前回のコラムは久しぶりにランキングでトップを獲得しました。(といっても、それまで何ヶ月も不動の1位をキープしていたのは、ぼく自身が書いた日本政策金融公庫の話ですけど)
コラムを読まれて、「よし!不動産を1日でも早く買おう!」と思われましたでしょうか。
実はあのコラム。終盤で「考えるな、感じろ」というブルース・リーさんの名セリフを引用する際、映画で使われた画像を添付する予定だったのです。
しかし、このコラムは上場企業であるLIFULLさんが運営しているので、著作権などで問題のありそうな画像は使用できません。
仕方がないのでリンクを張っておきますが、もしコラムが画像付きであれば、もっとインパクトが強くなりますので、すぐに不動産を買おうとされた読者さんも増えたはずです。
☆「考えるな、買え!」の関連画像です(笑)
リスクの正体を把握する
さて、冒頭で冗談っぽい話をしましたが、融資や資金的に購入できるのに関わらず、いつまで経っても不動産を買ってないような人は、「不動産投資のリスク」について過剰に警戒していることが多いです。
不動産に限らず投資やビジネスのリスクを完全になくすことはできませんが、いつまで経っても物件を買えない人は、そのリスクについての捉え方や理解が間違っている可能性も高いので、今回はその「リスク」について考えてみましょう。
まず、不動産投資を失敗せず正しく進めていくためには、一定の「リスク感覚」を持っている必要があります。
このリスク感覚という言葉は専門用語ではありませんが、「リスクを正しく把握する」みたいな意味で使われていますね。ぼくはもう少し客観性を持たせて「リスクの種類、確率、大きさを客観的に把握できる感覚」という意味で使いたいと思います。
リスクを意図的に見ない失敗例
リスクが怖くて物件を買えない人について話す前に、その逆の例を見てみましょう。
投資に内包されるリスクに見向きもせず、ダメな物件を買って失敗した投資家さんについて考えてみます。サブリース付きのシェアハウスを買ったとしましょう。
正しいリスク感覚を持ち合わせた投資家さんの場合、サブリース付きのシェアハウスを検討するにあたって、以下のようなリスクを想定します。
・購入価格が不当に高いかもしれない。
・設定されている家賃で、実際に入居が決まらないかもしれない。
・入居が決まらない場合、サブリース制度が継続されないかもしれない。
・シェアハウスを販売している会社が、営業不振または倒産するかもしれない。
・サブリースが継続されなくなった場合、自力で客付けできないかもしれない。
ここまでは基本です。
全てのリスク要因から目をつぶり、「永久に家賃保証される」という一点のみに託した結果が一連の事件です。上記のどれかひとつだけでもリスクとして捉え、自分で家賃相場や企業情報などをリサーチしていれば、被害者にはならなかった訳です。
リスク感覚が高い投資家さんの場合、以下のようなことにも気づきます。
・同社の言っていた「地方から入居者を集めてくる仕組み」は現実的だろうか。
・家賃の逆ざやを「就職斡旋などの別ビジネス」で補う計画は他に成功例がない。
・同社の間取りが、シェアハウスのポータルに載せる基準を満たしていない。
・シェアハウスというビジネスモデルは、今後法的な位置づけなどどうなるのか。
・大量に販売されているようだけど、市場は飽和しないのだろうか。
・土地の相場から逆算すると、建築費が高すぎるかもしれない。
後半に挙げたリスク要因については、ある程度の知識が必要ですね。
当然ながら、その分野についての知識や情報が多いほど、リスク感覚は優れたものになってきます。
リスクの把握は「客観的に」「数値で」が基本
では、リスクが怖くて不動産を買えない人について考えてみます。
買えない人からよく聞く、リスクについてのコメントは以下のようなものです。
・これから日本は人口が減るので入居付けができなくなる。
・金利が上がるので、借り入れによる不動産購入は危険だ。
・昨今、日本近海では地震が多発しているからリスクが高すぎる。
・オリンピックをピークに、地価も下がって多くの投資家は破産する。
・不良入居者、滞納、事故死孤独死など、不確定要素が多すぎる。
これらは全て間違いではありませんが、リスク感覚に優れた人のコメントとは言いがたいです。
投資家として適切な判断をするためには、こういったリスクが「どのくらいの確率で発生するのか」「発生したときの損害の大きさはどのくらいか」を把握していなければなりません。
人口が減って日本全体としては入居率が下がるのも、金利が上がるのもおそらく事実でしょう。ただし、リスク感覚を身につけている人であれば、自分の物件にはどの程度の影響が出るのか、不動産投資として失敗に終わる水準というのはどのくらいなのかを考えて、以下のような予想をします。
・満室時家賃での返済比率は55%だ。
・金利や家賃に変動がなければ、入居率が常時70%を切るとCFがマイナスになる。
・地震保険を最大値で契約すれば、土地値と合わせて残債はカバーできそう。
・順調に返済していけば、価格が10年で2割くらい下がっても売却は可能。
・もし金利が今より2%上昇したとすると、入居率は85%をキープする必要がある。それだとちょっと危ないかも。
リスク感覚に乏しい人だと、「金利が4%に上がって家賃が2割下がり、入居率が常時7割を切ると毎月20万円以上の手出しになるので破産する」みたいな自爆シミュレーションをして購入を見送ります。
こんな状態が同時に発生するのであれば、確かに世の中に購入できる物件などありません。
しかし、実際にこうなる可能性というのは何%くらいあるのでしょうか。それはご自身の会社が倒産したりリストラされたり、病気や事故で働けなくなる確率より高いのでしょうか。
リスク感覚が乏しい人は、自分が「たまたま」気になったリスクだけを必要以上に恐れる傾向があります。
タイムリーな話だと、中国で発症した肺炎なんかもそうですね。予防をするのは大事なことですが、日本においては交通事故で命を落とす確率の方が断然高かったりする訳です。
正しいリスク感覚を身につけ、成功率の高い投資をしたいものです。