猪俣 淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

不動産投資を<見える化>する「全国NOI率調査」とは?

不動産投資を行う場合、多くの皆さんが表面利回りによって投資効率を判断していると思います。
つまり「年間家賃収入(満室想定)÷物件価格」という計算をするわけです。
果たしてこれは正しいのか、あるいは、間違っているにしてもどの程度の誤謬があるのか。
この疑問に応えるべく、㈱ネクストとアイレム・ジャパン(IREM-JAPAN=米国不動産管理協会日本支部)は2012年より全国NOI率調査を行っています。
NOI(エヌ・オー・アイ=営業純利益)とはそもそも何でしょうか。

満室想定収入は、あくまでも想定であって空室があればその分収入が減少することになります。
年間100万円の賃料が見込める物件であっても、いつも2割の空きがあるのであれば、その収入は80万円ということです。
そして、物件運営のためには固定資産税・都市計画税の他に、賃貸管理・水光熱費・清掃・点検・メンテナンス・保険・原状回復と、さまざまな運営コストが必要になります。
仮に、満室想定賃料の15%の運営費負担率であれば15万円が更に差し引かれ、実質的な収入は65万円ということです。この65万円をNOI(営業純利益)、満室想定賃料に対する割合(この場合、65万円÷100万円=65%)を「NOI率」と呼びます。
この調査が広く行われることによって、投資家の皆さんが享受できるメリットは、ずばり「不動産投資の見える化」。
ファンドや外資など、いわゆるプロフェッショナルが不動産投資を行う場合、「キャップレート(資本化率)」という利回りを使います。
残念ながら我が国ではキャップレートは、Aクラスビルや商業施設、特定のマンション(都心部で規模が大きく新しいもの)においてのみ公開されていて、しかもそのデータ数は決して多くありません。
多くの個人投資家が扱う中古物件や木造物件が実際どの位のキャップレート=実質利回りで投資されているかということを、表面利回りから算出するためのデータとして地域ごと、構造・間取り・築年数ごとの「NOI率」の整備が急がれています。

実際に売り出されている投資物件を例に挙げましょう。
物件1は都心部の、物件2は地方都市中心部の中古区分マンションです。いずれも立地条件はその地域においては優れた場所にあり、いわゆる人気物件といえます。
築年数はほぼ同じ、月額賃料6.5万円(年間78万円)に対し、価格は物件1が物件2の半額ですから、表面利回りは2倍になります。

比較表物件1(都心区分)物件2(地方区分)
面積・間取り15㎡・1K40㎡・1LDK
賃料(満室想定)6.5万円/月(78万/年)6.5万円/月(78万/年)
物件価格780万円390万円
表面利回り10%20%
平均居住年数2年2年
平均空室期間1ヵ月3ヵ月

いかがでしょうか。
空室期間が気になりますが、利回りに2倍も開きがあるのであれば、やはり物件2に軍配があがりそうです。
では、検証してみましょう。

1年間のうちその物件にどの程度の空室損が発生するかは、平均居住年数と退出後次の入居者が決まるまでの期間によって計算できます。
2年毎の入替、空室期間1ヵ月(物件1)ということであれば、1-24ヵ月/(24ヵ月+1ヵ月)=空室率4%。同様に空室期間3カ月(物件2)であれば1-24ヵ月/(24ヵ月+3ヵ月)=空室率11%。
年間78万円の家賃収入から前者は約3万円の、後者は約9万円の空室損が発生するということです。

次に、運営費負担が賃料の何パーセント相当か(運営費率)を検証します。

運営費(年間)物件1(都心区分)物件2(地方区分)
固定資産税3万円6万円
管理費・積立金12万円18万円
賃貸管理費(5%)4万円4万円
原状回復費用(入替2年毎として)4万円8万円
客付業者へのインセンティブ(同)※3万円13万円
合計26万円(家賃の33%)49万円(家賃の63%)
※=AD。物件1は募集時1ヵ月で仮定。物件2は4ヵ月が通例の地域。
結果として・・・
(年間)物件1(都心区分)物件2(地方区分)
満室想定賃料78万円78万円
空室損3万円(4%)9万円(11%)
運営費26万円(33%)49万円(63%)
NOI(営業純利益)49万円20万円
NOI率(NOI÷年間賃料)63%26%
キャップレート(NOI÷物件価格)6.3%5.1%

いかがでしょうか。
実際の利回りは、逆転してしまいました。

満室想定賃料から空室損・運営費負担を除いた正味の収入(NOI)がどの位の割合で残るのかというデータ集積が構造・築年数・地域ごとに行われるとこういった投資判断が容易にできるようになります。
全国の不動産管理会社への協力呼びかけが行われていますが、個人投資家の皆さんひとりひとりが入力するデータが、皆さんにとっての情報インフラ整備の一助になるということを強調しつつご協力をお願いしたいと思います。(詳細・データ入力はHOME’S不動産投資サイトをご覧ください)

【このコラムの著者】

猪俣 淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における26の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格:
一級建築士・米国認定不動産投資顧問資格(CCIM)・米国認定不動産経営管理士(CPM)・同講師(ファカルティ)資格・同MPSA試験採点官(グレーダー)資格・不動産証券化協会認定マスター・不動産コンサルティングマスター・不動産アナリスト・日本FP協会認定AFP・ファイナンシャルプランニング技能士・相続アドバイザー・相続対策専門士・宅地建物取引主任者・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士・賃貸住宅査定主任者・震災建物応急危険判定士・住環境測定士補・防火管理者・貸金業務取扱主任者・損害保険リテール資格・生命保険募集人資格・ハウジングライフプランナー・住宅メンテナンス診断士・住宅インスペクター・事業承継スペシャリスト

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