: 不動産投資に有益な融資を受けるための知識

最新コラム: 第4回 税引後キャッシュフロー偏重の盲点 銀行は決算書のここを見る(後編)

北野 琴奈

シリーズ連載: 今後はどうする?不動産投資と資産形成・運用の考え方

最新コラム: 利下げと不動産投資

猪俣 淳

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

最新コラム: フィッシャー・ハドソン・ウィルソン・モデル

右手 康登

シリーズ連載: CPM®流「相続・不動産経営 実践術」 右手 康登のコンサル「みぎからひだりへ」

最新コラム: 島国の中での常識 VS グローバルスタンダードを知ることの重要性

末永 照雄

シリーズ連載: 失敗しない不動産投資の法則

最新コラム: 米国不動産投資(2) ― サンディエゴ編

伊藤 英昭

シリーズ連載: 伊東英昭氏の不動産投資コラム

最新コラム: vol.13 マンションと高級車

不動産投資・収益物件を検索するなら【LIFULL HOME'S 不動産投資】賃貸経営[マンション経営・アパート経営]をお考えなら、まずは掲載中の投資物件[投資用マンション・売りアパート・一棟売りマンション]を地域や価格帯、会社で検索して、価格や想定利回りで絞り込み!気になる投資物件を見つけたら物件の周辺情報を調べたり、収益シミュレーションを使って実際の運用をイメージ出来ます。不動産会社へはメールか電話でお問い合わせ・相談が可能です(無料)。不動産投資による資産運用をお考えなら【LIFULL HOME'S 不動産投資】

ページトップへ

情報セキュリティマネジメントシステム国際規格

株式会社LIFULLは、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格「ISO/IEC 27001」および国内規格「JIS Q 27001」の認証を取得しています。