猪俣 淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

収益物件特有の物件調査1

収益不動産は、一般的な不動産調査に加え以下に述べる項目についても精査を加える必要がある。

1.共用部の維持管理状況

一般に、所有者が居住者となる分譲マンションに比べ使用状態が丁寧とは言えないケースが多くみられる賃貸物件では、共用部分の消耗がより進んでいる場合が多く見受けられる。区分所有マンションでは管理組合及び管理会社の、一棟マンション・アパートでは現オーナーの取組姿勢によって大きく物件の状態が変わる為、修繕計画の有無、メンテナンス履歴のチェックや目視確認などを行い、事業継続に必要なコスト計算をする必要がある。

・フェンス・ブロック・舗装といったエクステリア
 ・建物外壁塗装の劣化・タイルの剥がれや浮き・目地の劣化など
 ・屋上・解放廊下・バルコニーなどの防水
 ・エレベーター・駐輪場・ごみ置場・集合ポストなど
 ・電気設備や給排水設備など

区分所有マンションでは、一定規模以上の戸数規模が無い場合、修繕積立金不足などにより十分な維持管理が実施できない場合が多い。
また、自主管理物件や管理会社が力量不足である場合もメンテナンスの繰り延べによる物件の劣化が見られる場合が多い。
改善をはかるには、管理組合の議決を得るなど手続き的な条件が必須となるので実施のハードルは高くなる。従って、物件選定の段階での注意を払うことが特に重要となる。
一方、単独所有である一棟物件の場合は意思決定が自由にできるため、維持管理状態が不良である場合でも更生がより容易になる。従って、そのような物件を取得して自ら改善するバリューアッド投資を選択する方法も選択できる。
ただし、更生・維持管理にかかわるコストは新築時の建築コストに正比例するため、鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造、エレベーター付物件、あるいはレンタブル比(賃貸床面積÷総床面積)が低くなるペンシル状物件などで、なおかつ相応の賃料単価が取れない場合は収支を圧迫し、投資計画を大きく狂わせる原因となる可能性が高くなる。取得段階で修繕計画の立案・見積もりの実施などしっかりとした見込みを立てることが重要である。

2.建築条例・法規制

アパート・マンション等の共同住宅・長屋住宅は不特定多数の居住・利用という観点から接道幅員、敷地内避難通路、内装制限、消防設備などの法規制が一般住宅に比べより厳格になっている。建築基準法・消防法のみならず各自治体ごとに異なる条例・規制などに適応しているかの調査が必須となる。建築確認通知書及び検査済証の確認をするのはもちろん、特に専用住宅を改修してシェアハウス(寄宿舎)として利用する、ロフトの準居室利用、階数や面積の変更を伴う増改築、駐車場を事務所や店舗などに改装して利用しているなど、用途や構造を変更して利用している場合には特に注意が必要。物件所在地を管轄する自治体の建築指導課などで詳細調査を行うべきである。

3.入居者の属性

売主からレントロール(入居者一覧)を入手し、現在入居している賃借人の属性(年齢・性別・家族構成・勤務先・収入・保証人など)を、賃料支払能力やトラブルを発生させる恐れがないか、万一の問題が発生した場合の引受先はあるかといった観点で情報収集を行う。
入居審査を行った当時の入居申込書や居住期間中におけるトラブルの有無を記録した管理会社の対応履歴などによって確認することができるが、管理会社や所有者によって書類や記録の保管状況に差がある場合が多く、また個人情報保護法との兼ね合いに注意する必要がある。
直接入居者本人に確認することは困難なので現地調査を行い、賃料に不相応なあるいは不正改造された車両やバイクが駐車されていないか・自転車は乱雑に置かれていないか・トラブルや問題を予見させる張り紙や掲示物がないか、夜間や雨天時にも取り込まれていない洗濯物、ごみや吸い殻などの散乱物、ポストやエントランスホールなど共用部の破損、看板・表札など、総合的な雰囲気も含めた予想することも重要。特に問題が無い場合でも、子供用自転車やベビーカーが多いことから子育て世帯が多いと予想され、近隣環境の良さが優位点と考えられる・・・等、得られる情報は多い。

4.賃貸契約の内容

・賃料、共益費
・普通借家契約か定期借家契約か
・連帯保証人付保か保証会社利用か
・火災保険・借家人賠償保険などの付保状況
・契約日と更新日、更新料の有無
・敷金や保証金の取り扱いに関する決め事
・特約条項(消費者に不利な特約(普通借家契約における契約期間終了後の立退き条項など)は無効となるので注意)

5.市場性
6.投資適格性
7.自分自身のニーズに合った物件なのかという判断
については、次回。

【このコラムの著者】

猪俣 淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における29の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格
<不動産系>
宅地建物取引士/不動産コンサルティングマスター/不動産アナリスト/ハウジングライフプランナー
<不動産投資系>
CCIM認定商業不動産投資顧問/不動産証券化マスター/米国不動産投資マスター/米国不動産投資コンサルタント
<建築系>
一級建築士/震災建築物応急危険度判定士/既存住宅状況調査技術者/住宅メンテナンス診断士/住宅インスペクター/住環境測定士補
<不動産管理系>
CPM認定不動産経営管理士/CPM公式セミナー講師(メンテナンス及びマーケティング)/ CPM MPSA試験採点官/賃貸不動産経営管理士/管理業務主任者/賃貸住宅査定申請主任者/防火管理者
<金融系>
ファイナンシャルプランナー/ FP技能士/貸金業務取扱主任者
<保険系>
損害保険リテール資格/生命保険募集人資格
<相続系>
相続対策専門士/相続アドバイザー/事業承継スペシャリスト

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